有井康博

大学教員。食品の不思議を明らかにする研究、新しい食品を生み出す研究をしています。

有井康博

大学教員。食品の不思議を明らかにする研究、新しい食品を生み出す研究をしています。

最近の記事

「バカロレアの哲学」を読んでみた件

日本の教育で足りていないのは、考えることと考えたことを伝えること。インプットは得意だけど、アウトプットは苦手。そんな人ばかりが生産されている。 もちろん、◯っしーの発明者の様にインプットは苦手だけど、アウトプットは得意っていうタイプが間違ったアウトプットを続けることには問題があるけど。 それはさておき、論理的に多角的に物事を考え、アウトプットする行為は、トレーニングによって身につけることができる技術である。こういう講義を増やしたら、文理関係なく、社会に役立つ人材の底上げが

    • 「大学教授こそこそ日記」を読んでみた件

      関西では有名私立KG大学の60代教授が書かれた本。一般の人が大学教授って生き物を知るには悪くない本かな。間違ったことは書かれてないし、あの世代の大学教授って感じです。この人は恵まれている方だと思う。 ポスドク創世記の50代前半以降の人が読むと、恵まれていて、羨ましいと思うだろう。40代、30代はそもそも大学に残っている人も少ない。空洞化。 学務のこと、色々と大変そうなことが書かれていたけど、うちはもっと大変ですけどぉ〜って思いました。

      • 「自衛隊の闇組織」を読んでみた件

         今年大ヒットしたドラマVIVANTを観て、盛り上がって買いました。そもそも2018年の本なのに、ドラマ効果でよく売れているそうです。同じ様な人はたくさんいるってことですね。  著者は「別班」の存在を明らかにしようと、取材を重ねています。そして、新聞に掲載されますが、防衛大臣とは噛み合わない。著者は「ある」、大臣は「ないと聴いている」の水掛け論で噛み合わず、結局「ある」証明には至っていない。本書は自身の身の安全確保の為に書いたとのこと。著者は別班の存在の仕方に問題があると主

        • 「まだまだ 身の下相談にお答えします」を読んでみた件

           上野千鶴子先生が色々な人の悩みについてお答えしてくれる、朝日新聞土曜日 「be」の「悩みのるつぼ」を文庫にまとめてくれた本。  どうやら、第三弾のよう。前の二つは読んでいません。親、家族、夫や妻への不満、親としての自分、独身としての自分、ジェンダーに囚われる自分、老いる自分が抱える不安や悩みに、上野先生が社会学者らしく、冷静にするどく回答してくれています。  お悩みの手紙が紹介され、それに対する回答が繰り返されるのですが、手紙の行間を読み取るすごさは、さすがです。なるほどね

        「バカロレアの哲学」を読んでみた件

          「ルポ 食が壊れる」を読んでみた件

           食が抱える問題は多数あるけど、もっとも重要な問題は、「安全な食を十分に供給できるか」問題だろう。最近よく耳にする言葉、フードテックは食の抱える問題を解決できるテクノロジーとして期待されているが、その裏には経済的な思惑が見え隠れする。  本書は、そのような思惑を解りやすく紹介してくれていることに加えて、食の問題は農業の問題、ひいては土の問題であることを述べています。既に私たちは、経済優先の選択を止めた方がよい時代に突入しており、優先すべきことを見失うことなく、選択していかなけ

          「ルポ 食が壊れる」を読んでみた件

          「忖度なしの栄養学」を読んでみた件

          管理栄養士を目指す学生の中には、スポーツ栄養に携わりたいと願う人が少なからずいます。スポーツ栄養士になろうと思うと、管理栄養士を取得して、スポーツ栄養士としての介入をしつつ、資格取得のための勉強会に当たらないといけない。昔はそんなに大変ではなかったみたいだけど、近年はなかなかの難関のようです。 スポーツ選手に限らず、ボディーメイクに関心がある人の多くは、食べることにも意識が高いと思います。実際に、何をどのように食べるか?は健康を維持していく上で、とても大切ですから、生きてい

          「忖度なしの栄養学」を読んでみた件

          「仮面ライダー昆虫記」を読んでみた件

          稲垣栄洋著の「仮面ライダー昆虫記」新装版を読んでみました。20年前に出版されたものの復刻版。著者は、農学博士で農学部大学教授。1968年生まれ。仮面ライダー1号がテレビに登場したのが1971年。 この本を読んで、著者の解釈も含めて、仮面ライダーというよりも石ノ森章太郎氏の凄さに感心しました。仮面ライダーは当時の子供たちにとって1話ごとも十分に楽しめるものであったけど、より深く考える子供や注意深い子供たちにとって、より楽しめて、そのような子供たちに対するメッセージが忍ばせてあ

          「仮面ライダー昆虫記」を読んでみた件

          「なまけ者のさとり方」を読んでみた件

          タデウス・ゴラス著、山川紘矢・亜希子訳の「なまけ者のさとり方」という本を読んでみた。このところ、いろいろな本を買い過ぎて、(在庫が捌けるまで)しばらく本は買わないぞ!と心に誓って、書いたい本があってもスルーしておりましたが、この本ともう一冊を行きつけの本屋でみて、どうしても今買っておかないといけない気がしたので、(逆らわず)買ってしまいました。 いわゆる自己啓発本とは少し違う。ちょっとスピリチュアルなテイスト。書かれていることは、なかなか難解。何度も読んでみて、腑に落ちない

