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【冒険小説】機動屋台Gバスター 第4話

世界の果てへの旅

「そこって遠いの?」と僕はハムスターに聞いた。
「いや、そうでもない」
「ふうん」
「ま、じっくり考えて決めるんじゃな。わしらは早朝にここで待っているから合流しよう」

決めかねた僕は父さんに相談した。
「世界の果て? お前まだそんなくだらないことを」
そう言われると何も言い返せなかった。
「そんなことより、芋の皮むきが溜まってるだろう」
「まあまあ多感な時期なんだから」と呉さんが横から諭した。
一晩寝ないで考えて、結論にたどり着いた。黙って出ていけばいい。芋の皮むきなんてうんざりだ。

翌朝、明るくなると同時にこっそり塔の外に出た僕は、マギーさんとハムスターが昨日と同じ場所にいるのを見つけた。
「じゃあ、行こうか」とハムスターが言った。「まずは北や」
僕は緊張してうなずいた。
「待ちな」と後ろから声が聞こえた。振り向くと父さんがそこにいた。僕は慌てた。
「あ、あの…」
しかし父さんは何も言わず、
「これを持っていけ」と背後の屋台を指さした。父さんが昔使っていた旧モデルだ。
「随分使ってなかったけど、一応代替機として整備は続けていたから動作は問題ないはずだ。これお前にやるよ」
僕は驚いた。
「本当?うれしいよ」
ついに僕もGバスター乗りになれるのだ。
「その代わり、無茶はするなよ」
「うん」

僕とマギーさんとハムスターは屋台に乗って出発した。といってもごつごつした岩場がずっと続き、霧の中を進んでいくだけ。寸胴鍋のような塔と父さんの姿はすぐに見えなくなった。
半日ほど進んだころに、食事をとることにした。屋台には小さな寸胴鍋が積み込んであった。とろ火にかけていたボルシチを皿に盛りつけて3人で食べた。ニンジンがいい感じにトロトロになっている。
「ねえ、塔の上に行くって言ってたよね。上の人たちのこと知ってるの?」僕はパンをスープに浸しながら聞いた。
「そのうちわかる」
「そのうちって?」
突然マギーさんが立ち上がり、霧の向こうに目を凝らした。
「Gだ」とハムスター。
「え?」
「早く鍋を」
「わかってる」
僕は鍋を岩場の陰に隠し、再び屋台に乗り込んで核融合エンジンのスターターを踏み込んだ。しかしエンジンはかからない。
練習は何度もしていたが、緊張してうまくいかない。
「深呼吸するのじゃ」とハムスターが言う。
手順は完全に覚えている。まずはレバーを融合機内の圧力限界まで踏み込み、デコンプを引いて圧力を少し逃がして上死点を探り出し、そして再び思い切り踏み込む…

エンジンがかかった!
屋台は耳をつんざくようなエンジン音とともに超合金アダマンチウム装甲で操縦席を覆い、人型ロボットに変形した。
「2匹、こっちへくるぞ」とハムスターが言った。
「わかった」と僕は霧の中にGの姿を探した。しかしどうしてこいつは僕の肩の上に乗っているんだ。

つづく


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