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121.第5章「映画とテレビでトップをめざせ!不良性感度と勧善懲悪」

第9節「プロデューサー黒澤満  東映ニューアクション ③仲村トオル」

7.セントラル・アーツ「仲村トオル」大活躍

 1986年5月、正月映画『ビー・バップ・ハイスクール』(那須博之監督)の大ヒットを受け、那須真知子脚本、那須博之監督、仲村トオル清水宏次朗中山美穂宮崎ますみ萬純)など同じメンバーが出演する第2作ビー・バップ・ハイスクール 与太郎哀歌』の製作が発表されます。

1986年5月発行 社内報『とうえい』第308号

 公開に先立ち東映映像事業部は、人気が爆発した主演の仲村トオル写真集『トオルがトオル』を発行、8月1日、全国書店にて発売が開始され大ヒットしました。

1986年7月発行 社内報『とうえい』第310号

 セントラル・アーツが製作協力するこの作品は、8月9日東映系にて全国公開されます。

1986年8月東映『ビー・バップ・ハイスクール 与太郎哀歌』きうちかずひろ原作・長谷川安弘企画・黒澤満、紫垣達郎プロデューサー・那須真知子脚本・那須博之監督・仲村トオル主演 ©東映

 同時上映は江川達也原作の羽賀研二主演『BE FREE!』(中田新一監督)。当初は東映東京撮影所の製作で進んでいましたが、準備稿を読んだ岡田茂の判断でプロデューサー、脚本家、監督が交代され、急遽黒澤満が呼ばれセントラル・アーツで製作した作品でした。

1986年8月東映『BE FREE!』江川達也原作・翁長孝雄企画・坂上順、佐々木嗣郎プロデューサー・一色伸幸脚本・中田新一監督・羽賀研二主演 ©東映

 この2本立て作品は配給収入配収11億5000万円を記録、1986年度日本映画配給収入6位と予想通りに大ヒットします。

1986年8月発行 社内報『とうえい』第311号

 セントラル・アーツが製作協力する、仲村トオル清水宏次朗コンビの『ビー・バップ・ハイスクール』は、那須真知子脚本、那須博之監督にて、マドンナは変わりながらも1988年12月第6作まで続く人気シリーズとなりました。

〇仲村トオル、清水宏次朗コンビ『ビー・バップ・ハイスクール』シリーズ

第1作 1985年12月公開『ビー・バップ・ハイスクール』(中山美穂・宮崎ますみ) 配収14億5000万円
 同時上映:『野蛮人のように』薬師丸ひろ子主演

第2作 1986年8月公開『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎哀歌』(中山美穂・宮崎ますみ) 配収11億5000万円
 同時上映:『BE FREE!』羽賀研二主演

第3作 1987年3月公開『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎行進曲』(五十嵐いずみ・宮崎萬純) 配収10億1000万円 1987年度日本映画配収第8位

1987年3月東映『ビー・バップ・ハイスクール 与太郎行進曲』きうちかずひろ原作・ 黒澤満、紫垣達郎、長谷川安弘プロデューサー・那須真知子脚本・那須博之監督・仲村トオル主演 ©東映

 同時上映:『本場ぢょしこうマニュアル 初恋微熱篇』工藤夕貴主演

1987年3月東映『本場ぢょしこうマニュアル 初恋微熱篇』有間しのぶ原作・坂上順、和田徹、河瀬光企画・斎藤博、中田新一脚本・中田新一監督・工藤夕貴主演 ©東映

第4作 1987年12月『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎狂騒曲』(柏原芳恵・五十嵐いずみ・宮崎萬純) 配収12億5000万円 1988年度日本映画配収第6位

1987年12月東映『ビー・バップ・ハイスクール 与太郎狂騒曲』きうちかずひろ原作・ 黒澤満、紫垣達郎プロデューサー・那須真知子脚本・那須博之監督・仲村トオル主演 ©東映

 同時上映:『はいからさんが通る』南野陽子主演

1987年12月東映『はいからさんが通る』大和和紀原作・植田泰治企画・稲生達朗、河瀬光、河井真也プロデューサー・斎藤博、西岡琢也脚本・佐藤雅道監督・南野陽子主演 ©大和和紀/講談社・東映

