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新人タクシーは値段が安く売れっ子は高い

最近タクシーの運転手を始めたんだよ、という青年に会った。

俺だったら空港まで60EC(約2,400円)だよ、という。これ結構安い。

だって普通のタクシーなら空港まで90~100(約3,600~4,000円)くらいしてしまうもの。

続けて彼は、ここじゃ売れっ子のタクシーの方が高いんだよ、と言った。

おもしろい考え方だなと思った。

どういう理屈なんだと悩んだ。売れっ子になると良い車に乗り換えられて、シートもこだわってみたり、ポケットWi-Fiなんかも契約しちゃったりして固定費や減価償却費がかさむからかなと思った。

それで昨日、この国のセンスゼロのポストカードからいくらかマシなものを選ぼうと悩んでいるときにその考え方は違うなと思い至った。

ぼくはメーカー出身なので、注文量が多ければ多いほど生産効率が上がる()ので単価が下がると考える。なので、この場合、売れっ子=受注量が多い、つまり稼働率が高いから、1件あたりの料金を下げても十分な収入を得られる。むしろ、稼働率を上げるために単価を下げて受注量を上げた方が効率的により稼げる。メーカー的な考え方。

何が違うなと思ったかというと、タクシーってサービス業だなと。製造業じゃないなと。人間機械論的な考え方をしてはいけないなと。車の稼働率を考えるなら間違いではないのかもしれないけれど、運転するのは人間だからしんどいよなと。

ここはカリブで、アメリカのように利益至上主義のような価値観は乏しい。自分の人生と家族の方がプライオリティが高い。

JICAの御用達のタクシードライバー Cがいるんだけれど、彼はこの国でトップレベルの売れっ子だということを、その新米青年ドライバーに聞いた。

Cを見ていて思うのは、売れっ子言うのはつまり、ある程度の固定客がいるということなんだろうなと。以前、世銀の人を乗せていたようだし、(大使館の人含む)日本人は皆Cに頼むし。

そんなふうにある程度の固定客がいれば、自分を安売りする必要がないし、高く売れれば、その分馬車馬のように働かずとも、ゆとりある生活を送ることができるということなんだろう。

そう考えると、Cの車内がきれいでWi-Fiついていたり、いちいち丁寧にドアを開けてくれたりするのは、新規をリピーターにつなげる施策なんだろう。

ハイクオリティのサービスを体験させることで差別化を図っているんだろう。

「一度経験すると、もう普通のタクシーには戻れない」

そういうハマる仕掛けなんだろうなと思った。

かしこい。


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※ 注文量が増えれば生産効率が上がるので単価が下がる、の意味がわからないという人のために丁寧に説明する。

なにかをつくるとき、それはつまり機械を稼働して生産することになる。たとえば、ポッキーをつくるとする。そこにイチゴ味のポッキーの注文が入った。

となると、チョコレートからイチゴ味へと原料を交換しないといけない。おそらく器具を丸ごと交換しないといけない。チョコレートの器具の熱を冷まして、イチゴ味用の器具を取り付ける。器具を温めて生産可能な段階まで持って行く、という工程がある(あくまでもイメージ。機械で製造するときの現場のイメージ)。

ぼくは化学メーカで働いていたから、お菓子業界の現場は知らないけれど、2~3時間で交換生産開始できる代物ではないと思う。仮に交換に6時間かかったとしよう。

すると、好感せずチョコレート味を製造を続けていたら、600箱作れたとしよう。工場としては600箱分の利益を得る機会を逸したと言える。600箱分の稼働率が下がってる。

工場の稼働率が下がると何が問題かと言うと、工場の儲けが減るというのが問題なんだけど、それによって工場の固定費(機械の減価償却費、従業員の給料など)の支払いに影響する。同じだけ働いているのに毎月給料の額を変えるなんてできないから、普通。

工場としても利益を得る機会を失いたくないから、600箱分の値段をイチゴ味に乗っけることになる。簡易的に1箱100円とすると、60,000円分イチゴ味にのってくる。

そのロス分を計算に入れなければイチゴ味も100円でつくれたとして、チョコレート味の製造のあとにイチゴ味200箱つくるとなると、60,000円がそのイチゴ味200箱にかかるので、1箱あたり300円のってきて、イチゴ味の販売価格は1箱400円となる。

これが2,000箱つくるというのなら、1箱あたりにのってくるのは30円なのでイチゴ味は1箱130円となる。

これが注文量が増えれば生産効率が上がるので単価が下がる理屈。(いくらか簡易化してるけど)

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