          「なまけ者のさとり方」を読んでみた件

          「ルポ 大学崩壊」を読んでみた件

          田中圭太郎氏の「ルポ 大学崩壊」を読んでみました。きっかけは仲の良い事務職員さんから「いつも本を借りてばかりなので、どうぞ」と。 さて、読み終わった感想は「救いがない」でした。文部科学省が推し進める大学改革と天下りで、現場はめちゃくちゃ。悲鳴しか聞こえん!という悲惨な状況がつらつらと事例と共にレポートされています。こういうレポートは、切り口によって(立ち位置によって)、起こっている現象の理解が変わるわけなので、改革側のご意見も聞かないと、大きな流れの中における小さなトラブル

          「ルポ 大学崩壊」を読んでみた件

          「話し合いの作法」を読んでみた件

           中原淳先生の「対話と決断」で成果を生む話し合いの作法を読んでみました。現代日本の大きな問題点「話し合いができない」、「話し合いとは」、「対話の作法」、「決断の作法」ということについてわかりやすく、イラスト付きで書かれています。自分の組織を見ていても、話し合いができているとは思えません。この本に書かれている、ダメな会議の典型が日々繰り返されている状態です。こういう状態が続くと「どうせ…」という雰囲気が漂ってしまいます。これを変えるには、リーダーが変わる(リーダーを変える?)必

          「話し合いの作法」を読んでみた件

          「大学をいかに経営するか」を読んでみた件

           少子化問題、新型コロナの影響で、(特に)私立大学の経営状況が芳しくないのは、色々なニュースを観ていて、多くの人が感じているのではないだろうか。  文頭に「少子化や新型コロナの影響で」と書いたけど、果たして本当にそうだろうか。影響がないわけではないだろうけど、私立大学の経営状況が芳しくない主因は、時代とのズレだと私は考えています。本書は、その点を的確に捉えて、必要な改革をアドバイスしてくれています。もちろん、それはちょっと...と思うところもあるけれど、瑣末なことはさておいて

          「大学をいかに経営するか」を読んでみた件

          「パワハラ上司を科学する」を読んでみた件

           とても読みやすくて、わかりやすい本でした。売れている理由がわかります。 「パワハラはダメ」ということは、多くの人が認識していることだけど、実は誰でもパワハラをしてしまう可能性を秘めているわけです。その発生メカニズムを理解して、「おいおい、自分はなんかパワハラへ向かっているぞ」と自己認識して、方向転換する能力を身につけることは大切だと再認識しました。  成功した人は誰しも、自分が経験してきたことを正しいと思い込んでしまう傾向にあります。そして、学んだことしか教えることができな

          「パワハラ上司を科学する」を読んでみた件

          郵便局で入金して凹んだ件について

          立替していたお金が戻ってきて、10円、5円、1円がたんまり。合計245円。財布に入れるのは邪魔だから、郵便局へ入金しに行きました。 窓口よりATMの方が手数料がかからないだろうと勝手思い込み、画面もあまりよく見ずに、入金を済ませたら、手数料220円(25〜50枚)が取られていました。どうやら小銭の入金は一年前から手数料を取るルールになったらしい。 無知は恐ろしい。 局員さんに尋ねたら、枚数によって金額が違うこと、窓口なら50枚までは無料だということ、を教えてもらいました

          郵便局で入金して凹んだ件について

          田嶋陽子さんの「ヒロインは、なせ殺されるのか?」を読んでみた件

           某テレビ番組で紹介されていたので、読んでみた。彼女の著書としては、古い作品のようですが、最近再版して売れているそうです。フェミニズムの本。  彼女の訴える女性の解放問題は、社会全体で取り組んでいかないといけない内容ではあるけど、男社会を批判するあまりに男性から協力が得られにくいという構図、男社会で勝ち抜くために彼女が批判する男性みたいに振る舞う女性たちが少なからずいるという構図、男社会が正しいんだと主張する女性たちも多いという構図、なかなか複雑な問題です。男社会の洗脳が女性

          田嶋陽子さんの「ヒロインは、なせ殺されるのか?」を読んでみた件

          ハチミツで豆乳を固める

          豆乳にグルコノデルタラクトンを入ると、グルコン酸に変化する。この変化が、豆乳のpHを下げ、豆乳タンパク質の等電点に達すると、豆乳タンパク質が沈澱する。この沈澱が豆腐である。 ハチミツにはグルコン酸が豊富に含まれている。だから、豆乳にハチミツを入れてみたら、豆乳が固まった。とても美味しいスイーツ豆蜂が生まれた瞬間である。 科学の知識を用いて、新しい食品を生み出す。私はこの食品を未来型食品と呼んでいる。とてもクリエイティブ。多くの人を笑顔にしたい。

          ハチミツで豆乳を固める

          私を支える恩師の言葉

          「辛い時は学び続けなさい」 大学時代の研究室のボスが私に言ってくれた言葉です。 辛い時とは、人生に行き詰まった時、閉塞感を感じる時、不安に思う時、周りから迫害を受けていると感じた時、色々あると思います。 学ぶ行為は、わからないこととわかっていることの境界線をみつけるためには、必要です。その境界線の向こう側には、あたらしい世界が広がっています。 学び続けること自体が、辛いことと感じるかもしれません。でも、学ぶことで得たものは、誰からも奪われません。誰かを助けることができ

          私を支える恩師の言葉