第5作 1988年8月『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎音頭』(立花理佐・宮崎萬純) 配収7億3000万円

1988年8月東映『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎音頭』きうちかずひろ原作・ 黒澤満企画・紫垣達郎プロデューサー・那須真知子脚本・那須博之監督・仲村トオル主演 ©東映

 同時上映:『菩提樹 リンデンバウム』南野陽子主演

1988年8月東映『菩提樹 リンデンバウム』大和和紀原作・中曽根千治、西村孔伸企画・稲生達朗、河瀬光、富田正人プロデューサー・内藤誠、桂千穂脚本・山口和彦監督・南野陽子主演 ©東映・エス・ワン カンパニー

第6作 1988年12月『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎完結篇』(立花理佐・宮崎萬純) 配収6億7000万円

1988年12月東映『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎完結篇』きうちかずひろ原作・ 黒澤満企画・紫垣達郎プロデューサー・那須真知子脚本・那須博之監督・仲村トオル主演 ©東映

 同時上映:『恋子の毎日』松村雄基主演

1988年12月東映『恋子の毎日』ジョージ秋山原作・ 天尾完次企画・安藤昇プロデューサー・松本功、平川輝治脚本・和泉聖治監督・松村雄基主演 ©東映

 かつての勢いは無くなったとはいえ『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎完結篇』も堅調な成績でしたが、仲村トオルはこの作品で高校生役を卒業しました。

1989年1月発行 社内報『とうえい』第338号

 『ビー・バップ・ハイスクール 』で人気が沸騰した仲村トオルは、シリーズの合間を縫って様々な映画に主演しています。

〇1987年7月公開『新宿純愛物語』

 1987年3月公開の第3作ビー・バップ・ハイスクール 与太郎行進曲』に主演した仲村は、セントラル・アーツが製作協力した『新宿純愛物語』(那須博之監督)に主演しました。

1987年6月発行 社内報『とうえい』第320号

 新人の一条寺美奈が相手役を務めたこのアクション映画には、ビー・バップに出演する俳優たちや新日本プロレス木村健吾なども出演しています。

1987年7月東映洋画『新宿純愛物語』桑原譲太郎原作・ 長谷川安弘企画・黒澤満、青木勝彦プロデューサー・那須真知子脚本・那須博之監督・仲村トオル、一条寺美奈主演 ©東映・セントラル・アーツ

 講談社の雑誌『スコラ』から『新宿純愛物語 仲村トオル』と題した写真集も発売され人気を集めました。

講談社『スコラ』発行『新宿純愛物語 仲村トオル』写真集表紙

 7月東映洋画の配給で山本陽一主演『恐怖のヤッちゃん』(金子修介監督)と同時公開されます。
 結果、配収5億円と堅調な数字でしたが期待を下回る成績に終わりました。 

1987年7月発行 社内報『とうえい』第321号

〇1988年3月公開『ラブストーリーを君に』

 続く8月には、東映オスカープロモーションが共同製作する後藤久美子主演『ラブストーリーを君に』(澤井信一郎監督)に後藤の相手役としてW主演することが発表されます。

1987年8月発行 社内報『とうえい』第322号

 この映画は、フランスの小説家のディディエ・ドゥコワンの小説『眠れローランス 』を原作に黒澤満が企画し、オスカープロモーション社長古賀誠一に話をして製作した映画で、NHK大河ドラマ『独眼竜政宗』愛姫役で一躍国民的アイドルとなり「ゴクミ」が流行語に選ばれるほど人気が高かった後藤久美子とビーバップで人気のある仲村トオルの純愛映画は、話題を呼びました。

1988年1月発行 社内報『とうえい』第326号

 これまで不良高校生役で体を張った演技をしてきた仲村は、この作品で等身大の大学生役を演じ、1月には文部省選定作品に選ばれました。 

1988年3月東映洋画『新宿純愛物語』ディディエ・ドゥコワン原作・ 黒澤満、古賀誠一企画・伊藤亮爾、小島吉弘プロデューサー・丸山昇一脚本・澤井信一郎監督・後藤久美子、仲村トオル主演 ©東映・セントラル・アーツ

