リエカ

ライター

リエカ

ライター

マガジン

  • 文系大学院地獄絵図

最近の記事

できない文系院生の悲惨な末路(93)

結局,学会の事務局として受付にいたため報告やシンポジウムには参加できずに初日が終わってしまったMくん.受付の片づけをして,事務局の荷物をまとめて車に掘り込み,遅れて懇親会場に向かった.懇親会は既に始まって30分が立っていたので会長や大会実行委員長の挨拶も終わり,それぞれが歓談していた.Mくんも近くのテーブルにあったビールの残りをグラスについでキョロキョロ.奥の方で同期のKくんや後輩のHくんの姿を見たので寄ってみた. Mくん:「いや,Kくん,Hくん,久しぶりやね」 と友達の

    • できない文系院生の悲惨な末路(92)

      端から見れば,教員になったにもかかわらず院生のような仕事をさせられているなんて,とても情けないことではあるのだが,同期や後輩たちとの比較を除けば必ずしもMくんにとって悪いことばかりではない.  それはお手伝いの学生に対してはよりパワーアップして上から目線で話せることである.既に書いたことであるが,Mくんがこの学会の雑用をこなしているのは,普段大学院で最下層にいるため,周りからバカにされているため,自分より下がいないのだが院生ということで学部生に偉そうに指示することで快感を得ら

      • できない文系院生の悲惨な末路(91)

        さてFランク大学とは言え,夢の大学教員になったMくんであったが,既述のとおり,Mくんが思っていたような大学教員生活ではなかった.普通は,講義・研究が中心で,その合間に大学の業務をするのであるが,Z大学でのMくんの生活は,高校訪問の間に講義をするという感じであった.そんな中,初めて大学教員として学会に参加することになった.  Mくんが自分よりも立場の下の者に指示ができるということで事務局の仕事をしていたことは既にお話した.通常は,大学院を出て教員になると学会の事務など手伝わなく

        • できない文系院生の悲惨な末路(90)

          Mくんの高校訪問は熾烈を極めた.受講者数は少ないとは言え,基礎ゼミを含めたMくんの持ち込まは週に6コマ(年間12コマ),まぁ,昨今の私立大学でこのコマ数で文句を言ってはバチがあたるので,コマ数についてはMくんの負担はそうでもない.しかし,割り当てられた高校訪問の数が尋常ではなかった.同一県内であるとはいえ,入試からMくんに割り当てられた訪問校数は何と1ヶ月60校にも上った.Mくんは1週間に3日,講義やゼミが入っており,また水曜日は教授会で会った.幸い,教授会と基礎ゼミの曜日が

        できない文系院生の悲惨な末路(93)

        マガジン

        • 文系大学院地獄絵図
          21本

        記事

          できない文系院生の悲惨な末路(89)

          この記事を読んでくれている方は大学の教員の仕事はと言えば,おそらく研究とか講義,あるいは少し大学のことをご存じの方であれば会議・教授会といったものを思い浮かべるとと思う.しかし,Mくんの所属するZ大学でのもっとも重要な仕事は学生募集である.  すでに述べたようにZ大学は,開学バブルもなく,新入生が25人であった.仮に単純計算で学生一人の学納金を100万円とすると2500万円ということになる.これに教員が20名以上いる訳だから,要なので完全に赤字である.通常,私立大学は私学助成

          できない文系院生の悲惨な末路(89)

          できない文系院生の悲惨な末路(88)

          受講者数があまりにも少なく,各講義10人を超える講義が珍しいとなった状況,600人を超える講義を持つものとしては何ともうらやましい限りであるが,それはMくんのような当事者にならないからこそ言えることで当事者になったら筆者も真っ青である.  さてZ大学が開学するにあたり,それにともなってひと稼ぎしようと考えていた輩も思惑の違いに戸惑っていた.まずは,学食.入札までして入ってもらった学食の業者はいきなり苦境に立たされてしまった.そもそも大学の学食などは半年がほぼ休みであるのでなか

          できない文系院生の悲惨な末路(88)

          できない文系院生の悲惨な末路(87)

          新入生25人の何ともお先真っ暗な船出となったZ大学.しかし,この大学の前途が怪しいのはMくんですぐに分かった.  入学式が終わった翌日,新入生に対するオリエンテーションが始まった.大学に奉職している方ならお分かりであろうが,卒業までに何単位取得し,どれが必修科目でなど授業に関する説明会をしなければならない.高校までは学校が決めた時間割に沿って生徒は受講するが,大学は学生が自分で科目を選択し,受ける講義を決定するからである.さて,そのような重要なオリエンテーションなのに早速新入

          できない文系院生の悲惨な末路(87)

          できない文系院生の悲惨な末路(86)

          さて,開学バブルも来ず,定員150人で25人の入学者に留まったZ大学の入学式が始まった.教員は全員で20名なのでほぼ,マンツーマンのような状態である.Z大学は資金の関係から本来大学基準設置審で設置しなければならない体育館が設置できておらず(この点はのちに文部科学省から強く改善を要求され続けた),Z大学でもっとも大きい大講義室で執り行われることになった.Z大学に入学してきた新入生も同級生が25人しかいないことに多少驚いていたようだ.  小学校の入学式の1年生の教室のように,大講

          できない文系院生の悲惨な末路(86)

          できない文系院生の悲惨な末路(85)

          寂しい歓送会と結婚式も終わり,いよいよ4月になった.あのあこがれた大学教員としての道を今日から歩むMくん.その新鮮さに高揚した.今日はZ大学での辞令交付式である.辞令交付式の前から入試業務をさせるというZ大学も非常識極まりないのであるが,名実ともにMくんはこの日から大学教員になった.辞令には「講師」としての職位が記載されており,同封の条件書には本給26万円,研究費50万円と書かれてあった,これまで非常勤を何校も兼任して糊口をしのいでいたMくんにとっては満足できるお金で会った.

