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【20年前のMTB】型にはまらない唯一無二のスタイル!レストア&大改造(写真大量)■2023年07月02日更新

広島県広島市にある『動く』自転車屋【サイクルサービストグト】のnoteをご覧いただきありがとうございます。

実は変態系マウンテンバイク乗りでもあり、近所の小学生たちに
「うおー!
あのチャリすげー!」
と言われながら、まあまあハイスピード(指定速度以内)で走り抜けている『快適長持ち系自転車安全整備士』ノーリー(店長)です。
しかし角を曲がって小学生達が見えなくなったら、ハーハーゼーゼー言っているとは彼らも知らないでしょう。
自転車のスゴさや面白さを子供達に知らしめ、ゆくゆくは自転車愛好家人口を増やします。
これが汚い大人のやり方です(ニヤリ)。

■今回の患『車』はコチラ

ブランド:【KLEIN】(クライン)
車種:ATTITUDE(アティチュード)
年式:不明(2000年頃と思われる)

今となっては自転車店でも見かける機会が無くなってしまった【KLEIN】(クライン)。
それもそのはず、2002年にはクラインのシェヘイリス工場は閉鎖され、【TREK】(トレック)のウォータールー工場内に生産の拠点が移されました。
その頃には技術者・職人のほとんどは解雇され、設備は競売に掛けられてしまったという歴史があります。
ウォータールー工場に生産拠点を移してからは明らかに製造工程の簡易化が図られていて、クラインの独自性も失うことになった結果、ブランドは消滅してしまいました。

このアティチュードはクラインのスタンダードモデルとして長きに渡り多くのファンに愛されてきました。

お預かり時点での詳細を見ていきましょう。

現代では見慣れないブレーキレバーです。

実はコレ、油圧式リムブレーキなんですね。

ディスクブレーキではなくてリムブレーキにも油圧式というのは存在します。
ただし、現代ではすっかり廃れてしまった方式なので入手困難です。

リアには強力な制動力に負けないよう、ブレーキブースターを取り付けて剛性を上げてありました。

ちなみにリアのブレーキ台座現代のVブレーキと互換性があります。

ディスクブレーキ用台座はついていません。

フロントフォークにはディスクブレーキ用台座はありますね。
ただし、Vブレーキとの互換性はありません。

BB規格はJISなのでパーツ選びには困りにくいでしょう。
メリットは多いですね。

リアディレイラーは『ロー・ノーマル』タイプ。
ロードバイクでは採用されない方式です。

トレックに買収されたので所々に【BONTRAGER】(ボントレガー)のパーツが使われています。
ミドル・チェーンリング(フロント・ギヤ)は結構なサビ具合でした。

パッと見は大丈夫そうなタイヤですが、経年劣化は見受けられました。

シートクランプとシートポストはそのまま再利用できそうです。

ステムは割れてしまっているため、要交換です。

今となっては懐かしいパーツ類。

ハンドル周りもゴッソリ替えたいとのことです。

フロントフォークも街乗り仕様に替えます。

サドルは交換の必要性は無い状態ですが、すでに付けたいサドルがあるそうなので交換します。

■レストア兼カスタマイズ

ユーザーさんからのご要望は要約すると次の通りです。

①街乗りメインで使いつつ、多少の砂利道でも遊べるようにしたい。
②再利用できるものはできるだけそうして費用を抑えたい。
③とにかく派手で遊び心溢れるオンリーワンの仕様に仕上げたい。
④これからもずっと乗り続けたいので、できるだけ長持ちするようにしてほしい。

というわけでやっちゃいましょう!

まずは分解できるだけ分解して洗車!

