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鈴木さんを裏切って本田さんと一緒になった件(オートバイの話です)【NORAオートバイ4】

※ところどころSUZUKI好きの人にとって不快な表現があります。

昨年末、SR400をバイクおーに売ってしまいました。2014年式のFIモデル。
3回目の車検時、要所要所の部品が限界に達しており、交換だけでも十数万円かかるとのことで、色々迷った末に売って別のを買おうと考えたのでした。

バイクおーの兄さんは色々文句を言いながら査定してポンコツのマシンを引き取っていきました。15万円で売りました。高いのか安いのかはわかりません。

時はコロナ禍。半導体不足で車は未曽有の供給難に陥っており、新車よりも中古車の方が高いなんていう状況が起きていました。

そんな非常時にもかかわらず次に乗るバイクを探しにふらふらホンダのお店に行ってみると、GB350が飾ってありました。昔GB250に乗っていた身としては気になるネーミングです。

デザインは遠目に見るとトライアンフのボンネビルみたいです(個人の感想)。クラシカルなデザイン好きに刺さりまくる外観。思わず見とれていると、

「今ならまだ手に入りますよ」と悪魔の囁きみたいな店員さんの声が聞こえてきました。
「キャンセル待ちですけれど、だいたい1カ月ぐらいで納車できます」
そう言って長髪の店員さんはにやりと笑いました。

とにかく外観と音がいい。レトロデザインでも中身は完全に現代の仕様で、振動はほぼなく、トラコン付き、チューブレスタイヤでオールLED。
ということで、ほぼ見た目だけで衝動的に決めて、手付金を払って帰ってきました。

◇◇
しかし、その後は思った以上につらかったバイクのない生活。さらに約束の1カ月を過ぎても連絡がないので、「納車は無理かな」と考えつつネットを見ているとスズキのSV650というバイクが目に留まりました。

珍しく「即納」が可能なモデルでした。

UTube動画のインプレッションを見ると、走って面白いエンジンだと、ほぼ皆さん同じことを言います。パワーは申し分なく、中低速域、高速域ともに快適。さらにエンジンのドコドコ感。
Vツインに行ってみるのも悪くないかな、と思い始めました。

ただし、……問題はデザインでした。ネイキッドのレトロデザイン好きから見ると、なんというかスポーティすぎますし、

さらによく見ると、スピードメーターの上にあるカバーがサザエのようでした。
走りは申し分ないけれどサザエが……。

やはりスズキの見た目は(私にとっては)個性的すぎました。
「これを買おう」そう思うとなぜか脂汗が出てきます。

その日は夜の3時過ぎまでいろんな動画を見て過ごし、走りを重視するならSVに乗るべきと自分を鼓舞して、何とかサザエさんカットを中和しようとしました。そして寝る直前に決心したのでした。

「よし、SV650にしよう(GBはキャンセルしよう)」

ところが翌日、忘れかけていたホンダから電話がかかってきたのです。
「GB入りましたよー」
「本当ですか。じゃあ週末にお店にお伺いします」

そしてついに数週間後、ホンダGB350がようやく納車されました! スズキのことは頭の中から消えていました。

◇◇
いやーバイクっていいですね。
このバイクの特徴的なところはまず音です。ノーマルマフラーとは思えない野太い音。エンジンにはすごい癖があり、ゆったり走るように作られてる印象です。性能面は乗り続けてみないとわからないですが、跨って楽しいのは間違いないです。

杉並から台場まで一気に走ってバイクを降り、改めて車体を見ながら「いいなあ」としみじみ思いました。

すると、
「随分楽しそうじゃない」と後ろから声が聞こえました。鈴木さんでした。「決心したんじゃなかったの」
「あ、……いや、まあそうですけど」
「ふうん、本田さんにしたんだ。この子可愛いもんね」
「……」
「私がブスだからやめたの?」
「いや。……ごめんなさい」私は鈴木さんの顔を見れませんでした。
「謝ることなんかないよ。さよならお幸せに」

そう。私は外見でバイクを判断するゲス野郎です。

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