東郷えり

ほかの教科はイマイチだけど、なぜか世界史だけは昔から大の得意。文学や映画の中に垣間見え…

東郷えり

ほかの教科はイマイチだけど、なぜか世界史だけは昔から大の得意。文学や映画の中に垣間見える歴史の断片をご紹介します。世界史の小ネタ探しなどにどうぞ。

最近の記事

LanLanRu映画紀行|時の面影

舞台:1939年 / イギリス 「発掘」にはロマンがある。 それは過去を掘り起こして、ルーツを探る行為だ。地中に埋もれている人の痕跡は、驚くほど多くの情報を今に伝えてくれる。たとえば「モノ」の素材からは交易の範囲の広さを。制作方法からは、それが作られた時代や技術力のレベルを。見つかった場所から、どのような目的で使われていたか推測することもできる。 そうした「モノ」を一つ一つ掘り出して記録していくのは、実のところ根気のいる、地味な仕事だ。だが、そうした作業が、時には歴史的な

    • LanLanRu文学紀行|黒いダイヤモンド

      ジュール・ヴェルヌ著 舞台:19世紀 / イギリス(スコットランド) 「黒いダイヤモンド」とは石炭のことを言うらしい。『‎八十日間世界一周』や『海底二万里』のジュール・ヴェルヌが描いた地下世界での冒険小説。イギリス、スコットランドの炭坑地帯が舞台である。 10年前に閉鎖されたスコットランドのアバーフォイル炭坑で、かつて監督をしていた技師ジェイムズ・スターのもとに、かつて坑夫頭を務めていたサイモン・フォードから炭坑まで来て欲しいという謎めいた1通の手紙が届く。ところがその後

      • LanLanRu映画紀行|美女ありき

        舞台:1786-1815年/イギリス 大学の受験日前日、今更じたばたしたって仕方ないやと、ホテルのテレビをつけたらやっていたのが「美女ありき」だった。トラファルガーの海戦で活躍したイギリス海軍提督、ホレーショ・ネルソンとハミルトン夫人の不倫の恋を描いたモノクロ映画。見るともなく見ていたら、次の日の試験でトラファルガーの海戦についての問題が出た。無事大学にも合格できたので、幸運の思い出の映画だ。 ハミルトン夫人の不倫の恋を描いた「美女ありき」 1941年公開/アレクサンダ

        • LanLanRu文学紀行|モンテ・クリスト伯(後編)

          アレクサンドル・デュマ著 舞台:1815-1838年/フランス アレクサンドル・デュマの『モンテ・クリスト伯』を読み終わった。この本、なかなかの長編である上に、終盤にむけて話が一気に盛り上るので、ページをめくる手が止まらなくなるのが困ったところ。 読み終わっても興奮冷めやらず、作者のデュマのことやら、周辺情報など気の向くまま調べていたら、まだまだ裾野に広い世界が広がっていることに気が付いた。『モンテ・クリスト伯』については以前に一度まとめているが、書きたいことがいくつも出

        LanLanRu映画紀行|時の面影

          LanLanRu文学紀行|モンテ・クリスト伯(前編)

          アレクサンドル・デュマ著 舞台:1815-1838年/フランス 決して試験前に手に取ってはいけない。読み始めたが最後、夢中になってのめりこんでしまうこと請け合いだ。わくわく、どきどき、はらはら。ぞくり。華麗な復讐劇のスリルとサスペンスにページをめくる手が止まらない。続きが気になって気になって、勉強なんか上の空。おまけに寝不足。 この本を手に取ると、子供の頃に夢中で読んだ興奮をそのままに思い出す。 『モンテ・クリスト伯』。アレクサンドル・デュマの代表作である。 無実の罪で

          LanLanRu文学紀行|モンテ・クリスト伯(前編)

