ナーサリー・ライム

【ここ1年くらいの思考の総括です。内容はいつも通りグロテスクなものを多く含みます。】


幼児誘拐の流行する世の中に生まれても、子どもだから放課後友人と遊びたいと考えた。ほとんどない語彙を駆使して母を説得していたある日のことだ。

「ダメダメ! もし外で知らない人に誘拐されたら、広島の女の子(広島小1女児殺害事件のことを指している。私と同い年)みたいに、酷い目にあうよ」

「ダンボールに入れて捨てられるんでしょ? まぁそれくらいなら……」

「いやいやいや、コンクリート詰めにされるかもしれないでしょ!」

ダンボールは知っていたが、コンクリート詰めは知らなかったので何か尋ねると、「土管に死体とコンクリートを詰める」「なんかそれをやった少年たちは『少女の好きだったドラマのビデオを入れるか否か』検討したらしい』など、変な角度で詳しい返事が来た。

どう考えても小学生に聞かせる内容ではなかったが、そんなことはどうでもよくて、母がここまでたくさん話をしてくれるのがすごく嬉しかったのだ。かろうじて「土管とは?」と聞き返すと、「ドラえもんで空き地にあるやつ」という回答をもらった。

のちにその話は「女子高生コンクリート詰め殺人事件」という実際にあった凶悪犯罪だったと知る。そんなことを知りもしない私は、完全に童話のテンションで話を聞いてしまい、後日同様の流れで「酒鬼薔薇聖斗事件」「秋田連続児童殺人事件」などを知ることになる。

「私の父(母方の祖父)は、私が乳歯を抜くのに戸惑っていると『歯に糸をつけて、力を入れて引き抜くとすぐに抜けるよ。やってみる?』って脅してくるのが本当に嫌だった。(中略)私は、そんな母親にはならないわ!」と語る母に「鏡見ろ」と思ったのは一度や二度じゃない。祖父が祖父なら母も母である。私は当時すでに「万一の時には母を殺害しよう」という発想があったため、一連の流れで母を不快に思ったことはなかった。


誰になんと言われても、自分なんて死んだほうがマシだと思っていた。テストで100点を取っても、友人がたくさんいても、学校や仕事で信頼されても、自分の人生を「事実」として呑む人は誰もいなかったのだから。外に出る手段なんて何でもいい。ニュースで見た女の子みたいに最後に殺されちゃってもいいから、遠くへ行って透明になりたいんだ。原型も留めないバラバラな死体になることが私の夢で、私のロマンス。

VOCALOID文化を知り、この日もいつものようにボカロ曲を漁っていたら、突然牢獄pに出会った。ちなみにこの当時牢獄pにたどり着く経由で主に挙げられるのは、「①VOCALOIDアンダーグラウンドジャパン(という紹介動画)」「②コラボ動画、絵師、動画師(例:鬱p経由)」「③元ネタ(例:南条あや)」だが、このすべてを無視して「本当に」突然たどり着いたのは、何度考えても意味がわからない。

私には「好きなもの」が何もなかった。春は好きだが、唯一憂鬱なのが「自己紹介カード」なるものを書かなければならないことだ。「好きな○○」の欄を見ては頭を抱えていた。牢獄pというのは、私が童話のテンションで聞いた凶悪犯罪の断片を網羅しているようなボカロpなので、間違っても学校で好きだと公言できない。それでも、「本当は牢獄pが好きだけど、当たり障りのないJPOPの話しとくか」と、「好きなものが何もない! 本当は知らないけど、みんなが言ってるから知ってるフリして嘘書いとこう」なら、前者の方がいくらか楽だったんだ。

心から好きだと言えるものができたとき、私は生きものになる。好きになったのですべてを知らないと気が済まないな♪ と調べたら「佐世保小6女児同級生殺害事件」にたどり着き、人を殺したらバトル・ロワイアルの映画が延期になるから殺人はダメらしいと気づいた。倫理や常識ではなく、愛の先にあるプライドだけが私を人間のまま引き留め続けている。



やがて「少年犯罪」という単語にたどり着き、サジェストにあった「それ」にたどり着いてしまった。当然、死体になるまでの過程も記されていたが「強姦」「輪姦」「セックス(具体的な仕方の話)」の知識がなく、ほとんど内容を理解できない。「屋上の美咲」を聴いていたためフィストファックの知識はあり、なんとか「凌辱と暴力の果てに死んだんだろう(←すごく悪いこと)」という認識に落ち着いた。

少女であるならば、それがどれほどおぞましいことで、許されないことであると理解できるだろう。私もまた少女であったから、理解はしていたものの、インターネットの海で事件の存在を確認すると安心していた。「この世界には自分よりクズな奴がいる」といった「安心」であればまだ健全だったかもしれない。強姦はともかく、監禁の恐ろしさは身を持って知っているじゃないか。

私って頭おかしいのかな?(否、私は生まれた時から故障している。「おかしいのかな」と思うことが重要なのだ)監禁事件をもっと調べて、世界の恐ろしさに絶望してもう死のう。牢獄pの曲、どうせあと50曲くらい監禁の曲あるでしょ?(クソデカ偏見)調べておいて損はないだろう。そうして「北九州監禁殺人事件」にたどり着いた。当然当時はそんなつもりなかったのだが、この先この事件の話が外せなくなり、以降の記事では内容を把握していることが前提となって話が進む。

