#59パンデミック後の世界10の教訓

冷戦後の世界は、新しい国家体制を敷いた。具体的にはアメリカの覇権、自由市場、そして情報革命。一方で危機はいつだって身近に存在していて、何度も制御不能な危機が人類を襲ったのである。GFC、そして直近のコロナもそう。コロナ前と後で明確に変わりうると思っていたことでさえも変わらなかったこと、また逆に変化が不可逆的に進んで行ったことも多々ある。本書は、10のトピックを選び起こりうる変化に対して彗眼の知見を与えてくれる。

・どんなシステムであっても、開放性、急速な変化、安定性を共に維持することはできない。政策のトリレンマである、自由な資本移動、金融政策の独立、為替相場の安定性に対応する考え方。例えば中国は、急速な変化と安定性を伴っていたが、開放性はない、など。

・直近のパンデミックは、作用と反作用で理解することができる。自然界との接続領域を顧みない人類の急速な開墾が無計画なまでに広がり、副作用を及ぼしている。ロッキー山脈の東側の半乾燥地帯を無闇に開墾した際に学べなかった。

・一方で、人間はとても強靭であると理解することができるのである。人間は息を付かせぬ速さで変化を遂げ、多くの困難を乗り越えてきた歴史なのである。これからも速度の早い進歩は進み続けるであろうが、注意深さを持って進む必要があることを忘れてはいけないのだ。

・社会が誕生した時から政府は家産性国家であり続けてきており、これは、親族や友人を大切にし相互互助の成り立つ範囲であれば機能する。有能な官僚機構を作ろうという試みを目指し続けてきたのが人類の歴史。成功して古なった試みも存在するのは、具体的な権力を行使することができなかったから。現在のアメリカ、イギリスのコロナへの対策の後手具合もその一例。

・中世の伝染病流行は国家形成の一要素だったかもしれない。

・アメリカは、国家介入に反発することが染み付いた国である。右派は行政予算を奪い、左派は規則や要件を導入させることで機能不全をもたらしている。

・知識が高度化するにつれ、専門家が一層必要になっていき結果として、知識が権威と権力につながる集団が形成されていく。しかしながら、その結果としてできた支配階級の人々はその状態に甘んじず、また、人々は専門家の意見をよく聞く必要があるだろう。

・デジタル化の波は、人間とういう同胞の大切さを、一層ありがたく思わせうるし、予測不能性、暖かさ、優しさに、一層価値を感じるかもしれない。歴史の大半において、勇気、誠実さ、寛大さ、信念、愛情などが賛美されてきたことを忘れてはいけない。

・パンデミックの後も、都市は人間が近代的暮らしを構成するための理想的な手段であり続けている。集まる、働く、遊ぶ、その全てが一つの場所で完結するようにできているからだ。

・人を人間として、市民として形成していくことができるのは都市の役割の大きな役割。

・トルコが従順な同盟国だったのは、1980年代は経済的にも、政治的にも、軍事的にもトルコの命運がアメリカに握られていたから。しかし、それから、アメリカ以外の国は大きな進歩を遂げたのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?