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LanLanRu漫画紀行|ベルサイユのばら

舞台:1755-1789年 / フランス

不朽の名作、少女漫画の金字塔。誰もが知っていると思ったら、担当していたクラスの高校生が誰も知らなくてがっくりきた。そうか。今の高校生は『ベルサイユのばら』を知らないのか。だが、連載当時はベルばらブームが巻き起こったほどの人気漫画。アニメ、宝塚の人気演目にもなり、フランス革命に詳しい日本人がやたらに増えた。作者の池田理代子は日仏交流に果たした役割を評価され、レジオン・ドヌール勲章を受章しているし、フランスのジャック・ドゥミ監督まで映画化していたと知った時には驚いた。

ファベルコミックス掲載『ベルサイユのばら』
池田 理代子 著

『ベルサイユのばら』とは

池田 理代子氏の代表作。フランス革命を背景にドラマチックに生きた人々を、華麗な絵で美しく描いた。オスカルとアンドレ、そしてマリー・アントワネットとフェルゼン伯。歴史の激流に翻弄されながら、それぞれの愛を貫いていく。

「オスカル・フランソワ」という存在

当時の少女漫画のキラキラした絵に、フェミニンで繊細なロココの雰囲気はよく似合う。リボンにレース、ふんわりと広がるドレスのお姫様。フランス革命前夜のヴェルサイユは少女たちが夢見た世界そのものだった。
そんな憧れの世界を美しく描きながら、池田理代子氏は、そこに男装の麗人、オスカル・フランソワを投入した。実在の人物ではない。彼女は女性として生まれながら、男性として育てられた。そして女性としての恋に苦しみながら軍人として出世をし、最後は革命に身を投じて命を燃やす。強く美しいオスカルの生きざまに、多くの女性が憧れた。
『ベルサイユのばら』連載開始の1972年、まだ高度経済成長期と言われている時代。労働力不足から女性が社会進出をはじめたころだった。男社会の職場の中に活躍の場を求めていかなければならなかった女性たちにとって、オスカル・フランソワは斯くありたいという理想の存在だったのではないだろうか。

ファベルコミックス掲載『ベルサイユのばら』第1巻より引用

はじめて歴史を描いた少女漫画

『ベルサイユのばら』は少女漫画の世界にも革命を起こした。少女漫画で「歴史」を描いたのである。当時、男性編集者しかいなかった編集部は「そんな題材が読者に理解されるはずがない」と猛反対。池田氏の「絶対に当てる。当たらなかったらすぐにやめる」という意思を条件に、連載は始められたという。ところがいざ連載が始まると大ヒット。女の子たちも実は歴史が好きだったのだ。その後『ツタンカーメン』、『王家の紋章』、最近では『風光る』など、少女漫画にも歴史をテーマに扱った作品が増えていったが、その端緒となったのはこの『ベルサイユのばら』なのである。

『ベルサイユのばら』関連作品

早々にメディアミックスに成功した作品ゆえか、関連作品も多いのである。
■ 宝塚歌劇「ベルサイユのばら」
宝塚では人気演目のひとつであり幾度も再演を繰り返している。「オスカル編」と「フェルゼンとマリーアントワネット編」があるらしい。熱烈な宝塚ファンの友人は、新婚旅行先にヴェルサイユ宮殿を選んだ。
■ アニメ「ベルサイユのばら」
1979-80 年にかけて日本テレビで放映されている。オープニングソング「薔薇は美しく散る」が独特で印象的。しっかり見る機会がなかったのでいつか見たいと思っているが、近々連載50周年を記念して劇場アニメ化が決まったとネットニュースになっていたので、そちらも楽しみである。
▼プレスリリース記事(2022年9月)
「ベルサイユのばら」劇場アニメ化決定 原作誕生から50年の節目に再アニメ化 : 映画ニュース - 映画.com (eiga.com)
■ 映画「ベルサイユのばら」
ジャック・ドゥミ監督の日仏合作映画。ジャック・ドゥミ監督といえばミシェル・ルグランと組んだ『シェルブールの雨傘』、『ロシュフォールの恋人たち』、『ロバと王女』などが有名。いずれも名作である。その二人がコンビを組んでいるにも関わらず、ほとんど知られていないこの映画。原作の世界観と相違があることもあり、どうやら評判としてはイマイチのようであるが、機会があれば見てみたいとは思っている。

■ その他、フランス革命を扱った作品
・『紅はこべ』(バロネス・オルツィ著)
・『二都物語』(チャールズ・ディケンズ著)
・『おちび』(エドワード・ケアリー著)
・『小説フランス革命』(佐藤 賢一著)
・『傾国の仕立て屋 ローズベルタン』(磯見 仁月著)
・「マリーアントワネットに別れをつげて」など多数





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