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ライナーnoteS 2021(逆噴射小説大賞投稿作)

 よく来たな。
 逆噴射小説大賞もいよいよ4年目。今年は1人3発の弾丸でMEXICOの荒野に送り出されるとあってか、参加者も何処となく落ち着いた印象を受ける気がする。そして扱いを誤れば己を焼き尽くす火となりかねないニューウェポン|「ルビ機能」《るびきのう》……記号さえも字数制限に含まれるものの、巧く使えばMEXICOの荒野に新たな井戸が生まれるかもしれない。

 本年は逆噴射ワークショップに参加し、逆噴射聡一郎先生から日々プラクティスする真の男たちへのアドバイスを受け、真の男へと一歩近づいた真の男たちも多く参加している。これによりMEXICOはもはや油断ならないパルプ荒野と化してきたが、それでも何だかんだ気軽に参加できる祭りの一側面もありがたい……というのが実感だ。

 参加4年目の俺は結局、弾倉を空にして祭りを終えた。
 つまり今年は計3発の作品を投稿したって寸法だ。

 今年は事前に備えていたので、当然当日0時に一発目を撃ち込むつもりだったが、そんな日に限って寝落ちして……1時に目覚め慌てて投稿したって寸法だ。お前も「肝心な時に下手を打つ奴はブーツの中に入っていた蠍に刺されて……死ぬ」の故事を忘れるな。

 今年も1作でも記念的に投稿出来れば良いだろう……くらいに当初思っていたものの、いざ投稿してみると書きたいモノが次々と湧いてくるという毎年繰り返されるパターン……結局そうなるのが当たり前の様な、そんな実に逆噴射トーバーらしい逆噴射トーバーだった事が印象深かった。
 ちなみにこの文章は去年の使い回しだ。

 今年の課題
・歴史モノで決め打ちする
・歴史的考証は極力正しくし、敢えて逸脱させる
・読み難い表現でもどうにか伝わる様にする

 前置きが長くなったが、各投稿作品の解説・裏話等を楽しんで頂ければ幸いだ。

 尚このようなライナーノーツを書く事で、日を経た投稿作を再度人の目に触れる機会を増やすという巧みなマーケティングも兼ねている。

◆◆◆

千本桜・オブ・ザ・デッド

 本年度投稿作、第1弾!初日0:00に投稿予定だった作品です。
 こういうの書く人だよね。と思って貰えれば幸いです。

 話自体はずいぶん前から考えていたので漸くお蔵出し……とは言うものの、どこらへんのエピソードで、どのシーンで「オブ・ザ・デッド感」を出すのかかなり悩みました。平氏の陣に崖上から死者の群れが降ってくるシーンから始めた方が……とも思いましたが、800字では登場人物もろくに画面に出なかったので結局今の形に。

 話のベースになったのは火の鳥・乱世編と孔雀王ですね。
 ともに私の義経観に多大な影響を与えた作品です(あまり判官びいきっての好きでは無いのです)
 この作品の義経は生死者リビングデッドを作り出せるものの、自身は生死者ではなく生まれながらの不死者です。一方、弁慶は西行法師の手により作られた人造不死者で、死ぬ為に不死者殺しの太刀を求めて歪んだ主従の関係を結んでいます。生存説と仁王立ちからインスピレーション得た感じです。

 タイトルロゴは多くのオブ・ザ・デッドものの作品からタイトルデザインの法則(?)に沿って作成しましたが、桜の木を一本足したら女子高生が学校の存亡をかけて戦車の道を邁進する作品みたいになってしまいました。
 結果的に妙な味わいが出て気に入ってます。

 投稿の支度をしていてレギュレーションを見たところ、ルビの字数は文字数に含めると追加されたので、急遽ルビ無し版を作りそちらを投稿作としました。一度ルビ有版もお読みいただくと読み味が多少違うかもしれません。

 ここで鎌倉コソコソ噂話!(デデン!)
 筆者は烏天狗の面頬については
 最後の最後に思いついて書き足したそうですよ?


