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夫婦自転車珍道中 in フランス -3

(これまでの話はこちらより:その1その2


必死に漕ぎ続けて、気づくと21時を回っていた。

出発から5時間経っていた。地図を見ると、まだ2時間はあるとのこと。もう意味がわからない、4時間で着くんじゃなかったのか。

本当は日が沈み切る前になるべく宿まで近づきたかったけど、フランスは日本のコンビニのような便利なものがないので、店が閉まる前にひとまず腹ごしらえだ!!と小さな飲食店に止まった。

店の前にはUber eatsらしき配達員のお兄ちゃんがたくさん待機しており、店先のテラス席では常連らしきアラブ系のおじさんたちが談笑していて、地元の憩いの場として親しまれているジャンクフード店のようだった。そこで二人分12ユーロのフライドチキンとポテトとペリエのセットをいただく。疲れてたので全部すごく美味しく感じた。その後も動いたからか全く胃もたれしなかった。やっぱり運動って大切だ。

食後に、道を進めてすぐ横の角を曲がったら、まだ開いてるいい感じのレストランがいくつもあった。先に見ればよかった……と二人で少し悔いつつ、優雅に食事をする時間は全くなかったので結果オーライだった。 

さて

電動自転車であることにこれまであまり触れてこなかったけど、みなさん多分おわかりのように、電動自転車は長距離に向いていない。夫は「100kmを充電なしで走れる」という謳い文句が決め手でその自転車を選んだらしいのだけど、あろうことか夫の自転車は45km時点でほとんど電池がなくなっていた。「約束と違う!!!」本人は漕ぎながら嘆いていたけど、日も暮れてきたのでのうのうとどこかで充電もしてられず、行けるところまで行くしかなかった。夫は節電のためにエネルギーを低めに設定して、ライトを消した。

私の灯りを頼りに走っていたものの、田舎の国道は暗くて怖かった。日がいよいよ沈んで、ライトをつけていても視界が怪しくなってきた時にそれは起こった。




ガシャーン!!

夫は勢いよく地面のブロックにタイヤをぶつけて、ぶつかった反動で顔から地面に落ちた。とっさに右手で頭をかばったらしい。暗くて見えないけどすごい音で、夫は1分くらい起き上がらなかった。

詰んだ……と思った。(もうこの旅路で、何回目の悟りかわからなかった。)流血はほとんどないようけど、地面に打ち付けた右手がすごい痛みで動かせないらしい。緊急病院を検索したものの近くになくて、本当にど田舎だったのでどうしようもない。あと10キロくらい行かなければ何もなかった。

「戦争中の兵士だと思って!傷の痛みがあっても進むしかない!」と全然励ましにならない私の喝を聞き流しながら、夫はなんとか10分後くらいに立ち上がった。もう夫のメンタルも体もボロボロなのがわかったので、自転車を交換して、私が電池ほぼなしの自転車、夫は電動力MAXに切り替えた自転車で最後の道をゆっくり走ることにした。


ラスト10キロ。時間は23時を回っていた。

街灯のない、畑の脇の国道をひたすら進んだ。もう泣けてきた。なんだこの週末は。家でゆっくりしていたかった。バカみたいな計画を立てた夫、それを聞いて止められなかった無責任な自分にものすごく腹が立った。でも夫も心身ともに限界だったのであたれない、なので私は夜道に叫んでいた。

「なんだこのバカみたいな旅行!!!!計画が甘すぎる!!行っても帰れない、同じ道を帰りたくない!こんな十代がやるような旅行もう二度とやらないからーーーーー!XX〇XX!!!!!!(書き起こせない言葉たち)」

バルビゾンに続くフランスの田舎道で、日本語の暴言が響き渡った(だろうか)。


つづく

最後までお読み頂き、ありがとうございました。 書くことを気長に続けていくことで自分なりに世の中への理解を深め、共有していきたいです。