蛇は一寸にして人を呑む

※この記事は、少し前までX(Twitter)でやっていた情報収集報告をnoteでもやるようになった……そういう感じのアレです。パブサで来た人には申し訳ないが、めちゃくちゃ私情が混ざってる。

それでもいいから読みたいって人だけ読んでね。いつも通り、ろくでもないことが書いてあります。


……ようやく「アンパンマンの遺書」を読み終えた。

なんでも母は「手のひらを太陽に」が出たころからやなせたかし先生のファンであり、昔はこうだった、ああだった、正義とは悪とは……幼い私に熱心に語り聞かせたものだ。

あの人は戦時中に生きた人だから、お腹が空いた人に美味しいご飯を食べさせることを絶対の正義と説いたのよ。ほうほう、ではそろそろ弟にもまともな食事を作ってやったらどうか?

私は一口も食べなかったが、弟くらいの歳に通っていた幼稚園では、固形物や肉、味噌汁が出されたものだが。いくら障害児でも、うどんとリンゴジュースだけではやっていけまい。そう反論すると、私は絶対に正しいのだと逆ギレしてくる。いくらリンゴジュースのパッケージにもアンパンマンがいるとはいえ、流石にイキリすぎじゃなかろうか。

アンパンマン、なんて迷惑な! これでは何が正義か、何が悪か分かったものじゃない!

しかし厄介なことに、母の言い分は必ずしも間違いばかりでないと分かってくる。元々やなせ先生は売れない漫画家(?)だったこと、キャラクターのあり方には日本食の変化が現れていること……やなせさんのことはともかく、キャラクターのあり方は知識をつけることで分かってきた。

私はアンパンマンを通じ、弟に食べ物・食事を教えようと考えた。

母はやなせたかしファンな上、アンパンマンの絵本はどこにでも売っていたため、資料はいくらでも手に入るだろう。絵本に載ってるキャラクターと現実の食事、アニメーションでそれを食べる子どもたちの様子を見せ、とにかく食事に興味を持たせた。

弟は1歳の時に喉の手術をして以降、食事が苦手だった。やっぱりあの女が何かしたんじゃねーだろうな。というか、アイツはそういう気分になったらいくらでもこちらを攻撃するぞ。現にリスパダールを1日3〜4本飲ませたりしていたし。
だから食事くらいはできないと困る。本当に死ぬぞ。それを黙って見てるなど許せるものか。現実的には黙って見てるしか出来ないだろうから、尚更だ。


重度自閉症の割に自己投影の上手い弟は、無事食事に興味を持ち、それなりには食べられるようになった。母はその後、まるでそれが自分だけの功績であるようにブログで自慢していたが、そんなことで腹を立てていても仕方がない。いえーいサンキューやなせ先生!✨ とお礼を言うべきか、そもそもこのような女を生み出したのはだなァ……と呪詛を吐くべきか、ともかく一件落着である。
この話には続きがあるけど、そのためにはまず異聞帯を滅ぼさねばならない。今は体調管理のついでに別方向から情報収集をしてるところだ。

そんなわけで「アンパンマンの遺書」を読み、分かったことがいくつかある。
出版・漫画に関する歴史が思ったより詳しく書いてあったこと、なんかやなせ先生の人脈がものすごいこと。基本はこの2点だ。私は芸術家ではないし、テレビだの、雑誌だのにはそこまで興味がない。なんならゲームもアニメも漫画も、基本的には大嫌いだ。
だから「あの○○さん」と言われても誰なのか、何がどうすごいのか全然わからん。

ハァ、一体いつになったらアンパンマンが出てくるんだ、と読み進めてると「自分はもう○十代だ、○○さんは亡くなってしまった。のちに○○をやるようになる××さんはこの頃まだ……」といった言い回しの話が出てくるようになる。
この頃になると、ちょっと話がわかるようになってきた。それも事故だとか、おそらくは福祉に関する話につながっている。なるほど、母がアンパンマンと福祉の話をセットにしてくるわけだ。

当時子どもだった私にしてみれば、アンパンマンは好いてる先生の悪口につながる鍵にしか見えない。どれだけ素晴らしくても絶対に絵本など買うものか。弟が食事の良さを理解し始めた途端、母が急に「そんな子供向けの作品グッズを買うな」と弟を叱り始めたときは、はらわたが煮え繰り返る思いをしたものだ。
……そんな気持ちになるのも、ある意味では、アンパンマンという作品を認めてることになるのかもしれない。

さて、「アンパンマンの遺書」の初版は1995年。私が生まれる3年前だ。で、やなせ先生は1990年に日本漫画家協会大賞を受賞したと。母はこのころ大学生だろうか。

母は大学生の時、とにかくたくさんの小説や漫画を読んだという。この話も嫌というほど聴いたものだし、それとセットにして出された話は、当時読んだ小説の内容だの、ネタバレだのに違いないと勘違いしたものだ。(※本当にあった凶悪犯罪でした)
当然だが、大学生なら単位を取ったり、論文を読んだりしなきゃいけないだろうし、新聞配達だってしなきゃいけない。父親に頼るのが嫌で、新聞屋に下宿したと言っていた。
父親が嫌いなのに漫画や小説をたくさん読んだのか? またあの女は、訳のわからないことを言うのだな。

私からすれば、アンパンマンは完全に幼児向けの作品だ。たとえそうじゃなかったとしても、確かめようがない。だって私が本物の幼児だったのだから。確かに子ども向けとは少し違うよね、と言われたら、それは分かる。なんのために生まれて、なんのために生きるのか……けっこう重い歌詞だ。
じゃ、アイツは大学生のくせにそんなことも分からなかったのだろうか。それとも、そういう作品を読んで、子どもに勧める自分が優れていると思いたかっただけなの?
……これがずっと謎だった。

本書の内容を鵜呑みにするのであれば──そもそもこの分析方法が間違いな気もするが、後で詰めるとする──本来アンパンマンの読者は中高生、あるいは作家志望の人々であり、なんでもない大学生(向け)の読み物というわけではなさそうだ。女性としては、少々視点がずれている。
一度きちんと、やなせ先生の書いた「アンパンマン」を読むべきかもしれない。いや、全然読みたくないが、しかたないですよね。

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