大拳闘西域記

 これもネタ帳に大分前から存在していた一作だったのですが、当初は空海や最澄が唐を超え、シルクロードを渡り、ローマのコロッセオでバトルする……というコンセプトでした(後述しますがこれには歴史的無理がありました)

 なんとなく三蔵法師の髑髏の話を思い出し、結局何度も転生して天竺を目指す三蔵法師(三蔵は位の名前なので何人も存在したのです)の話になるのですが、実は三蔵の時代(唐代)にはローマでの剣奴の見世物は禁止され(地方ではまだあった様です)根本的に話が成り立たないので(どうせ三蔵法師の転生自体がファンタジーじゃん……なら転生ついでにお釈迦様に時間も巻き戻して貰お……)という発想に(蓮の花を蕾に戻した描写はそういうことです)

 主人公の名前はサンゾニウスの方が語感は良いのですが、ちゃんと三蔵の文字は入れないとな……と思いサンゾウヌスに。
 サンゾウヌスの不殺の必殺拳は言うまでもなく菩薩掌です。

ここで羅馬コソコソ噂話!(デデン!)
実は戦う相手は
普通の剣闘士→ライオン→(吹っ切れて)ミノタウロス
と変遷した後、ミノタウロスって…牛魔王じゃん!
とひらめいたみたいですよ?

ソルト

 不思議と皆さんから「ヒュー!」とコメントを頂いた問題作。
(本気で公式マガジンに収録されないのでは……とビビッていました)

 実は全然違う洞窟探検ものを書いていたのですが、アイデアと書きたい事が全然嚙み合わず、書いて直してを繰り返すうちに、行き詰まり……
 そんな中、先日お亡くなりになられたみなもと太郎先生の「風雲児たち」(ワイド版14巻)を読んでいたところ(大塩平八郎……大塩平八砲、書いてみるか)に至った訳です。
 尤も大塩平八砲はほりのぶゆきの「江戸むらさき特急」ですけど。
 両作品とも私に多大な影響を与えた作品です。

 大塩平八郎生存説といえば源義経、エルヴィス・プレスリー生存説と並んで世界三大生存説として有名ですが、大塩と大砲を結び付けた時点で話は決まったようなモノでした。
 後は過去を捨てたはずなのに、また捨てた筈の過去の世界に飛び込んでいく孤独な男の孤独なSilhouetteを書くだけです。

 幸い私は近所にかつて大塩の生活した環境があり(福沢諭吉生誕の地や適塾も近場なのです)情景描写に関してはR.E.A.Lに近い……と思います。
 ですがネックになったのは大坂弁(?)や廓言葉が文字にするとどうにも嘘くさくなる事でした。一応、廓言葉は調べながら書きましたが、もしかしたら地方によって違うかもしれないですし、大坂弁も船場言葉(商人の使う言葉)をベースにしたので、実際の庶民の言葉とは違うかもしれません。
 まあ読んで頂いてソレっぽく感じていただけたなら幸いです。

 他の2作よりあっさり書けたわりに「怒られ枠」「反省部屋枠」とお褒めの(?)言葉を賜り、何かと刺さって下さった方も多かった一作です。
 特に砲のオノマトペを良く誉めて頂きました。
 現時点で本年度最も読んで頂いた作品となり、多くの感想を頂きました。  
 読んで笑って、楽しんで頂けるて書き手冥利に尽きる一作となりました。
(なんだかんだで幕末冒険アドベンチャーとして転がしやすい話ではあるので、また皆さんのお目に掛かるかもしれません)

 ここで幕末コソコソ噂話!(デデン!)
大塩(作中設定:権兵衛)の長屋に置いてある絡繰人形の中には
相棒の娘型武装絡繰人形・格之助(史実では養子)が
隠されているらしいですよ?


未来へ

 昨年は「カタカナ表記の単語は文字数を食うので、noteは早くルビ機能を実装しろ!」とか言ってましたが、実際実装されてもなかなか使用するのに躊躇ってしまう諸刃の剣感があり、結局投稿作には使用しませんでした(そうでなくても字数を削るのにあっぷあっぷしていたので)

 前年に引き続き、書きたいテーマをパルプに寄せていくという手法で書きましたが、これが今のところ性に合っている様です。
 他の人の書かれる様な紫煙と硝煙、血と臓物、機械と幻想、探偵と殺し屋的な王道パルプ路線がどうにも自分自身には難しいので(ホント、なかなか書こうとしても書けないのです)「こういう作風と言えばアイツ」と思われる様に今後も精進していきたいと思います。

 かなりスローペースではありますが、前年度の投稿作の続編も書いていますので今後も続けて書いていく事と、“文章自体の艶”に加え、“カメラワーク”等もを身に着けれるよう頑張りたいと思います。
 プラクティス・エブリデイ……

以上です。

前年度投稿作の続編はこちらです。


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