今回の記事では詳細を省くが、北九州監禁殺人事件の存在だけが、家の中にいる時の心の支えだった。つらい時には検索して記事を読んでいたものだ。てワケで数日もすると内容を覚えてしまい、流石に飽きてきてしまった。これから最低8年を家の中で過ごすにあたり、情報管理、発想転換に関しては最高レベルの教科書だったが、肝心の殺害に関してはなんの参考にもならなかったのも大きい。まずホームセンターで鍋を買って帰るのが無理(腕力がないので)。当然絞殺はもっと無理。


というわけで牢獄pを通して、ナーサリー・ライムの特定を進めた。運がいいことに、この頃VY1による「受胎告知」のカバーがYouTubeに投稿され、母に閲覧履歴を咎められた時の言い訳もバッチリである。学校の校門に子どもの首があって、犯人は14歳の少年だったっていうのも本当の話らしい。あんまり順調にいくもので、「(同様のテンションで母に聞いていた)あの話も本当にあったことなのか? 自分好みに改造して妄想の中でマザーファックやるのにちょうどよかったのに……私のためだけに嘘にならないかな?」などと不安になったりもした。未だに確認をしていない。

この時「快楽殺人」という単語を知り、直感的に「自分もやりかねないな」と思ったため、R-18Gコンテンツを封印した。第五人格のハンターが下手すぎて「初心者なんだからリッパー使いなよ」「顔のいい男が好きなら写真家使いなよ」などと猛プッシュされた時に「いや両方シリアルキラーじゃねえか!」と思いとどまったのは、プライドが死ぬほど高いからである。


好きだと思ったらトコトン追求したくなるのはいつも変わらず、対象が顔も名前も分からない少女でも同じだった。16歳、12月の夜のことである。「女子高生」になれないことを思い出してはウンザリしてしまうため、馴染み深いナーサリー・ライムを切り捨てざるを得ず、加えほとんどのR-18Gコンテンツを規制していたため、爆発した。とにかく血が見たいんだ!

血を見たいという欲求を知性で解決した少女のすべてが知りたい、というより様式美として名前と地域を特定にかかった。うっかり「切断(牢獄pの曲)」を経由してヨーゼフ・メンゲレの双子の話にたどり着いたから双子に興味があるんじゃない。マナカナも双子だし、ドリーミングも双子だし、アレンとリリアンヌも双子だし、私は双子座だ。同じ音を持つ美少女を忘れるわけがない。ここまで時間にして5分とかからなかったため、調子に乗って顔写真がないか探し始める。少年法がなんだと言われているが、インターネットは無秩序なのでプリクラの1枚や2枚出てくるだろう……と舐めてかかっていたら、1枚も出てこない。なんでだよ!? 友達いねえのかコイツは!!!!

じゃあJKビジネスで稼いだ金どこで使ってんだよ!?!? 借金返済とか薬物とかホストとかなら絶対記事に書いてあるだろうし、マジで個人情報出てこないし「使用者の声」みたいなのも出てこない。プリクラや同級生、同僚の様子が見えないから「遊興費」じゃなさそう……ってことは「日用品、消耗品費」じゃねえか!!! ゼッテー背景にネグレクトあるだろ!! そう書け!!!!!! 傷害事件とか書くな!!! ややこしくなるから!!!!! などと自分のためだけにキレ散らかしていたら真理にたどり着いてしまった。当然、この時点では「妄想」だ。

しかしこの少女、この後どうなったのかな。もしこのままお咎めなしで家に帰されてたら金がなくて、金がないと飯がなくて死ぬのでは……? 東京らへんの地名だから、東京に行けば会えるのだろうか。もしも私が外に出れて、少女がまだ生きていたら会いに行きたい。どこの誰でも、名前が変わっても、突然牢獄pにたどり着いたように、必ず巡り会えるような気がする。少女に会いたいから外に出よう。東京へ行きたい。

北九州監禁殺人事件を知り、はじめに感じたのは「似ている」ということだ。たとえば食生活。母の手料理は信用できないから、カップ麺を主食とした。そして母にはその本意を告げず、母がそれに対し「自閉傾向だ」とかなんとか言うのを適当に肯定し続けた。誰かに強制されたのではなく自分で決めたことだが、それを事実とするかは世論が決めるのだ。次に違和感を覚えた。「緒方純子は家事が苦手だったんじゃないだろうか?」「愛人に手紙を出し続けていることに対しては特になんとも思わなかったのだろうか?」「なんで突然源平の話を出されて理解してるんだよ?? さてはこの女日本史が好きだな?」等、死者を無視しても不自然な点が多すぎる。「日本史が好きだったんだろ!」に関しては「だれか『家族喰い』の序盤のように、人心掌握のプロが家族とか恩師にインタビューしてくんねぇかな? いや恩師は生きてらっしゃるかどうか……じゃあ両親だな。通知表とか残ってない? 話を……いや死んでるじゃねーか!!」というコントのような流れで改めて事実を重く受け止め、「じゃあせめて姉妹とか、甥っ子姪っ子……」と妥協点を出したが、そういう事件なので全員死んでる。クソっなんで全員死んでるんだよ!!(そういう事件だからだよ)

家出後「消された一家」を購入し、改めて考察をし、途中ジョジョを読み、幻覚を見るつもりが現実を突きつけられ酷い目に遭うなどし、もう二度と読まないからな(大嘘)になったりもしたが、ようやく腹を括り、松永太の話に目を通し始めたのだった。

(つづく)

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