東邦歯科診療所

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最近の記事

生物学的な咬合論 その2       医科・歯科での診断について

A.医療で病態検査のための検査項目について  病態審査のための検査項目は、症状や疾患の特性によって異なるため、患者の状態や臨床的な問題に合わせて適切な検査を選択することが重要です。また.検査結果を総合的に評価し病態を包括的に理解することで、適切な診断と治療が提供されます。病態審査のための検査項目は、医学の進歩や技術の発展に伴い常に変化しています。新たな検査法や技術が導入されることで、より効率的で正確な診断が可能となります。そのため医療従事者は常に最新の情報を取得し、適切な検

    • 歯周病が人体に及ぼす影響について その7  過度の消毒剤の使用はスーパーバグの発生原因にも

      A.歯周病菌に対する消毒剤の種類と薬効歯周病菌に対する消毒剤は、口腔内のバイオフィルムを制御し、歯周病の進行を防ぐのに役立ちます。しかし歯周病の管理において役立つものの、歯科医の指導に従い正しく使用することが重要です。また歯周病の進行具合や個人の健康状態に合わせて適切な消毒剤を選択することが必要です。 ●クロルヘキシジン(Chlorhexidine) クロルヘキシジンは広く使用されている口腔消毒剤で歯周病の管理に効果があります。クロルヘキシジンはバイオフィルム内の細菌の

      • 歯周病が人体に及ぼす影響について その6 Dysbiosisの原因は抗生剤と過度の消毒

        Ⅰ. DysbiosisとはDysbiosisは、通常の微生物叢と比較して異常な微生物の存在や分布が生じる状態を指します。この用語は微生物叢のバランスが崩れ健康を損なう可能性がある疾患や状態を記述するのに使用されます。微生物叢は、体内の様々な場所で発生し、それぞれが特定の役割を果たします。通常、これらの微生物は共生関係にあり互いに影響を与えバランスを維持します。しかし、外部要因や内部要因によって微生物叢が変化するとバランスが崩れ、Dysbiosisが発生します。Dysbios

        • 歯周病が人体に及ぼす影響について その5 過ぎたるは及ばざるサイトカイン

           1957年にウイルスに感染した細胞が特定の物質を放出し、周囲の細胞をウイルス感染から守るインターフェロンをアリザ・アイザックとジャン・リンデマンによって発見されました。1970年には免疫細胞の放出する他のシグナル分子であるインターロイキンが発見され1979年にユダ・ガリンによって初めて特定されたサイトカインがインターロイキン‐1(1L-1)です。1980年代に入るとインターロイキン2(1L-2)やトゥモア・ネクロシス・ファクター(TNF)などのサイトカインが続々と発見されサ

        生物学的な咬合論 その2       医科・歯科での診断について

          歯周病が人体の及ぼす影響について その4 キーストーン病原体とPg菌& Red complex

          Ⅰ.キーストーン(keystone)とは A.概要  キーストーン(keystone)は、建築学や比喩的な文脈で使用される用語で、構造物やシステムの中で中心的で重要な要素を指します。キーストーンは、その存在や機能によって全体の安定性や機能性が支えられる要素として位置づけられます。歯周病の文脈で「キーストーン病原体」という用語が使われています。これは、歯周病の進行において中心的な役割を果たし、他の病原体との相互作用によって病態の進行を促進する微生物を指す言葉です。具体的には、

          歯周病が人体の及ぼす影響について その4 キーストーン病原体とPg菌& Red complex

          歯周病が人体に及ぼす影響について その3 慢性歯周炎による全身への影響

          Ⅰ.歯周病の慢性炎症が全身への影響を生じるプロセス  歯周病の初期段階から慢性炎症が全身に影響を及ぼし、炎症性サイトカインの産生と循環が他の臓器や組織に影響を及ぼす可能性があります。これにより、心血管系の疾患、糖尿病、リウマチ、呼吸器疾患などの全身的な疾患のリスクが増加し、これらの疾患の発症や進行が促進される可能性があるとされています。  このように、歯周病の慢性炎症は全身への影響を持つ重要な要因となり得ます。したがって、歯周病の早期診断と適切な治療、口腔ケアの重要性が強調

          歯周病が人体に及ぼす影響について その3 慢性歯周炎による全身への影響

          歯周病が人体に及ぼす影響について その2 歯周ポケット内の微生物達

          Ⅰ.歯周ポケット内の微生物の種類と役割  歯周ポケット内の微生物叢は多様で、さまざまな種類のバクテリア・ウイルス・真菌などが存在します。これらの微生物はバイオフィルムを形成し、相互作用しながらポケット内で共存しています。これらの微生物の相互作用やポケット内での生態系は非常に複雑で、歯周病の進行に影響を与える要因として研究されています。さらに、バクテリアがバイオフィルムを形成し歯周ポケット内の環境を変化させ炎症を刺激する一方で、免疫応答や他の微生物との相互作用にも影響を及ぼし

          歯周病が人体に及ぼす影響について その2 歯周ポケット内の微生物達

          歯周病が人体に及ぼす影響について  その1 歯周病発生の原因と部位特異性

          Ⅰ.歯周炎の初期段階では、歯周組織にいくつかの変化が見られます。  これらの変化に気付くことが重要です。早期に歯科医師の診察を受け、適切なケアを行うことで進行を防ぎ、歯周炎の進行を遅らせることができます。また、適切な口腔衛生習慣の実施も重要です。炎症は1~7の順で進行します。 歯垢の蓄積と細菌の付着  歯垢は口腔内に細菌や食物の残渣から形成され、歯面に付着します。初期の歯周炎では、歯垢が歯と歯肉の境界に蓄積し、細菌の増殖が促進されます。それに伴って、口腔内には細菌が数多く

