見出し画像

【特許法】69条と先使用権の違い

69条(及ばない範囲)2項2号には、先使用権(79条)と似たようなことが書いてあります。どう違うのでしょうか。

違い:
先使用権は、更に作っても良い。69条は今ある分しか売ってはだめ。事業の準備をしているわけでもないから。

青本特69条には、本号の適用は極めて希で、「秘密に所持、かつ事業の実施または準備に該当しないときくらい」と書いてあります。

■考察
秘密に所持してるのなら権利行使されようもないので、69条の意義がわからないと思ってました。

場面想定としてあるとしたら、物を仕込んでおいたものの、売れないと思って事業準備せずに放置していた場合があると思います。他社が、特許を取って販売。それを見て売りたくなった。

この場合、既に作っていた分は売れる。後付けで事業化するのはダメ。

先使用権の場合は、事業実施または準備をしているので、産業の進歩発展に一定の寄与があると読める。生産設備の除却を求めると経済的にも損失になるので、認める意義はある。

69条の場合、そこの寄与がないし、そのつもりもなかったと言える。なので、追加で作ることは認めない。

とはいえ、特許出願の時に存在する物にまで特許権の効力を及ぼすのは苛酷なので(青本特69条)、バランスを取って、まあそれは良しとしましょうという理解。

第六十九条 特許権の効力は、試験又は研究のためにする特許発明の実施には、及ばない。
2 特許権の効力は、次に掲げる物には、及ばない。
一 単に日本国内を通過するに過ぎない船舶若しくは航空機又はこれらに使用する機械、器具、装置その他の物
二 特許出願の時から日本国内にある物
3 二以上の医薬(人の病気の診断、治療、処置又は予防のため使用する物をいう。以下この項において同じ。)を混合することにより製造されるべき医薬の発明又は二以上の医薬を混合して医薬を製造する方法の発明に係る特許権の効力は、医師又は歯科医師の処方せんにより調剤する行為及び医師又は歯科医師の処方せんにより調剤する医薬には、及ばない。

(先使用による通常実施権)
第七十九条 特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?