クリスマスぼっちの星飛雄馬は生殺与奪の権を他人に握らせるな

VTuberの届木ウカです。先日結婚報告をしたら何故かyahooニュースやらGoogleニュースに乗ってお騒がせセレブみたいになりました。

リスナーに「クリスマス配信した方が良い?」と聞いたところ「既婚者の情けは惨めなだけだ」「新婚くらいゆっくり過ごせ」と言われたので大人しく新婚生活初めてのクリスマスイブを迎えました。

24日、妻も自分も普通に仕事だったので、退勤後に駅のケーキ屋さんでケーキを買って、テレビを観ながらスーパーのお惣菜チキンと一緒に食べました。そして気がつけば23時。

何故か夫婦で巨人の星「クリぼっち回」こと第92話「折り合わぬ契約」を観ました。

ネタ画像や語録だけが広まって一生ネットの笑い者となった星飛雄馬くん。恥ずかしながら自分も今年のトムス・エンタテイメント公式YouTubeでのプレミア公開で初めてフルで見届けるまでは、ただのネタ画像としか認識していませんでした。

しかしながら実際に本編を観てみると、星くんはかなりこう……厳しい流れでクリぼっちになっていたのです。

これはアニメオリジナル回で、クリスマスパーティーを企画した星飛雄馬が親友である伴宙太に言われた言葉である。
そもそも彼がそのキャラに全く合わないクリスマスパーティーの企画を始めたのは、ライバルのアームストロング・オズマに「野球ロボット」呼ばわりされたことが発端であった。
野球に人生の全てを注いできた飛雄馬にとってその言葉は非常に重いものであった。そして自分が普通の人間のような青春や楽しみを謳歌できなかったがゆえに人間性を欠いてしまった事へ強いコンプレックスを抱くようになってしまったのである。
それからの飛雄馬は失った青春を取り戻すかの如く遊び回ったりはっちゃけてTV出演したりと必死の日々を過ごしたが、その極めつけがこのクリスマスパーティー企画だったのである。
だが、当然野球に人生を賭けている他の仲間やライバルからは白い目で見られた。
特に親友で彼を案じる伴は「以前の姿に戻ってくれ」と説得するが、当然飛雄馬が聞く耳を持たなかったので伴は「何がクリスマスじゃあい!ちくしょおおおおおおおお」と捨て台詞を浴びせ去ってしまった。
そして準備万端整えて迎えたクリスマス。ケーキもセットも用意して後は招待した仲間やライバ……を待つばかり……。

しかし、いつになっても誰も来ない。ライバル達は飛雄馬となれ合う事を良しとしなかったので参加を辞退し、仲間達も家族も誰一人来なかった(厳密には、伴は宿舎の外から飛雄馬を見守っていた)。

彼に追い討ちを掛けるかの如く、脳裏に飛雄馬を「野球ロボット」呼ばわりしたオズマが罵倒する声が響いた。何度も何度もオズマは飛雄馬を罵倒した。
飛雄馬は泣いた。泣いて暴れ回り、また泣いた。そしてこの出来事が飛雄馬の心を深く抉る事になったのである。
pixiv百科事典「何がクリスマスじゃあい!」よりhttps://dic.pixiv.net/a/%E4%BD%95%E3%81%8C%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%81%98%E3%82%83%E3%81%82%E3%81%84%21

星くんを期待の星と持て囃す人や、好敵手として一目置いてくれる人はいても、皆「野球ロボットの星飛雄馬」が好きなのであって、「人間の星飛雄馬」には誰も興味がなかったのです。

「星飛雄馬という作品の打点」を狙うなら「野球ロボットの星飛雄馬」であり続けるべきであって、やれクリスマスやらボウリング大会やらボーイミーツガールやらは星飛雄馬という作品の純粋性を損ねるだけの不純物でしかなかった。誰も自分の人間性など認めてくれないのだった。
その事実に星飛雄馬が気づいてしまい、打ちひしがれる回でした。

そして、このメッセージはそっくりそのまま自分に当てはまるのです。

「VTuber届木ウカという作品の打点」を狙うなら「バーチャルロボットの届木ウカ」であり続けるべきであって、やれ結婚やら人妻やらは届木ウカという作品の純粋性を損ねるだけの不純物でしかなかったのです。
(それでも何故結婚報告をしたのか、については先述の結婚発表noteに書いてるので省略します。)

