見出し画像

コロナ禍での観光のビジネスモデルがわからない…

ぼくは協力隊の待機延長を選択しました。なので引き続き協力隊の身分のまま。

いろんなJICAとの契約のこととか説明するのがめんどくさいので今回はしませんが、なんとか遠隔で支援ができないかとなってるんだけど、なにもできる気がしないので非常に困ってますよ、という話を今から長々とします。

ぼくが派遣されていたのは視覚障害者協会なので、zoomだろうがなんだろうがオンラインどうのこうの言われても、彼らは目が見えないから何にもできないわけです。手工芸教えるにも手取り足取りだったわけだから。PRやマーケティングも現地の今の空気感がわからないので何していいのかわかりません。

で、それは組織力強化方面での支援の可能性に淡い期待を寄せていたりするんですが、もうひとつ大きな枠組みの観光業を見た時に、厳しすぎませんかと思うわけです。

順を追って説明しますと、いま世界の新規雇用の25%は観光産業が生み出してると言われています。カリブ諸国に限っていうと、間接的にでも恩恵受けている人たちを入れたらGDPの3~4割は観光業なんじゃない?って言われたりしてます。

こういう事情があるが故に、タイやネパール、韓国、台湾、GDPの11%が観光のイタリアなんかはcovid-19で三密避けましょうと言うてるのに観光産業を支援してるわけですね(日本のGotoも…か?)。

で、メーカーで働いてた身としては、産業としての観光ってめっちゃ良いんですよね。初期投資がそんなに要らないので。メーカーだったら、工場建てて、在庫持って、R&Dに金ツッコんで…みたいなことをしないといけないわけですが、すっごい主語を大きく言うと、観光にはそれがない。

10年くらい前、インドネシアの地方の小さめの国立公園的なところを旅行していたとき、1日ツアーに参加しました。そのツアーの内容は、笑顔素敵なおじさんのバイクの後ろに乗って、田んぼを横目に疾走したり、しょうもないトカゲ(固有種なのかもしれないが希少種ではない)の写真を撮らされたり、ちょっとした渓谷をボートで往復するものです。

これって、その地元の人たちにとっては昔から慣れ親しんでるところを案内してるだけなんですよね。特別な教育も投資も必要ないんですよ。ただ農業とか各々の本業の空き時間に地元を案内するだけなんで(もちろん英語は多少話せる必要はあるけれど)。それが、けっこうなお金になる。

ぼくを含め外国人とかよそ者にとっては、安全性に疑問のある雑いサービスも冒険感があって良いですし、しょうもない景色も食事も異国情緒を感じるわけです。満足度が高いんですよ。(受け入れ側には、生物保護やポイ捨てしないとか環境面に配慮するインセンティブも生まれる)

それに拍車がかかったのがLCC(格安航空会社)だとぼくは思っています。たとえば古い記録だけれど欧州の場合、ライアンエアーの登場で1991年は年間170万人だったロンドンーダブリン間の航空旅行者数が2003年には440万人へと激増しています。大移動時代の幕開けの象徴的な数字だと思います。その経済効果に着目した起業家がアジアにもLCCを生み、日本では2010年は訪日外国人は860万人だったのが2018年には3,100万人にまで伸びてます。

これだけの人が訪れるようになると、そこにビジネスチャンスを感じる人は多くいます。なんてたって、劇増しているわけですから泊まるところやご飯食べるところも足りないかもしれません。新たな雇用のチャンスでもありますし、そこからのビッグチャンスからおこぼれをもらえる人たちも増えるわけです。

訪れてくれる人が多いということは、計画を立てやすいとも言えます。「この街には毎月平均1,000人の旅行者がやってきて○○を訪れるんだから、そのうちの100人に商品を売れば利益が〇〇くらいでる。10人に1人だったらいけるんじゃないか。いや待て待て、もっと少なくても利益でるじゃないか」とか。

で、その最たるものが、観光バスに1台に50人くらいパック詰めでやってくる人たちじゃないかなと。彼ら彼女らは定番のコースを周って定番のモノのを食べ、定番のものを買ってくれるわけです。これは計画が立てやすい。

それが、なくなっちゃった。

LCCも止まってるし、たぶん観光バスで大人数ってもう年単位で無理だと思う。

ぼくの活動先のカリブの場合、1回3,000人くらいが乗ってやってくるクルーズ船がゼロになっちゃった。社会的意義があって、環境に配慮しててカリブに旅行きた記念になるような商品を作ってお土産市場に参入して、1つのクルーズ船で10人くらいは買ってくれるだろうみたいな見込みをして価格設定も高めにしてブランディングしようとしてた計画が飛んじゃいました。