          歯周病が人体に及ぼす影響について  その1 歯周病発生の原因と部位特異性

          歯肉マッサージ効果について *************** 歯周病の方に必見‼

          歯科医師や歯科衛生士による歯ブラシの歯肉マッサージの指導を受ける場合があると思いますが、その効果を専門家の立場から考察します。 Ⅰ.はじめに全身のマッサージ効果について  マッサージは血行促進をサポートし、組織や臓器に必要な酸素や栄養素の供給を向上させ、同時に老廃物の排除を助けます。この効果は、多くの健康上の利点をもたらすことから、さまざまな状況で広く利用されています。 (1)筋肉の緊張緩和:筋肉の緊張を緩和し、筋肉をリラックスさせる助けになります。 特に頭や首、肩

          歯肉マッサージ効果について *************** 歯周病の方に必見‼

          AAE Discussion Open Forum

          Dear AAE, I am Naoto Yoshida, an Active Member certified by the Association of Active Experts (AAE) since 1983. I have previously made a post titled "Memory with the great professor Grossman" on AAE's official website. Currently, I am acti

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          バイオフィルムの不思議な世界・その6/バイオフィルムの制御は森林保護と同じ

          Ⅰ.バイオフィルムの制御を森林保護の木の間引きに例えることは、バイオフィルム制御の理解を助けるために有用なアナロジーになります。  バイオフィルムの制御において「木の間引き」に相当する概念は、微生物のバイオフィルム内での微生物の種の密度や量を調整し、宿主の健康を維持するための方法を指すことができます。また、バイオフィルム制御は微生物のバランスを調整し、宿主の健康をサポートするための戦略の一部として考えることもできます。微生物叢の密度や組成を適切に管理することは、生体内の生態

          バイオフィルムの不思議な世界・その6/バイオフィルムの制御は森林保護と同じ

          バイオフィルムの不思議な世界・その5/常在菌叢とバイオフィルムは運命共同体⁉

          A-Ⅰ.常在菌叢とバイオフィルムの構造と機能  常在菌叢(microbiota)とバイオフィルム(biofilm)は、微生物に関連する用語ではありますが、異なる概念です。常在菌叢は微生物の生息する広い範囲を指し、特定の微生物コミュニティを指す一般的な用語です。一方、バイオフィルムは、微生物が特定の表面に形成する特殊な構造を指し、微生物の生存環境に関連しています。 1. 常在菌叢 (Microbiota)  常在菌叢は、生物体のある部位に常に存在する微生物のコミュニティ全体

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          バイオフィルムの不思議な世界・その4

          A.バイオフィルムの形成時間と寿命について バイオフィルムの形成時間と寿命は多くの要因に影響され、微生物の種類や環境条件、外部のストレス要因・再編プロセスなどが関与します。バイオフィルムの寿命を理解し、管理することは、医療・環境・産業などのさまざまな分野で重要です。これらは微生物・環境・物理的要因の組み合わせに依存しています。これらの要因を理解することは、医療から産業プロセスや環境管理に至るさまざまなアプリケーションでバイオフィルムを効果的に制御または活用するために重要で

          バイオフィルムの不思議な世界・その4

          バイオフィルムの不思議な世界・その3

          Ⅰ.バイオフィルムは人間の食生活を豊かにしている。  バイオフィルムは食品の生産や発酵プロセスにおいて微生物の活動を制御し、食品の風味や品質を向上させる役割を果たしています。バイオフィルムの形成と制御は、食品業界において古くからの伝統的な製法として利用されており、食品の多様な風味と特性を生み出す重要な要素です。具体的な事例を考えました。 チーズ生産  チーズは、バイオフィルム形成に関与する細菌が重要な役割を果たします。バクテリアがチーズの外皮にバイオフィルムを形成すること

          バイオフィルムの不思議な世界・その3

          バイオフィルムの不思議な世界・その2

          Ⅰ.バイオフィルムは微生物が形成する多細胞の構造  バイオフィルムのコンセプトは、微生物の集団の振る舞いや相互作用を理解する際の非常に興味深い視点を提供します。多細胞の生物が個々の細胞間のコミュニケーションや特化した役割を持っているのと同様に、バイオフィルム内の微生物も似たような構造的・機能的な相互作用を示すことがわかってきました。  バイオフィルム内の微生物は、特定のシグナル伝達分子を介して相互にコミュニケーションをとることが示されており、これは「クオラムセンシング(Qu

          バイオフィルムの不思議な世界・その2

          バイオフィルムの不思議な世界・その1/正しく理解するために

           口腔内の細菌は、単一の細菌ではなく、多くの種類の微生物が協力して形成するバイオフィルムの集合体として存在します。口腔内のバイオフィルムは、さまざまな種類の細菌が歯の表面や口腔の他の場所に付着し、共生的な生態系を形成しています。  これらの微生物は相互作用し、エクストラセルラーマトリックス(EPS)と呼ばれる多糖類やタンパク質などの分泌物によって結びつき、バイオフィルムを形成し、細菌が外部の環境から守られ、生存と増殖に適した条件を提供します。  このようなバイオフィルムの存

          バイオフィルムの不思議な世界・その1/正しく理解するために