完全には落とせませんが、それでもかなりキレイになりました。

BBシェルのネジ精度を高めるためにタッピングします。

削りカスがこんなに出てきました。

後々のカスタマイズも考慮してBBシェルのフェイシングもしてあります。

ボトルケージ台座もタッピングしてネジの精度を上げます。

これはVブレーキ台座です。
ピッチゲージでネジの規格を測定してから

ブレーキ台座受けもタッピングします。

ブレーキ台座自体もネジの再タッピングでも精度向上させました。

すごく地味で手間も大きいですが、長く乗り続けたいという想いにお応えしたいものです。

工具が届く部分は妥協しません。

こうしてフレームの下処理が済みました。

カセットスプロケット(リアギヤ)の汚れはなかなか頑固でした。

幸い、これほどまでに分解できる構造なので、洗浄作業は捗りました。

これだけキレイになれば気分もいいです。

フロントギヤセットは汚れ+サビ。

油汚れを落としたので、ここからできるだけ磨いていきます。

クランクとクランクを繋ぐBB(ボトムブラケット)も…

ここまでキレイになりました。

リアディレイラーとフレームを繋ぐディレイラーハンガー。

今となってはこの車種のディレイラーハンガーは入手困難です。

慎重に掃除して、ここまでキレイになりました。

シートポスト(特にヤグラ部分)も汚れが溜まりやすい部分です。

ここも分解して後々キレイにしましょう。

今回はチェーンも再利用します。

サビサビだったチェーンリング(フロントギヤ)は

しっかり磨いてこの通り。

さらに磨き続けてここまでの状態に戻せました。

ブレーキ台座は滅多に交換することはありません。

だからこそ丁寧な下処理は後々効いてきます。

ヘッドカップ圧入完了!

シートクランプも分解・洗浄、さらに防錆効果を狙って油分を含ませた上で組み付けました。

シートポストのヤグラもシートポスト同様です。

すでにカットされていたシートポストの処理が気になりました。

試しにヤスリで整えてみることにした結果…

まあまあ改善しました。
ここからさらにヤスリの当て方を変えて整えてあります。

サドルはクッション性の良いものを採用しています。

ディレイラーハンガーは組み付けた後に、実は芯出し作業もしています。
芯出し作業で深追いし過ぎるとハンガーが折れる可能性があるため、今回は最も神経を使った部分です。

チェーンリングを固定するボルト類も洗浄して、固着防止のためにグリスを塗布してあります。

クランクセットはこれで仕上がりました。

激しい雨でも耐えられるようなグリスを使ってBBを組み付けます。

フロントフォークは新しいものに交換するので、

クラウンを移植しました。

クランク固定用ボルトにもグリスを塗って、固着防止と長持ちさせることを狙います。

クランクセットも完了です。

さて、ここから車輪です。

年期を感じますね。

リムテープはボロボロでした。

前後で処理が違っていて、こちらのリムフラップもボロボロです。

いろいろなゴミが入り込んでいましたが、

けっこうキレイになりました。

回転のガタが気になったので、ハブもオーバーホールしちゃいます。

慎重に分解していきます。

ベアリングが大変なことになっていました。

試しに軽く洗浄してみると、意外と大丈夫っぽい!?

ベアリング受けも当然汚れていたので、

ついでにキレイに洗浄しておおきました。

ベアリングはどうやら無事っぽいです。

ハブシャフト類も分解して

しっかり洗浄。

そう簡単には雨でも水が浸入して錆びたりしないよう、

グリスはたっぷり使います。

ホイール全体の洗浄もしてあるので、結構キレイになりました。

カセットスプロケットもこの通り。

スポークホールの下処理を済ませてリムテープを貼っています。

センター出し作業や

振れ取り作業を繰り返し、精度の高いホイールに仕上げます。

前後ともやることは同じです。

中途半端に残っていた古いグリスも落とします。

これがなかなか頑固でした。

フロントのハブパーツも分解・洗浄。

さらにできる範囲でサビ落としもしました。

これでさらに洗浄して、それぞれに油分を含ませます。

頑固な古いグリスもしっかり除去できました。

近くで見てもこの通り!

