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『資本論』を自分なりに読みやすくリライトしていく試み4-労働は人間に自然が課した永遠に続く作業

資本論
第1部 資本の生産過程
第1篇 商品と貨幣
第1章 商品

第2節 商品に表される労働の二重性 1/2

前の記事:商品をめぐる2つの価値-「使用価値」と「価値」3/3

『資本論』を自分なりに読みやすくリライトしていく試み

■二面性を持つ商品と労働力

最初に、商品は二重的なもの――使用価値と交換価値を持つものとして、私たちの前に表れました。
そして、労働もまた、使用価値の生みの親として同様の特徴を持つことが示されました。

こうした、商品に含まれる労働力の二面的性質は、私(マルクス)によってはじめて批判的に指摘されたものです。この点は経済学の理解にとって軸となる点なので、もう少し踏み込んで説明してみたいと思います。

■使用価値が商品になる条件

2つの商品の話をしましょう。
1着の上着と、10エレ(約67cm)のリンネル
前者は、後者の2倍の価値を持つものとします。

10エレのリンネル=W とすると、
一着の上着= 2W
と表すことができます。

上着は、ある種の欲求を満足させる使用価値を持っています。
その使用価値とは、目的を持ち、作業場で材料や道具を使って作られたものです。生産物の使用価値によって、費やされた労働の有用性も示されます。

上着とリンネルの使用価値は、当然ですが異なるのものです。同じように、それらを生産する労働形態(仕立てと織物)も、質が異なります。
この2つのものが質的に異なっていなければ、商品として相対することはできないでしょう。同じ使用価値を持つもの同士を交換したりはしません。上着と上着は交換されません。

商品となり得るのは、
異なる種類の労働の結果であることと、
さらに、互いに独立した、私的で自律した労働の結果であることが必要です。

■社会的分業について

様々な使用価値に対して、同じように様々な有用労働が対応しています。こうした労働の社会的分業は、目、属、種、変種と分類されます。

一般的に商品の形でものが生産される社会では、労働の社会的分業は、さらに複雑なシステムに発展していきます。

とはいえ、上着にとっては、それが仕立て屋によって着られるか、それとも仕立て屋の顧客によって着られるかはどうでもよいことです。どちらの場合でも、上着は使用価値として機能します。

人類は何千年もの間、衣服を着る必要に迫られながら、仕立て屋になる人が一人もいないまま自分で衣服を作り続けてきました。
商品の生産は社会的分業の必要条件とはならないのです。

■使用価値とは自然+労働の結合物

ところで、上着やリンネルは自然には存在しません。特定の欲求を満たすために、特定の自然素材を使い、目的を持った作業によって生産されたのです。

労働は、人間に自然が課した永遠に続く作業です。人間と自然の間の物質の交換がなければ、生命は存在できません。労働は人類生存にとっての必要条件なのです。

使用価値である上着やリンネルなどの商品体は、2つの要素の結合物です。すなわち、自然素材+労働力

上着やリンネルなどから、そこに費やされた有用な労働を取り去れば、人間が関与しない自然そのままの材料だけが残ります。

人間が生産においてできることは、自然素材の形態を変えること(労働)だけです。しかも、労働そのものにおいても、人間は絶えず自然の力に支えられています。労働だけが使用価値(ものや富)の源泉ではないのです。
「労働は富の父であり、大地はその母である」(ウイリアム・ペティ)

つづく

次の記事:第2節 商品に表される労働の二重性 2/2

参考図書:「資本論」社会科学研究所監修・資本論翻訳委員会訳(新日本出版社)/ Capital: A Critique of Political Economy V. 1 (Illustrated and Bundled with The Communist Manifesto) (English Edition) Karl Marx, Timeless Books


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