で、この状況下でも人は旅行に行く人は行くわけですが、トレンドとして密にならない国立公園に行く人が増えるだろう、長期滞在が主流になるだろう、仲の良い友人や家族とばかりつるむようになるだろう(≒パックツアーの時代は終わり)みたいなことを以前、Airbnbの社長さんが言ってました。(キャンピングカーの需要が昨年比650%になってるそうです、アメリカでは今)

これ、たしかにその通りだと思ったんですね。

というのも、ぼく帰国してから友人と遊ぶとなれば山登りに行くしかしていないわけです。そういう人たちとしか遊んでいないとも言えますが、気兼ねなく誘い出せるのは人が多くリスキーな街ではなく、自然の中なのは必然なのかもしれません。

密を避ける、非日常を味わう、リラックスできる、が今後の旅行のテーマになるなら、星のや的な高級リゾートというかコテージ滞在型のホテルはなんとかやれるんだろうなと思います。薄利多売というか、とにかく人数集めて泊めて利益上げるビジネスモデルではないと思うので。

そういう風に考えれば、今後も旅行者は減りこそすれ、ゼロにはならないだろうとも思うんですが、生き残り競争は厳しいだろうなと思います。

客数が減ってもなんとか利益を出さないといけないなら、ほな単価上げましょうという話になりますが、言うは易く行うは難し。

値段に見合った質が伴わなければならないし、現実問題として、価格が上がれば上がるほどモノは売りづらくなっていくから。(例: それまで素泊まり1泊2,000円のただ古いだけの民宿がサービスそのままで1泊1万円になったとして納得できるか?)

ここで、引っ掛かりやすいのが単価が高いと売り上げや利益計算がブレやすいということ。上記の例で、訪問者数が5分の1になったから価格を5倍に上げて利益を維持しようとして、仮に思惑がどういうわけか単月でハマったとしても、10分の1の月もあるだろうし、ひょっとしたらゼロの可能性だってあります。

なにより、covid-19の新規感染者がニュースにでると、旅行者はもちろん各自治体がどう反応するのか読めない。空港で陽性者を検知できているから大丈夫と見るのか、陽性者が何人か入ってしまっているだろうから危ない、ロックダウンだ!となるのか読めないんですね。

こういう状況だと売り上げや利益計算の計画を立てることなんてできないし、今後の商売の展開を見通すこともできません。耐える?いつまで?事業計画が立てられないのに融資受けられるかね?とか考え始めると安定した経営が難しい。行き当たりばったり。

定番のやり方である、単価はそこそこに回転率を高めて客数を増やすという戦略ができないだけでパニックになってしまっています。

売り上げ=単価×客数

これまでの観光のビジネスモデルは単価はそこそこに客数(回転率)を増やして売り上げアップしてきたわけだから、それが通用しない以上、単価を上げるしかないわけです。

安ければ、お得感がでるのでそれだけでお客さんを集めやすかったわけですが、単価が上がってもある程度の集客できないといけないわけで、別の訴求ポイントが必要で、それがみなさん苦労しているところであります。どういうコンセプトを打ち出すかというね。

カリブのバルバドスという島国はリモートワーク向けの1年ほどの長期ビザを発行して、「カリブのビーチで優雅に働かないか?」的な売り込みをしようとしていたりします。

短期旅行者がガンガン来ていた世界から、中期旅行者がぽつぽつ郊外やリゾート施設に滞在してる世界になるのかなと思いつつ、観光産業という大きなくくりでみると、それまで端っこの方で恩恵を受けていた人たちは従来のやり方じゃ通用しないだろうし、観光業界のメインプレーヤーも変わるんだろうなあと思っていたりします。

旅行のトレンドが変わり、それに合わせて商売を変えていかないといけないわけですが、そもそも今客足がゼロなんで、戦略の立てようがないんですよね。

いやー、困りました。観光というアテが外れそうな今、ほかの産業で障害があっても雇用が生まれそうなところあるかなあ…。自国民向けの何かをやるしかないのか…。

という最近の悩み事という名の泣き言でした。



サポートはいつでもだれでも大歓迎です! もっと勉強して、得た知識をどんどんシェアしたいと思います。