勿論これはVTuberだけでなく芸事やスポーツや仕事に打ち込む人間なら誰もが通る道なのです。「本物」であり続けるためには世間の浮ついたイベントなど見向きもせずに走り続けなければならない。どれだけ野球ロボットや配信ロボットや小説家ロボットや仕事ロボットと馬鹿にされようとも、クリスマスや実家への帰省や結婚や家族サービスなどは「フェイク野郎」のすることなのです。

特に自分は美術大学出身だったため、「本物以外はまがい物」「芸術家たるもの、狂い死にが本望」という刷り込みを強く受けており、Vになる前からそうしたイベントごとの一切を唾棄して創作に打ち込んでいました。実家への帰省中も出演するイベントや発表する作品の事しか考えておらず、上の空で家族に怒られたことなど2度や3度では足りません。

しかしながら、そうした「本物」を突き詰める人生を送ると、「いつか作品でなくなる前に」「作品として成り立っているうちに完成する」しか無くなるのです。歯に衣着せずに言うと「死」です。

有名なところだと、

  • 「本物のロックスターは皆27歳で死ぬため、28歳以上のロッカーは皆フェイク」

  • 「ラーメン評論家はまともに評論できるほどラーメンを食べていたら大体早死にするため、50代以上のラーメン評論家はフェイク」

などの言説があります。後者に関しては野菜食べたり運動習慣に気を遣ってる本物のラーメン評論家もいるかもしれないだろ!

そして何故「本物」は早死にするのかと言うと、「本物」という評価は減点方式だからです。一度超えられない高打点を出してしまえば、後に続くものがどれだけヒットしても「落ちぶれた」判定になってしまう。
そしてこの「落ちぶれた」判定の恐ろしい所は、どれだけ後の人生で活躍しても「昔の方が好きだった」「昔の荒々しさが良かったのに」などの主観的評価で簡単に「落ちぶれた」扱いにされてしまうことです。

だから、「本物」であり続けるためには、「オワコン」にされる前に、死んで「伝説」になるしか無くなってしまうのです。

という訳で、自分は人生というものを
「苦しんで苦しんで最高点を出したら、後は潔く自殺する為のもの」
と思ってずっと生きてきました。

リスナーの中にはそれを感じ取っていた人もいたらしく、結婚報告後はこのような感想を見かけることもしばしばでした。

でもこれは見方を変えると、
生殺与奪の権を他人に握らせているのです。(突然の冨岡義勇)

「生殺与奪の権を 他人に握らせるな!!」
「惨めったらしくうずくまるのはやめろ!! そんなことが通用するならお前の家族は殺されてない」
「奪うか奪われるかの時に主導権を握れない弱者が 妹を治す? 仇を見つける?」
「笑止千万!!」
「弱者には何の権利も選択肢もない 悉く力で強者にねじ伏せられるのみ!!」
「妹を治す方法は鬼なら知っているかもしれない だが 鬼共がお前の意志や願いを尊重してくれると思うなよ」
「当然 俺もお前を尊重しない それが現実だ」
鬼滅の刃 第1話より。上記リンクから無料で読めます

「前のが好きだったな😭」という感想に怯えて人生の選択を曲げたり、「まじかぁー!昔好きだったのに……」と言われるために自殺する行為は、生殺与奪の権を他人に握らせているのだと気づきました。

それが正義なら、神童と呼ばれた子供はその瞬間に死なないといけなくなってしまうからです。失敗が許されない世界ではやがて誰も挑戦出来なくなってしまいます。

だからこそ、自分も人生を加点方式に切り替えていこうと思いました。

しかしながら、そうはいっても自分が妻(夫)にプロポーズを受けた際も、真っ先に考えたのは「リスナーにどんな罵詈雑言をぶつけられるだろうか」でした。
(妻とは友人として気が合いすぎて、交際よりも先に結婚を申し出られました)

