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健康な口腔のメインテナンスのために~プラーク・フリーの口腔環境の構築~

 最近、雑誌やテレビなどで歯周疾患の特殊内容が報道されるようになり、歯垢(デンタルプラーク)や菌膜(バイオフィルム)という言葉も一般用語化され、歯科医師及びパラデンタル(コ・デンタル)に対する患者の要望も質の高い治療内容になって来た。日本においては、昭和30年代までは歯周疾患の原因は全身的因子論が支持されていたが、近年は細菌感染による歯周組織の慢性疾患である事が基礎学的な研究で解明されるにつれ、治療法も大系づけられ、局所的病因因子が主流をなしてきた。

 歯周疾患に対する最も重要な処置はプラークコントロールによる口腔内をプラークフリーの状態にすることであるが、ブラッシング、歯間ブラシ、フロッシングなどをより効率よくさせるには清掃しやすい口腔内の環境づくりが前提で、歯垢が付着しにくい歯列や歯冠形態を与えることが必要である。つまり、プラークコントロール効果の立場からも歯列不正を放置したまま、あるいは歯垢(プラーク)の除去に困難な歯冠修復物を装着しながら患者にのみ口腔清掃の不備を一方的に責め、困難な清掃法を強要することは、逆に患者のモチベーションを下げる結果になる。

 歯周治療の基礎治療(イニシャル・プレパレーション)の処置を抜きにしたプラークコントロール・プログラムはありえないし、歯周疾患の治療を成功させるには、歯周組織に関する新しい知見に基盤をおいて歯周処置、歯内療法、咬合、歯の移動処置ならび補綴処置などに対する総合的な知識と経験が要求される。

 故に、歯周疾患に関する新しい知見が歯科医師のみならずパラデンタルの歯科衛生士、歯科技工士、歯科アシスタントにも浸透し、患者に対する生活指導やプラークフリーの補綴物として具現化することで、はじめて、健康な口腔を実現することが可能である。

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