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夫婦自転車珍道中 in フランス -2

(その1はこちら

旅路を始めるときに、地図を携帯にセッティングしてわかったのは総距離70km、予想時間は約4時間と地味に最初の読みからのびていたことだった。夫に任せすぎていたので、もうなんでそんなことになっているのかよくわからない。正直65kmも70kmも想像がつかなかったので、行くしかなかった。

位置関係はこんな感じ。星がすごい量の場所はパリです。


比較的25kmくらいまでは順調だった。

しかし30kmくらいの時点で疲れ始めて「まだ半分以上も残っている」という絶望感がすごかった。引き返すとしても30km戻らなければいけない。夫はというと、この時点で「もう泣きたい。引き返してムードン(自分たちの街)に帰りたい」と言っていた。「もう戻れないんだよ、行くしかないの!」と私が鼓舞するという謎のシチュエーションで、私たちは残り40kmを進むことにした。

パリを流れることで有名なセーヌ川はフランス北部からパリを通過して、南方に長くのびている。大雑把にいうと私たちはセーヌ川沿いにずっと南下して走っていた。郊外に入ると、川辺は岸から水の中へ入ることができて、途中まで位置を把握できていなかった私は、そこが湖畔だと思っていたほど、濁ったパリのセーヌと違って透明で綺麗な美しい水辺だった。森の茂みの合間に小さな浜辺のような場所がいくつもあって、2,3家族ずつが集まって、川で泳いで、音楽を流して、火を起こして囲んで、釣りをしたりもしていた。それはバカンスなんてたいそれた都市的な時間の使い方ではなくて、彼らにとってはもっと日常の中に水辺があって、当たり前のように週末の夕方出向いて時間を過ごしているようだった。

車だとあえて止まることはない街だし、川辺なんて木の茂みに隠れて見えもしなかった。電車でも駅と駅の間の景色をこうやって垣間見ることはできないから、ああ、この景色だけでも自転車に乗った甲斐があったなと思った。パリから一転、この町々では白人をほとんど見かけなかったが、私の持ってる漠然としたBanlieue(郊外)の少し薄暗いイメージが変わって、慎ましくも穏やかに、ただ彼らのコミュニティがそこにあって、つながりあって暮らしているのだと感じた。

次回は激しめなので、今回は穏やかに締めます。つづく。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。 書くことを気長に続けていくことで自分なりに世の中への理解を深め、共有していきたいです。