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病院後に食べるプリンが沁みないわけない

ここ数年医療費が年間10万超えしていたこと、そしてことごとく異常なしであることから、定期通院以外で病院に行くことを禁じていた。
しかし、今年に入り体調悪すぎている。募る心配が更なる体調の悪化に繋がっていたので、安易に薬をもらわないという強い意志の下、久しぶりに病院に行った。

待ちは0人、保険証を出して2分で呼ばれて診察室へ向かう。
穏やかで賢そうな笑みを浮かべ「お久しぶりですね」と声をかけられる。
違和感なしに懐に入ってくる医師に、つい、覚えていてくれたのか‥などと勘違いしてしまう。
大量の患者をかかえる彼が、1年ぶりの来院者である私を覚えているはずなどない。

1年前にMRIや胃カメラ、超音波など諸々検査済みのため、血液検査だけしてもらった。そして昨日、その結果を聞きに再来院。

医師はまたしても、勘違いを誘う妙な信憑性を帯びた微笑で、「調子、どうですか?」などと聞いてくる。
ええ、変わりはないです、などと答えつつ、バリエーションに乏しい我が引き出しから、他者へ向ける用に身につけた庶民的な笑顔を引っ張り出し、急ぎ顔に貼り付ける。

医師は、私の顔を見たか見てないかの紙一重な加減で
「完璧な血でした。パーフェクトです。」
と言い、腎臓肝臓膵臓糖尿すべての値において完璧であったことを知らせてくれた。

やっぱり異常は見つからなかった。何も無いと分かっていながらも、もしかして今回こそは見つかるかもという思いで、毎度病院に行く。もう10年もこんな調子だ。

しかし結局のところ「異常なし」という結果はどんな薬も叶わない、最も即効性のある特効薬であるのだ。
そして今回もご多分に漏れず、しばらく病院にはいかないと心に誓った。

心に誓ったその足でスーパーに向かい、PayPayで買って食べた焼きプリンが、これでもかと染みて沁みて滲みた。

次の日も調子に乗ってプリンを食べるところが、私の人間的に堕落した部分であり、チャームポイントでもある。
最高のプリンは2日連続味わえない。そんなことは分かっていながら、我慢できず食べてしまうのである。

まあ、変に我慢せず欲に忠実であることで、人生がいい方向に向くこともある。この選択も強ち大間違いという訳ではないかもしれない。
私の正当化傾向は年々加速している。

久々のプッチンプリンは、プッチンせずとも勝手に重力で皿に降りてきてくれ、なんだか嬉しかった。
プッチン部分が壊れてただけだとしても、なんでもいい。検査結果にまだホッとしている自分がいる。自分の身体を巡る完璧な血液に思いを馳せてプリンを平らげた。


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