妖精の首

紙の日記は数日分まとめて書くこともある。
どれだけ間が空いてもなるべく時系列順に、日付の空きがないように仕上げるよう決めた。故に、とにかく外の器にうつしたい出来事をすぐに描き出せない事態が、たびたび発生するのだ。しかし、別の紙に書いて貼り替えるのは許せない。うつしかえるなどもっての外だ。

なので、こうした……明らかに自分の管轄でない器が必要になる。Xとnote、ふたつの器、どちらにするか数時間迷い、結局noteに書いておくことにした。またしても不思議な夢の話である。

はじめは来たるべき日常の延長を延々妄想するような、よくある夢だったのだ。予知夢だの、占いだのには使えない……寝る前、明日こうするべきだ、起きたらこうするべきだと考えていたのがそのまま夢になっている。
私もこれが夢だと、薄々気づいているのだ。でもこの日は休日だったから、必ずしもこの予定を忠実にこなす理由はなかった。普段なら、その夢はやがて緩やかに終わり、溶けていく。私は目を覚まし、新たな1日を始める。

ところがこの日は違った。気がついたら私は深い森の中でぼんやり立っていて、目の前には妖精がいる。いいや……私はそれを「妖精」だと思ったことはない。確かに妖精と形容されることはあるだろう。でも、今はそんなことを考える余裕はないんだ。
今はそんなことを考える余裕がない。
この日にも、その前の日にもたくさんの収穫を得た。だから日記帳には、キチンと日付ごとに区分けして記録しなきゃいけない。寝る前にはそれが楽になるよう、簡単に情報を探して……それが少なからず夢に反映してるのではないか? 最初はそう思っていた。

妖精はおもむろに、両手を首筋に持っていく。まるで髪をかきあげるように、己の首を切り取ろうとしている。こちらを見て微笑み、それが幸福であると言わんばかりに──私はここでようやく、相手の顔を見ようとした。
しかし「それ」は、漫画の中にいる妖怪のようになっていて──首から上を拝むことはできなかったのだ。だというのに、私はそれが紛い物でも、組み立てられたものでもなんでもないと確信している。薄く日常を切り取られた、スクリーンみたいな森。あざやかな緑色。ここは私の知っている森じゃない。

私は神を信じている。だってその方が人生面白そうだから。そして、神と同じくらい「言葉の力」を信じている。
この世のありとあらゆるものは神の器。そうあるように扱えば、どんなものでも本物の神となる。
これは、そうした奇行と信仰が引き寄せた幻覚だったのだろうか? 
それとも本当に本物を引き寄せてしまったのか? 
このどちらでもなかった場合はなんなのだろう?
とりあえず夢占いで調べたところ、吉夢でもあり凶夢でもあるという、いつも通りどっちつかずの内容となった。

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