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LanLanRu映画紀行|ピンクの豹

一寸こんな映画は他にない。他愛ないどたばたコメディーだが、粋でテンポよく、上品だけどユーモアたっぷり。オープニングのアニメーションだけでも10回は見る価値がある。そして、あまり知られていないが、あのアニメキャラクターの「ピンクパンサー」を生んだ映画でもある。

粋でお洒落なコメディー映画「ピンクの豹」

1964年公開/ブレイク・エドワーズ監督作品
世界一大きいダイアモンド「ピンクの豹」をめぐって、怪盗ファントムとそれを追うパリ警察のクルーゾー警部が引き起こすどたばた喜劇。何も考えずに楽しく笑ってみていればいいのだが、作曲をヘンリー・マンシーニ、衣装をイブ・サン・ローランが担当しているとなれば、なんとも豪華な映画である。

俳優陣も個性的だ。デヴィッド・ニーヴン、ピーター・セラーズ、キャプシーヌ、クラウディア・カルディナーレ、ロバート・ワグナー出演。
シャンパンに酔って虎の敷物の上で戯れるクラウディア・カルディナーレの魅力的なこと。あんな姿を見せられたら誰だってイチコロだ。キャプシーヌも美しい。クールなのに、しょっちゅうクルーゾー警部やリットン卿の甥っ子の乱入に調子を狂わされているのが可笑しい。
そしてどたばたの名人クルーゾー警部。ピーター・セラーズが演じている。よそ見をすれば担架に乗り上げ、ローソクに火をつければ花火を爆発させる。こんな調子で最後までさんざんのクルーゾー警部だが、本人はいたって大真面目。真剣に職務を遂行しているつもり。このずっこけぶりに人気が出て、以降彼が主役の続編が作られていく。

実は宝石!「ピンクパンサー」

そしてもう一つ。この映画から人気が出たのがオープニングアニメに登場したキャラクター「ピンクパンサー」である。彼の公式のプロフィールによると実は”ピンクダイアモンドの妖精”らしい。(知らなかった!)
ちなみに映画本編の中では、「ピンクの豹」というのは世界中の宝石泥棒が狙っている巨大なピンクダイヤモンドのこと。ダイヤの中に見える傷が豹の形に見えることから命名された。
「ピンクの豹」と同時公開された7分間の短編アニメーション「The Pink Phink」でアカデミー最優秀短編アニメーション賞を受賞するなど、キャラクターとしての「ピンクパンサー」も大活躍。後には独立したアニメーション作品としてテレビアニメの主人公にまで成長した。


あの名曲も! 「ピンクの豹」から生まれたヒットナンバー

ある時はコミカルに。またある時は哀愁たっぷりと。ヘンリー・マンシー
ニによる名曲の数々も映画に魅力を添える。
主題歌「ピンク・パンサーのテーマ」を知らぬ人はいないだろう。どこかで一度は耳にしたことがあるはずだ。聴けば一瞬で怪しい気分に引き込まれる。何か悪いことをしているような、見てはいけないものを覗いてしまったような・・・・。これもまた「ピンクの豹」から生まれたヒットナンバーである。
そしてもう1曲、映画全編を彩るのが「今宵を楽しく」。こちらも名曲。ラテンのリズムが妖しい情熱を掻き立てる。フラン・ジェフリーズがリゾートホテルのラウンジで歌い踊るシーンはこの映画の見どころの一つだ。


さいごに

今となっては映画本編よりもテーマ曲やオープニングに登場したアニメーションキャラクターの方がなじみがあるのかもしれない。後には独自のコンテンツとして発展してゆく、そんな魅力の萌芽がぎゅっとつまった「ピンクの豹」。今ではなかなか見られないような、エスプリの効いた楽しい映画でもある。本当に、こんな映画は一寸他にないように思う。独特の存在感を放つ、珠玉の一作だ。

次作の「暗闇でドッキリ」はまだ見る機会に恵まれないが、いつか見てみたい映画の一つである。



〈参考文献〉
・ピンクパンサー公式サイト
https://www.peanuts-club.co.jp/character/pink_panther/


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