受験から解き放たれ、その足でヒトカラに行った話

2月5日。
某大学の入学試験を無事に終え、私は私鉄に揺られながらこれからの予定について思いを馳せていた。

これからといっても、合格した後の入学手続きや、高校卒業後の過ごし方など、きわめて清楚なことを考えていた。

決して、予約しておいたジャンカラのことなど考えていない。

実は英語の試験が終わったあとの昼休み、私はジャンカラをWeb予約していた。
ちょっと前までなら電話でしか予約できなかったのに、便利な時代になったものだ。

隣の人は次の国語の試験に向けて古文単語帳を見つめていたが、私はジャンカラのサイトに個人情報を打ち込んでいる。最悪だ。ほかの受験生への冒涜といえる。
隣の人にスマホの中身を覗かれていないことを今でも祈っている。

ちなみに、この時期私は大風邪にかかっていた。この試験の前日にはなんと発熱しており、パブロンを乱れ打ってなんとか治して今ここ(私鉄の中)にいる。

激動のスケジュール

私は某駅で降車し、ジャンカラへと向かう前に晩飯を買うことにした。ダイソーへ赴き安売りしていたドーナツと、鼻をかむための箱ティッシュを買った。

それらをリュックに入れ、いよいよジャンカラへと向かう。だがその時私は気づいてしまった。予約していた17時を過ぎている。
私は走ることはせず、まずジャンカラのWebを見た。予約時間を15分過ぎた場合は自動的にキャンセルになることがあるという。

それを確認してから、私は走った。メロス並に走った。ジャンカラにセリヌンティウスを置いてきている。彼のために走るのだ。
時計も見ずに私は走った。ただただ走った。50メートル走の記録は10秒スレスレだが、それでも走った…

ついに息も絶え絶えでジャンカラに到着した。
時刻は17時12分間に合った(間に合ってはいない)
店内へと駆け込み、爆速で受付を終わらせ、なんとかキャンセルの憂き目に遭わずに済んだ。

ドリンクバーにてなっちゃんの白ぶどうをナミナミと注いでから、逃げるように個室へと入った。
わりと家から近いので知り合いに出くわす可能性があるからである。ヒトカラに行っているところを目撃されるのはかなり恥ずかしい。

個室に入って私は開口一番、

「ダーーーーーーッ」

と叫んだ。猪木ではない。
2月が始まってから気持ち的には5連チャンの入試を終えて、ついに私は受験生ではなくなった。
この叫びを以てして、私は受験という呪縛に別れを告げたのである。決して元気があったわけではない。

実はこれが人生初のヒトカラなのだが、ヒトカラというのはなんと素晴らしいものであろう。

察しはつくだろうが私は結構独り言が多いタイプで、公衆の面前で1人でブツブツ喋っている。だがカラオケではいくらでも独り言を叫べるのだ。快適なことだ。もはやずっとカラオケでいい

ジュースを1口飲んで、私はウッキウキで曲を予約し始めた。
最初に入れたのが森山直太朗の「夏の終わり」
受験前によく聞いていたため、印税をもって彼らに恩返しがしたかった。

どうやら本人映像を流してくれるらしい。この曲の本人映像は見たことがなかったが、まあさぞ素敵な映像なのだろう。
神曲の映像は神と決まっている。

しばらく待っていると、真っ黒なモニターから切り替わり、映像が流れ出した…

♪《本人映像》夏の終わり 森山直太朗



え?


あれ?


待って?


歌い出した。

あ、もしかしてずっとこの感じ…?

この時私はモニターに向かって正面に座っていたので、奇しくも森山直太朗と向かい合って歌っているみたいになってしまっている。

当時の雰囲気を絵で表すとマジでこんな感じ。

大師匠森山直太朗の面前で己の下手な歌を披露するわけにはいかないので、即座に演奏を中止した。そしてオリジナル映像で歌い直した

最初に歌ってしまったこともあって、それ以降はずっと森山直太朗の雰囲気を引きずったまま、2時間のカラオケは終了した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?