ハイステ東京の陣 2019.4.28.SUN




──演劇で疲れたこの3ヶ月のご褒美に。


烏野が白鳥沢を倒したその後に、彼等が浴びていたスポットライトの光が、東京の彼等を照らしていた。

日向から送られたメールを研磨が受け取る。そのシーンは、烏野卒業となった先の公演との繋がりを強く想起させる。

確かにあの瞬間、日向たちが熱く燃やした炎を、研磨が静かに受け取り、内に秘めたのだ。  


断絶ではなく、繋がりを静かに感じさせ、ここにはいない烏野という存在を観客に思い出させる。3年間劇団を旗揚げから支えた烏野への敬意すら滲ませる、このバランスが絶妙だった。


この作品はスピンオフではない。

音駒が烏野からバトンを受け継ぎ、劇団ハイキューのひとつの作品として、次の烏野へと繋ぐ物語である。

いつか劇団ハイキューの歴史を振り返った時、なくてはならないひとつのピースになる、そんな作品であるに違いない。


繋ぐ、ということに関して音駒メンバーが背負ったプレッシャーは相当なものだったことは想像に難くない。

主役校が変わる初めての作品であり、須賀健太以外にこのカンパニーの座長を経験した者はいな

い。


しかしここでもカンパニーの揺るがない強さを見せつけるのが凄いところ。

彼らにとっての守りは『挑戦』そのものであるかのような進化を見せ付けた。


比較的前作までよりシンプルな照明のように感じたがダンスの難易度、運動量は上がっているのではないだろうか。


そして何より、東京の陣は音楽がHIPHOPだったことが衝撃だった。伊達工戦はたしかにラップのシーンがあったが、ゲームの重要なシーンにこれでもかとラップを織り交ぜる。

宮城の戦いが白鳥沢一強への下克上ならば、東京はまさに群雄割拠。強豪ひしめく東京で、縄張りを争う猫、梟、蛇。

力の差をひっくり返す爽快感も心地よいが、シーソーゲームの張り詰めた緊張感もたまらない。


11月の烏野の試合は、白鳥沢と青城という格上を相手にする高揚感。そして少しでも気を緩めたら押しつぶされそうな、強者たちのプレッシャーがひしひしと伝わってきた。深く息を吸うのを躊躇わせる、そんな空気が会場を支配していた。


梟谷と音駒のゲームはまさにライバル校同士の戦い。手の内をさらけ出して、なお競り合う心地よさ。打てば響く関係、そんな所だろうか。

音駒、梟谷が本気の公式戦を見れる機会はなかなかない。やはり彼らはどこまでもバレー馬鹿で、バレーに本気で、なにより楽しそうだ。


戸美は、ハイキューでは初登場の「ヒール校」だ。だけど彼らの美学は『悪』とは思えない。彼らも自分たちのスタイルを疑わない、高校生らしい眩しいほどの真っ直ぐさを持っているからだ。それを判るのは同じように本気で戦った音駒、というのも熱い交流に思える。


研磨とクロの約束が今回の裏テーマ。初代烏野とのゴミ捨て場の決戦は実現しない。けれど、彼らはしっかりとトスを繋いだ。「約束」は、次世代烏野が果たしてくれる。烏野次は君たちの番だ。きっと彼らは今、羽ばたくその日を待ち望んでいるだろう。