ここで新しいグリスをたっぷり使います。

ちなみに油分を含ませるのはこうしています。

余分なグリスは最終的に拭き取るので問題ありません。

ハブのパーツを組み付けて玉当たり調整をします。

だんだん自転車らしいカタチになってきました。

ハンドルバーとペダルは全く同じ色ではありませんが、近い色で合わせています。

ブレーキレバーは左右であえて違う色をチョイス。
ユーザーさんのセンスが光ります。

レバーにも長持ち処理をしています。

ブレーキインナーワイヤーにも同じく長持ち処理を。

ブレーキアウターケーブルはド派手なレインボーカラーです。

これでほぼ完成ですが、ユーザーさんにとってベストなポジションを決めるため、まだ仮組みとします。

歩道を通行せざるを得ない事も考慮し、ハンドルバーを600mm以下に要カット。

ビシッと左右バランス良くカットが済みました。
グリップを付けていよいよ完成です。

■完成

ユーザーさんのこだわりが詰まったオンリーワンの1台が完成しました。

いつでも気軽に公道を走れるよう、リアリフレクターを追加しています。

フロントライトのボディーの色はサドルの色に合わせています。

ブレーキレバーに合わせてベルはゴールドで。

これだけ多くの色を取り入れたハンドル周りは他人とカブることがなかなか無いでしょう。

車輪を固定するクイックリリースレバーも

コラムスペーサーもアップルグリーンカラーでまとめています。

フォークコラムはあえてカット無しで、最大限ハンドルバー取り付け位置の高さを稼いでいます。

ヘッドパーツにも効果的にオレンジ色が入っています。

運転している時の視点はこうなります。

フロントギヤはトリプルのまま。

リアギヤ(カセットスプロケット)もそのまま。

しかし変速機は無く、シングル用のテンショナーを使っています。
色がちょうどいい感じです。

フロントもディレイラーを排除しています。

シートクランプもかなりキレイになりました。

この車体の今回のカスタマイズの全ての始まりはこのサドルです。
ユーザーさんのお気に入りポイントのひとつでもあります。

サイクルサービス・トグトの独自技術『MEF』(マーブル・エンド・フィニッシュ)でブレーキインナーケーブルの末端処理をしています。
ご要望があった場合のみ行う処理方法です。
キャップには無い感触を楽しめる上、フレームや他のパーツを傷付けにくくなります。

フロントフォークやタイヤも新しく交換していて、日常のアシ+ちょいダート遊びもこなせるマウンテンバイクに仕上がりました。
このフロントフォークがかなり優秀でした。
使ったのは【GRUNGE】(グランジ)のカーボンリジッドフォークです。
26インチでナット止めタイプかQRタイプのマウンテンバイクなら、このフォークに交換することで街乗りでの快適さがとてつもなく向上します。
車種によってはこのフォークが使えません。
ヘッド規格にはご注意下さい。

■セオリー通りが全てじゃない

今回ご依頼いただいたユーザーさんは度々
「邪道だとは思うんですけど…」
「こんな仕様は笑われるかもしれませんが…」
等とおっしゃっていました。
普通ならショップに断られるかもしれない。
でも自分としては面白い1台にしたい。
でも周りからはヘンに思われるかもしれない。
そんな葛藤もあったそうです。
たしかにセオリーとは異なるアプローチですが、安全性に悪影響が無いならユーザーさんの想いを汲み取るような仕上げをさせていただきます。

今回はシングル化している上、チェーンと前後ギヤはそのまま再利用しているため、リスクについてはご説明していますが、まだまだセッティングを煮詰めなければなりません。
ひとまずカタチになったら
「はい、終わり!」
ではなく、これからもユーザーさんと向き合い続けます。
これは大手チェーン店ではなく個人店だからこそのメリットとも言えるのではないでしょうか。

カタにはまらないカスタマイズで、世界に1台だけの愛車に仕上げるのも自転車の楽しみのひとつです。
ルールの範囲内であれば、自転車は乗り手に合わせて自由であるべきだと思っています。
レストアもオーバーホールもカスタマイズも、ぜひお気軽にご相談下さい。

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当店は出張修理等が多いため、決まった店休日や営業時間という概念がありません。
他店様が営業していない時間帯でも予約制にてご依頼等を承ります。
また、当店にて自転車の販売(防犯登録含む)も行っておりますが、他店様にてお買い上げの自転車の組立や点検及び調整、修理やカスタマイズ、オーバーホール等のアフターケアも大歓迎です。

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