うつ状態とまやかしの暴力性
体調が悪い。久々に相当なうつ状態で、拍子抜けしている。生活の全てが危ういが、順を追って説明したい。
日曜日の夜に調子が急変した。言語化が難しいものの、突如涙が止まらなくなった。隙を見て、とりあえず眠ろうと自室に戻った。
呼吸は荒く、涙はおさまらなかった。怒りのままに電子機器を投げようとした。そこで自分の奇行にはっとした。
気づいた途端に体に力が入らなくなった。そのまま目の前の布団に倒れ込み、泣いた。
それから、こう言った状況の時に以前の自分ならばどうしていたか、考えを巡らせた。日記を書くことにした。這って椅子の下まで移動し、なんとか座り込む。
握ったペンを思うまま投げる様子を、机の上のペン立てをひっくり返す様子を、電気スタンドを投げる様子を、机の横の小さなラックをひっくり返す様子を、それに伴って出る大きな音を、想像をする。
手先の感覚に集中する。思うままに、握ったものへ怒りをぶつける1秒先の自分が想像できる。現在の自分の思考が、たいへん暴力的であると理解する。
全身の力を抜くと、ぐらりと体が傾く。ゆっくり、頭が地面に近づいていく。肘掛けのない椅子から体ごと地面へ、落ちる。
地面のコードが膝に絡みつく。左手のそばに、外していたメガネがある。壁に投げつけようと手が動く。瞬時に、「割れたメガネの修理費を払うのは誰なんだよ」と、思う。左手の力を、抜く。
音もなく、泣いている。力が入らず開きっぱなしの口からはよだれが止まらず、体から出た液体は重力のおもうままであった。
少しでも体を力ませると、力のままに全てを壊す衝動が、ここにある。その事に気が付き、誤ちを起こさないよう、脱力する。1度力を抜いた体は、動かなくなった。下半身は、言うことを聞かず、だらんと床に体重を預けたままだ。
探るように動かした左手に、落ちていたスマホが当たる。震える指先で何とかスマホを掴む。荒い呼吸も整わぬまま、家族に連絡をした。
力が入らず動けなくなった私を、両親がなんとか布団の上まで連れてくれた。後に、これが介護だと理解した。
深夜、目が覚めた。頭が痛い。体もだるい。とにかく不快で、これは、熱がある。と思った。ふらふらと立ち上がりトイレに寄って水を飲み、体温計を手に取ってからリビングの地べたに力なく座り込んだ。
平熱だった。頭がガンガンと痛い。体には力が入らず、歩くのも一苦労である。うつ状態を熱の無いインフルエンザと例えた人間がいることに納得する。
それから数日。今に至る。これからのことを、ぼんやり考えることができる程度には症状が改善している。
原因があるとすれば、主治医の取り決めた、薬の量の調整であろうか。はたまた、私の普段の生活に、問題があったのだろうか。
夢やぶれることばかりだと、先のことを考える。うつ状態になんてなるなよ、と、人のことを考える。こうなってしまったら、もう一生、ろくでもないものに取り憑かれて生きるしかないと、思い知る。
忘れていた感覚がある。私にはもう、真っ当に生きる方法が無いのだなと思う。どこに相談したら良いのか、分からない。
こんな状態で、生きていくのか。私の体は、収まらない動悸と共に布団の中に沈んでゆく。
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