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弾道ミサイル破壊措置命令とは

北朝鮮が弾道ミサイルによる軍事偵察衛星の打ち上げ準備を進める中、浜田防衛大臣は、ミサイルが日本国内に落下する事態に備え、令和5年4月22日に「破壊措置準備命令」を出しました。正式には「弾道ミサイル等に対する破壊措置の準備に関する自衛隊一般命令」というものですが、これはどのようなものでしょうか。

自衛隊法82条の3では、「弾道ミサイル等が我が国に飛来するおそれがあり、その被害を防止する必要があるときは、弾道ミサイル等を破壊する措置を命ずることができる」とされています。この「破壊措置命令」は、内閣総理大臣の承認を得て出すことになっていますが、いちいち承認を得ていては事態が急変した場合などに対処できません。そのため、あらかじめ期間を定めて出すこともできます。
実際に、2016年8月に北朝鮮がノドンを発射して以降は、「破壊措置命令」を常時発令して3カ月ごとに更新することになっているようです。「ようです」と言うのは、「破壊措置命令」の発令を公表すると敵に手の内をさらすことになるため、出しているかどうか政府が明らかにしないからです。国会の委員会質疑で聞かれても、政府は答えてはいません。

今回の「破壊措置準備命令」は「破壊措置命令」を出す準備のためのもので、実際の文面は「破壊措置を命じる可能性があることから、所要の準備を行う」としています。「破壊措置命令」を常時出してはいないような書きぶりですが、すべて非公表にしているためこのように書いているのかも知れず、真相は防衛省が明かさない限り分かりません。
今回の北朝鮮の弾道ミサイルに対する迎撃は、ペトリオット・ミサイルPAC-3部隊を沖縄に移動させる必要があるので、おそらく準備の段階をも公にせざるを得なかったのでしょう。

「破壊措置命令」は、弾道ミサイルは撃ち落とせますが、巡航ミサイルは航空機扱いなので対象外になるという問題もあります。「破壊措置命令」の場合は公海上でも迎撃できますが、航空機扱いだと、日本の領空に入ってから領空侵犯措置で迎撃することになります。
ロシアや中国は、極超音速巡航ミサイルを開発済みです。マッハ9で飛んで来ると言われるこの巡航ミサイルは、我が国の領空に入って7秒で領土に到達します。領空に入らなければ迎撃できないようでは、とても国民の安全を守ることはできません。防衛当局には、兵器の進化に合わせて法律を見直していく不断の努力をしてもらいものです。

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