          LanLanRu映画紀行|ピンクの豹

          一寸こんな映画は他にない。他愛ないどたばたコメディーだが、粋でテンポよく、上品だけどユーモアたっぷり。オープニングのアニメーションだけでも10回は見る価値がある。そして、あまり知られていないが、あのアニメキャラクターの「ピンクパンサー」を生んだ映画でもある。 粋でお洒落なコメディー映画「ピンクの豹」 1964年公開/ブレイク・エドワーズ監督作品 世界一大きいダイアモンド「ピンクの豹」をめぐって、怪盗ファントムとそれを追うパリ警察のクルーゾー警部が引き起こすどたばた喜劇。何

          LanLanRu映画紀行|ピンクの豹

          LanLanRuミュージカル紀行|王様と私

          舞台:1862-1868年代初頭、/シャム(タイ) ブロードウェイの大ヒットミュージカル「王様と私」。 きっと誰でも一度は聞いたことがあるにちがいない「Shall we dance?」 などのヒットナンバー、また1951年の初演以来歴代の個性豊かな俳優の演技が印象的な、ロジャース&ハマースタインの作品である。 最近ではケリー・オハラと渡辺謙の共演が記憶に新しい。ミュージカル黄金期につくられた名作にふさわしく、舞台美術も衣装も華やかに工夫が凝らされている。叶うならば、いつかは

          LanLanRuミュージカル紀行|王様と私

          LanLanRu映画紀行|ジャイアンツ

          舞台:1920-50年代/アメリカ 「ジャイアンツ」を再見して 初見の時にはエリザベス・テイラーの美しさを堪能した。だが、考えてみるとそれだけではどうも終われない映画のような気がしてきた。改めて見るとこの映画、ベネディクト家の姿を通して時代の流れの中に移り行くテキサスの姿を描いている。西部劇で有名なテキサスであるが、実はこの土地についてあまりよく知らないことに気が付いたのだった。 テキサスの大牧場の家族史を描いた ハリウッドの超大作映画 1956年公開/ジョージ・ステ

          LanLanRu映画紀行|ジャイアンツ

          LanLanRu映画紀行|デリシュ!

          舞台:1789年、/フランス デリシュ!美食の国フランスにてレストランの誕生を描いた映画 2022年公開/フランス・ベルギー合作 きれいな、まるで絵画を見ているような、光と影の美しい映画だった。それだけでも十分見る価値があると私などは思うのだが、この映画、主題はフランスの「食」の革命についてである。面白そうなテーマだと思い、今回記事に取り上げることにした。 1789年、革命前夜のフランス。マンスロンは、公爵主催の食事会で腕を振るう宮廷料理人である。しかし一皿の創作料理が

          LanLanRu映画紀行|デリシュ!

          LanLanRu漫画紀行|ベルサイユのばら

          舞台:1755-1789年 / フランス 不朽の名作、少女漫画の金字塔。誰もが知っていると思ったら、担当していたクラスの高校生が誰も知らなくてがっくりきた。そうか。今の高校生は『ベルサイユのばら』を知らないのか。だが、連載当時はベルばらブームが巻き起こったほどの人気漫画。アニメ、宝塚の人気演目にもなり、フランス革命に詳しい日本人がやたらに増えた。作者の池田理代子は日仏交流に果たした役割を評価され、レジオン・ドヌール勲章を受章しているし、フランスのジャック・ドゥミ監督まで映画

          LanLanRu漫画紀行|ベルサイユのばら

          LanLanRu文学紀行|風と共に去りぬ

          マーガレット・ミッチェル著 舞台:1860年代/アメリカ 子供のころは恋愛小説として読んでいた。レッド・バトラーの愛に気が付かず、アシュレーにばかり気にしている主人公、スカーレット・オハラをもどかしく思ったものだった。高校生になって南北戦争について習うと、リアルな戦争描写に驚いた。 『風と共に去りぬ』に描かれる南北戦争 『風と共に去りぬ』はアメリカ南部の大農園の娘、スカーレット・オハラが南北戦争を強く生き抜いていくさまを描いている。 南北戦争は、市民を巻き込んだ初めて

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