          できない文系院生の悲惨な末路(85)

          できない文系院生の悲惨な末路(84)

          さて,何とか結婚式も終わった.新婚旅行は新婦が外国に行きたいというので,夏のボーナスで行くことにした.(Mくんは,初年度の夏のボーナスは大した額ではないことをしらなかった.) 3月は8年間在籍した大学院の研究室を引き払った.結局,博士号にも助教にも手が届かなかった.現在の大学は修士号だけでよいが,この大学を異動するためには博士号はどうしても必要なのだが,少なくとも今回は取得することは叶わなかった. Mくんの親は既に年金生活に入っているが,息子のためと思い,Mくんにスーツを

          できない文系院生の悲惨な末路(84)

          できない文系院生の悲惨な末路(83)

          披露宴が終わり,2次会に移ったMくん.師匠があいさつでとんでもないことを言い出し,少々焦った.大学院関係者あるいはこのnoteを読んで頂いている読者は,Mくんの師匠が何ら誤ったことを言っていない.  師匠は2次会には来ないので安心だ.先ほどの披露宴に出ていた学部や高校の友達が,師匠の発言を聞いて「大丈夫?」的なことを聞いてきた.Mくんはとっさに, Mくん「ほんと,参っちゃうよね.シャレを言っているつもりなんだよね.先生は.」 とあたかも師匠がウケを狙うためにそのような発言

          できない文系院生の悲惨な末路(83)

          できない文系院生の悲惨な末路(82)

          散々な歓送会が終わった.しかし,その前にひっそりと終わっていたので,Mくんの結婚式である.Mくんの結婚式に仲人である師匠以外,誰も参加しなかったことは既に述べた.披露宴会場のでの受付は,妻の友人たちがしてくれている.午前中にホテル設置の教会でクリスチャンでもないのに愛の誓いをするMくん.  披露宴が始まった.当初,後輩の院生たちのために用意していた席は,だれも参加しないため,妻の友人たちが座っていた.学部,そして高校の友人だけが披露宴に参加することになった.持ち前の根拠のな

          できない文系院生の悲惨な末路(82)

          できない文系院生の悲惨な末路(81)

          案内のあった時刻の5分前にようやく今回の歓送会の幹事をしている(師匠から押し付けられた?)後輩のBくんが店に入ってきた.店に入るとMくんが座っているのをみて,コートを脱ぎながら, Bくん:「師匠と〇〇先生は少し遅れるみたいっすよ」 とMくんに話す.MくんはBくんに Mくん:「参加者は4人だけ?」 と聞くと,Bくんはそうだという.一応,院生全員にメールを送ったが,みんな不参加の返信であったとのこと.Mくんは「俺って,ここまでまわりに嫌われていたんだ」と昨年の後輩の歓送会

          できない文系院生の悲惨な末路(81)

          できない文系院生の悲惨な末路(80)

          歓送会まであと1週間を切ったが,出席者がどうなっているかMくんにはとんと予想がつかない.就職マウント事件と非常勤譲ってやろうか事件でもはやMくんは大学院の後輩たちに無視され続けているのである.もはやゼミが終了した今においては,大学院の研究室に来る意味もないのである.歓送会のようなものは送られる側は出席が前提なので全体メールの案内しか来ておらず,後輩たちが参加してくれるか分からない.そしてついに,Mくんが研究室を離れる歓送会の日がやってきた.  かつて,同期のKくんや後輩のSく

          できない文系院生の悲惨な末路(80)

          できない文系院生の悲惨な末路(79)

          完全に研究室の後輩に嫌われたMくん.このままでは自分の歓送会を後輩たちが開いてくれない可能性が出てきた.そこで起死回生の「非常勤をゆずってやるよ」発言なのである.まぁ,それでも非常勤ができれば後輩たちも少しは生計の足しになるであろう.しかし,ここでまだMくんの狡さがでてしまう.というのは,いままで独り占めしてきた非常勤講師のうち,後輩に譲ってやるよと言ったのは,最寄りの駅からJRで1時間半,スクールバスの乗り継ぎを含めると2時間かかるような山の上にある大学や,Fラン大学ばかり

          できない文系院生の悲惨な末路(79)

          できない文系院生の悲惨な末路(78)

          さて,門下生である後輩から徹底的に嫌われたMくん,彼が心配していることが1つある.それは自分の歓送会が開かれるかということである.これまでMくんは,同期のKくんやはたまた後輩のSくんの歓送会の幹事を師匠からやらされてきた.同期のKくんはともかく後輩が旅立つ祝いの席を就職できない自分がセッティングするというのは中途半端にプライドが高いMくんにとっては許しがたいことであった.(もちろん,それを表に出す勇気は彼にはない)Mくんは,先日の後輩の激怒,さらにその後輩をかばう他の後輩をみ

          できない文系院生の悲惨な末路(78)