強くなれる理由を知っても、そう簡単に刷り込みは無くなりません。炭治郎かて修行に2年費やしたのですから。

でも、自分は去年「君は食肉じゃない」というオリジナル曲を作っていたのです。

君のこと数字で見る大人  
君を「1体」って数えた大人
君の身体は君のものだ
君は食肉じゃない

君を一口大に切り分けて
大人はこぞって褒めるだろう
苦くもないし食べにくくもない
なんていい子なんだと

鮮度や風味で優劣を競っても
一夜のディナーは誰も添い遂げない

君は君だけは自分を売り渡さないで
君の体は君のものだ
誰かの何かになんてならなくても
ありのままの君を生きて死ね

君は君だけは自分を売り渡さないで
君の体は君のものだ
何者かなんてならなくたっていい
自分自身のため生きて死ね
羽華「君は食肉じゃない」

このオリジナル曲、企業Vの友人達から「表では言えないけどすっごい刺さった!!」と裏で感想DMをちょくちょくいただきます。VTuberがカバーしづらい楽曲の代名詞か?

こんな曲を作った人間が他人を恐れて想いを曲げる事があっては、
自分の作品と、それに感銘を受けてくれたファンを否定してしまうのと同義なのです。
どれだけリスナーから「創作一筋に生きる火のVTuber、届木ウカ。それ以外のウカ様には興味が無いね。反吐が出る!」と言われようと、届木ウカがそこで折れるような奴だったらそもそもオタクは推してないのです。

だからこそ、届木ウカは妻(夫)のプロポーズを受け、結婚発表をし、オタクと腹を割って話す生放送を行い、オタクと互いの思いをぶつけ合いました。

「ちくしょう…俺は人間だ…人間なんだぞ…! ちくしょう…!」
巨人の星 第92話「折り合わぬ契約」ラストの星くんのセリフ。

あの有名なネタ画像と共にこの台詞を泣き叫んでいた星飛雄馬も、きっとそばに冨岡義勇がいれば「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」と一喝してもらえたでしょう。

星くんには冨岡義勇は居なかったけれど、届木ウカには冨岡義勇がいました。
だから自分も、自分のオタクに対しては冨岡義勇や煉獄さんであろうと思います。

VTuber届木ウカは引退しないし一生のさばるし、
クリエイター生活も、社会人生活も、自分の幸せも、他人のために諦めたりはしません。

届木ウカのオタクが世間体や他人の目を恐れて、自分の幸せを捨ててしまうことのないように。

柱ならば誰であっても同じことをする。若い芽は詰ませない。
心を燃やせ。



おまけ

この記事は「届木ウカアドベントカレンダー2021」最終日への寄稿文です。

本当はそれぞれの記事へのねぎらいや感謝を綴るつもりが、星飛雄馬のクリぼっち回を観たせいで何かが狂い、ものすごいスパルタねぎらいになってしまいました。鱗滝左近次と冨岡義勇が腹を切ってお詫びいたします。

皆さんが思い思いの形で届木ウカから良い影響を受け、様々な形に昇華されていること。
昇華や創作活動は出来なくとも、届木ウカという存在が貴方の人生の一助になっていること。かつてなっていたこと。
それら全てが有難すぎることです。重ねて御礼申し上げます。

また、先述に「自分の幸せを優先する届木ウカになど誰も興味が無い」という例え話をしましたが、自分のファンには「ウカ様が生きてくれているだけで幸せ」という方も多くいらっしゃり、それはとても貴重な愛情だと、皆様の愛を日々噛み締めています。
ウカ様もオタクが生きてくれているだけで幸せです。

2021年、なかなか配信が出来なかった事に対して、いやこちとら新卒1年目だけど仕事も成果出したしVR映画祭のアンバサダーとかやったしいとうかなこ先生とのコラボ案件も頑張ったんやぞ多めに見てくれやと言いたくなる日もありますが、

「苦しんで最高点を出したら潔く死ぬ」に代わる、届木ウカの新たな人生の目標は、
「自分を好いてくれた人たちの人生を豊かにする」なのです。

だからこそ、どんなに仕事に忙殺されても届木ウカは活動はやめません。
自分を犠牲にしない範囲で、オタクの皆様の人生を豊かにしていきます。

オタクも自分を犠牲にしない範囲で、届木ウカについてきてください。

年明けには4周年生放送も行います。嬉しい発表もあるのでお楽しみに。

それでは良いお年を。

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