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幻の町・東江戸川三丁目への憧れ

その昔「おじゃまんが山田くん」というアニメがありました。作者はいしいひさいち。

原作は大阪市淀川区あたりの話だったのですが、アニメ化にあたり舞台は東京の「東江戸川三丁目」という場所に変更されました。歌にも出てきます。
そこは架空の地名で、東江戸川という町は存在しません。東京出身ではない私は長いことこの地名が実際にはないことを知りませんでした。

ところが、私はいまこの場所に土地勘があります。おそらく、東京で長く暮らしている人にとっては「ああの辺りね」とすぐにわかる場所のはずです。

ない場所なのになぜ?

あの辺りとは、荒川の向こう側。首都高速のC2の下に広がる街です。
東京は、皇居がだいたい23区の中心にあって、すごい大雑把ですが、そこから東へ向かい、隅田川を越え荒川と中川を越え、そして江戸川を越えると千葉です。

不動産屋の人と話していたら、荒川の手前か向こうかで家賃がドラスティックに変わるという話を聞きました。つまり下町です。

実際にわたってみると、
荒川を越えるとガラッと何かが変わります。
寅さんの出身地・柴又も両津巡査が勤務する亀有公園前派出所も(これも架空ですが)荒川の向こう側です。椎名誠の「哀愁の町に霧が降るのだ」に出てくる克美荘もここですし、中川放水路(新中川)で酒を飲んで騒ぐシーンは強く印象に残っています。あちら側(東京の東)には、独特の雰囲気があります。

東京に来る前からそのあたりは私にとってずっと憧れの場所でした。

ここ数年、私は月に何度も荒川河川敷をただ歩くというのを繰り返していました。東京拘置所あたりからスタートし、対岸にスカイツリーを眺めながら京成電鉄の高架線をくぐり、堀北、四つ木、小岩方面へと。

河川敷はあまり手が加えられておらずセイタカアワダチソウが伸びまくっていて、土日には少年野球やサッカーの試合が行われます。グラウンドは一応予約制らしく、勝手にクリケットをやっていたインド人(?)が警官に注意されていました。なんというか万事ゆるい感じが好きでした。

とはいえ、憧れの地ではあっても住む気にはなかなかなれず。田舎者の私はどういうわけか東京西側の新宿沿線にこだわり続け、杉並区、世田谷区、渋谷区、中野区を転々としていました。

しかしついに私もここの住人になることができました。東京に住み始めて長い時間を経て、ようやく私もこの地に土着できたということなのでしょう。

まだ引っ越して間もないですが、気楽に暮らせるというのは思った通りで、QOL爆上がりの生活を満喫しています。

気がかりなのは、ここが海抜ゼロ地帯という点。線状降水帯なんかにやられたら真っ先に水没しますが(杞憂?)、まあ別にいいです。

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