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カレーが教えてくれた無駄

家計簿をつけることで、自分の行動を俯瞰して見れるようになった。

エクセルの表に記された金額や項目を見ると、財布からお金を取り出した時の心理状態までもが脳裏に浮かび上がってくる。

一つ一つの項目を見ては、「それは本当に必要な出費であったか?」と逐一振り返ることを狂ったように繰り返していった。


人間は不安に駆られたり、ストレスを感じると、お金を使いたくなる傾向があるということも体感として理解することができた。

使うお金の額、ひいては稼ぐ額(=労働に割く時間)を減らしていきたかった僕は、出費の原因となる不安やストレスをそもそも抱えないためにはどうしていけばいいのかということに意識が向くようになった。

そして、欲しいものを得るため、それを買うのに必要なお金を稼ぐこと以外の手立てが他にないのか?ということも同時に考える癖がついていった。


震災を機に地元宮崎へ戻り、宮崎市内で一人暮らしをしながら飲食店でアルバイトを始めた。

家計簿をチェックして無駄を見つけて削ってはバイトに入る時間を減らし自由な時間を増やす、という地味な挑戦の日々が1年半ほど続いた。


でも、どうしても削れないものがあることに気づいた。

それが家賃や水道光熱費、ネット代といった、いわゆる「固定費」と呼ばれるもの。

これらを削るためにはどうしたらいいのか?ということを考える日々が続いた。


そんなある日、「今夜はカレーが食べたい」とふと思い立った僕は、近所のスーパーで食材を買い込み、当時住んでいたアパートの201号室に帰ると、お隣の202号室からカレーの匂いが漂っていたことがあった。

「この人も、カレーを食べたい自分1人のためにスーパーで食材を買い、食材を刻み、米を炊き、カレーを煮込んで食べているのだろうか」


そう考えた時に、すごく無駄を感じてしまった。

お互いが今夜はカレーが食べたい気分と知っていて、食材の買い出しや調理を分担し、できたカレーを「美味しいですね」とか言いながら一緒に食べた方が、なんぼか幸福度は高いじゃないか。

それを可能としないのは、たった数十センチの物理的な壁と、隣に住んでいるのにお互いのことをよく知らない、という精神的な壁が存在しているせいだった。


それからは、個別に契約しているネット回線も、追い焚き機能がなく自分1人が入ったら捨てられてしまうお風呂のお湯も、通勤のために1人しか乗っていない5人乗りの乗用車も、ものすごく無駄に思えてきた。


この「御一人様用」の住まい方から抜け出さない限り、支出の中で大きなウエイトを占める固定費の負担の割合は変わらない。

そう思い、シェアハウスを作り、そこに住もうという考えに至っていった。

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