#214 行動ファイナンスと投資の心理学

市場は非効率であるという信条が自分の中にはあるわけだが、それの裏付けとなるのは行動ファイナンスであるのではないかと長い間思いつつしっかりと本を読んだことがなかったので導入書にあたる本書を読んでみた。行動経済学のメッセージの根幹にあるのは、ヒューリスティックスに基づくバイアスが市場の非効率をうむということであるが、同時に自分自身がバイアスの影響を被らないのは難しく、超過リターンを上げることは可能だが困難であるということ。逆を返せば、超過リターンは大衆心理と反するか、全く心理的要因に影響されないことで得られるということだと思う。いくつか気になったポイントをまとめておく。

・代表性の原則があるがために(優れたリターンだったこと)、人々は平均への回帰という現象の度合いをきちんと勘案できなくなる。(過去に敗者だった株式のリターンが非常によくなるのもこういった理由になる。)

・ギャンブラーの錯誤でずっと白が出続けたら、仮に半々の確率だとしても、確率の差があるように思う。また逆にトレンドがあっても、平均回帰の強い力が働くと錯覚することもある。

・市場が上昇してきた場合には、上値は限られていると考え、逆に下がってきた場合には下値は限られていると考える傾向がある。

・曖昧さへの忌避で、確実でなく損しない可能性がある選択肢を自分で選ぶ可能性がある。(投資家が負けると分かっていても大きなレバレッジをかけてしまうことはここが起因しているだろうか。)

・ヒューリスティックスが元となるバイアスと、フレーム依存性(株は債券に比べて危ない、仮想通貨は危ないetc)のために、価格は本質的価値から乖離する。そうした例として、勝者敗者効果の原因としての代表性、ファンダメンタルに比べて高すぎた歴史的株式プレミアムが挙げられる。

・センチメントとはヒューリスティックスによるバイアスが生み出したものである。

・投資家が低PER株の見通しに関して、過度に悲観的になることからバリュープレミアムが生じる。また逆に最近パフォーマンスが良かった株式が存在するために最近の事象に過度に楽観的になったりすることもあるとする。

・業績発表後のドリフトに基づく投資戦略が、プラスの超過収益を一貫して発生させ、中期的にはモメンタム、長期的には過剰反応を起こすことにつながる。(これを仮想通貨にも演繹すると、半減期に最初は反応は遅く、やがて影響があることを理解すると過剰反応する。)

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