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地球人類大殺界

 7歳になった原川忠彦が天から降ってきた光に打たれるのを、原川哲造と原川真紀は目の当たりにした。
「忠彦!? 忠彦大丈夫か!?」
 走り寄った両親に忠彦は顔を向けた。その両目が完全に裏返り、眦と鼻孔からどぶどろのような粘液が垂れているのを見ても、両親の近づく足は止まらなかった。忠彦が口を大きく開け、中に光り輝くものがあるのを見ても止まらなかった。二人の足が止まったのは、口から吐き出された光の塊が自分たちに飛来したときだった。
 光の塊は前方400m強のすべてを灰に変えた。
 日暮れまでに千葉の平穏な住宅街に住んでいた2500人の半数は死んでいた。

「なぜ私達が集められたのですか」
 陸上自衛隊1曹である九神は怪訝な声を上げた。「千葉県怪光大量死事件対策本部」と大書された部屋には自衛隊幕僚長、防衛大臣、そして日本国総理大臣がいた。本来1曹である九神のような人間を呼びつけない雲上の人々だった。
 自分と同じく呼ばれたらしい男女もいた。自衛隊員らしい者だけでなく、民間人……スーツ姿の壮年の男、制服の少女、髭面にカソックコートの男など異様な人物が目立った。
「揃うたか」
九神はぎょっとした。部屋の影から滲み出したように、黒衣の老人がいつの間にか室内にいた。
「ええ、果心さん」
総理が頷くと、果心は話し始めた。
「先日、牡牛座方面で超新星爆発があったのを知っておるな。あれは実は超新星爆発ではない。とある星で戦争が起き、最終兵器が起動し、全生物が絶滅した光じゃ。そして、残念ながら、怨みをもって死んだ異星人の霊道に地球がすっぽり収まった……宇宙空間を超えるほどの邪悪な霊は、地球人の少年に憑き、破壊を尽くしておる」
老人は奇妙な民間人たち、そして九神を見た。
「お主らは霊能者の中でも最高の力を持つ者たちじゃ。そして、九神1曹は神降ろしの血筋の者。彼に地球の守護神を憑け、宇宙怨霊を祓わねばならぬ」

【続く】

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