 人気アイドルのW主演で大きな話題を呼んだこの作品は、1988年3月東映洋画配給にて渋谷東急系でロードショー公開され、目標には届かず興行は堅調な数字で終わりましたが、この頃から盛んになった2次利用のビデオの売り上げが製作収支に貢献しました。

1988年3月発行 社内報『とうえい』第328号

〇1988年12月公開『悲しい色やねん』

 この年仲村トオルは、東映サンダンス・カンパニーが製作した小林信彦原作『悲しい色やねん』(森田芳光監督)に主演します。


1988年11月発行 社内報『とうえい』第335号

 この映画は、サンダンス・カンパニー古澤利夫藤峰貞利)が仲村を主演に企画し、セントラルアーツが製作協力しました。

1988年12月東映洋画『悲しい色やねん』小林信彦原作・ 藤峰貞利企画・黒澤満、青木勝彦プロデューサー・森田芳光脚本・監督・仲村トオル主演 ©東映

 12月東映オスカープロモーション共同製作の後藤久美子主演『ガラスの中の少女』(出目昌伸監督)と東映洋画配給で同時公開されましたが、厳しい成績に終わります。

〇1989年1月3日テレビ朝日時代劇スペシャル『家光と彦左と一心太助~天下の一大事 危うし江戸城!~』

 1989年テレビ朝日仲村トオル主演で新春時代劇3時間スペシャル『家光と彦左と一心太助~天下の一大事 危うし江戸城!~』を放映しました。

1988年12月発行 社内報『とうえい』第336号

 舛田利雄が監督のこのドラマでは、主役の仲村トオル徳川家光一心太助の二役、若山富三郎大久保彦左衛門役、酒井法子が太助の恋人役を演じています。

テレビ朝日『家光と彦左と一心太助~天下の一大事 危うし江戸城!~』(1989年1月3日)一心太助役仲村トオルとお仲役酒井法子

 仲村トオル人気で世帯視聴率13.6%と好成績でした。

テレビ朝日時代劇スペシャル『家光と彦左と一心太助~天下の一大事 危うし江戸城!~』(1989年1月3日)一心太助役仲村トオル

〇1989年8月公開『六本木バナナボーイズ』

 次作は『六本木バナナボーイズ』(成田裕介監督)に主演、再び清水宏次朗と共演します。 

1989年7月発行 社内報『とうえい』第343号

 セントラルアーツが制作協力し、『ビー・バップ・ハイスクール』のチーフ助監督だった成田裕介が監督、アクションは高瀬将嗣が担当しました。 

1989年7月発行 社内報『とうえい』第343号

 またこの作品は、前年の11月に東映社員となった岡田裕介東撮所長付ヘッド企画者兼第一企画部長が、黒澤満と共に企画を担当しています。

1989年8月東映『六本木バナナボーイズ』喜多嶋隆原作・ 黒澤満、岡田裕介企画・青木勝彦、山本勉プロデューサー・柏原寛司脚本・成田裕介監督・仲村トオル主演 ©東映

 8月東映の配給で、同じく岡田裕介黒澤満が企画した玉置浩二主演『右曲がりのダンディー』(那須博之監督)と同時公開されました。

1989年8月東映『右曲がりのダンディー』末松正博原作・ 岡田裕介、黒澤満企画・小島吉弘プロデューサー・那須真知子脚本・那須博之監督・玉置浩二主演 ©東映
1989年8月発行 社内報『とうえい』第344号

 この後、黒澤満が取締役である東映ビデオが製作を始めたオリジナルビデオVシネマ)でも活躍して行きます。

 1988年東映太秦映画村5月3日9月3日、人気絶頂の仲村トオルを迎え、サイン会を行いました。

1988年5月3日 東映太秦映画村「仲村トオル」サイン会にて 

 両日とも数多くのトオルファンが映画村につめかけたそうです。

 次回は仲村トオルも活躍したセントラル・アーツ製作『あぶない刑事』を紹介いたします。

トップ写真:『六本木バナナボーイズ』カジュアル姿の清水宏次朗と仲村トオル