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今は昔・・・と言えるのか~医療機関への厚労省指導~

 今から37年前に私が歯科関連雑誌に掲載した記事ですが、今読まれて、どの様な感想を抱かれるか興味があります。医科・歯科を問わず開業医の皆様には古い話だなと感じて頂ければ幸いです。

 窮鼠かえって猫を咬むという諺が示すように、死地に陥りそうになったものの生きる力は途方もなく強いものである。相手を死地に陥れることは、賢者は決してやらない。全滅させようとすると、それこそ死物狂いの反撃をうけることを充分に承知しているからである。

 にもかかわらず、昨今の医療行政当局による保健医療機関に対する不当な弾圧は目に余るものであり、保健医療養担当規則違反という名目で容赦なく死地に陥らせているのである。特に立場の弱い個人開業医は狙い打ちされやすい。しかし、先般、外視鏡でご紹介した静岡県民生部と厚生省による歯科シズオカクリニック(上杉秀之院長)に対する保健医療機関の指定取り消し処分に、静岡地方裁判所から執行停止の判決を受けた事件は、弱者である個人開業医であっても問題意識を持って確固たる信念で行政当局に向かえば犬死にしないことを教示してくれた。この事件の経過内容については「医療保険行政を告発する」飯塚哲夫著(医療法人相生会渋谷病院院長)日本歯科新聞社出版の中で詳しく述べられているので是非購読していただきたい。厚生省の抗告によって東京高等裁判所に舞台は移ったが、その判決如何によっては歯科医療の存亡にかかわる重大な問題である。

 それにもかかわらず、日本歯科医師会が今回の事件を無視し続けることにははなはだ理解に苦しむ。厚労省は保健財源のあなうめのために昭和30年に歯科の一部差額徴収を許可し、以後不足分は患者に負担させ、その方向を拡大してきた。ところが「歯の110番」騒ぎによって差額徴収を撤廃させ、財源的に一部給付にならざるを得ないのに、診療項目は見かけ上よくならべ、非現実的低点数を設定、たてまえだけを全額給付にしたところに問題がある。

 歴史的な観点からみても、歯科医が口中医から独立した時点から国(厚生省)は歯科に対し、無視あるいは放置したままで全てを私学に委ねて来たのである。昭和30年代ごろから国民の歯科に対する要望が高まるにつれ、その対策として急遽、私学をはじめ国立大学を中心に歯学部を無造作に増設し、歯科医師過剰時代を迎える結果になった。

 現在歯科が抱えている多くの矛盾は、その状況を作った国(厚生省)の責任であり、その担い手であった日本歯科医師会とそれを構成している我々一般会員の責任であることを自覚すべきである。このような観点から、自分自身が今なにが出来るかを考え直そう。

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