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大変だー

今回のテーマ:ストリートベンダー

by 河野 洋

日本で育った僕にとって、ストリート・ベンダー、つまり屋台というと高架下のラーメン屋、たこ焼き、お好み焼き、焼きそば等、すきっ腹を満たしてくれる手軽で割安なフード・ベンダーだった。もちろん、夏のお祭りに欠かせない出店にまで目を向ければ、かき氷、りんご飴、焼きとうもろこし、金魚すくい、輪投げ、ダーツ、お面と、子供達のショッピングモールになった。

しかし、所変わってニューヨークとなると、そういったものは何一つなく、公園や街角のホット・ドッグやプレッツェル、あちこちに出没する移動式アイスクリーム屋くらいだった気がする。マンハッタンでバイトを始めた90年代、文字通りストリートにアンカーを下ろす行商人から朝食を買うようになった。あの当時でドーナッツとコーヒーで1ドルくらいだった気がするが、本当にそんな安かったのか、もはや記憶は定かではなくなってしまった。

10年くらい前からか、ハラルフードが安くて、なかなか美味しいことに気が付き、中でもお気に入りのチキン・オーバー・ライスは、ランチのみならず、夕食や深夜の夜食に食べるようになった。コロナで外食が激減したが、それでも一時期はよく食べていた。同メニューは、日本人には欠かせないイエローライスの上に、一口サイズに刻まれたチキンが盛られ、レタス、トマト、オニオンのサラダもついてきて、あっさりしたホワイトソースに、真っ赤なホットソースが振りかけられ、見た目もカラフルで食欲をそそる。これがわずか5ドルだったので、物価の高いニューヨークでは時に欠かせないメニューの一つとなる。

しかし、つい最近コンベンションセンターで仕事をした時、久しぶりにチキン・オーバー・ライスを注文したら、会計が12ドルで超びっくりしてしまった。コロナによる値上げとコンベンションセンターという場所ならではの値段なのかもしれないが、それにしても高級フードとも言える値段に目を丸くしてしまった。これからは気楽に道端で食べ物を買う機会も減るかもしれない。

しかもだ、考えてみれば、排気ガスや雑踏の埃を浴びる場所で調理された食べ物って、衛生面を考えると非常に宜しくないでしょう?それとフードトラックのベンダーたちは立ち位置がお客さんより、ずっと高い。見下ろされている感じがするのも、どうかと思い始めた。

さらに気になることがもう一つある。ストリート・ベンダーって店員一人で切り盛りしているところが多いのだけど、皆さん用を足す時って、どうしているのだろう?考えられることで、同時に非常に考えにくいのは、決まった時間、もしくは携帯を鳴らすと店番の助っ人がくるということ。さもなければ、店を閉めて鍵をかけて、トイレへ一目散。近くにお手洗いがない時もあるだろうけど。そうでもなければ、オムツをしているのかもしれない。いや、さすがに、それはないか。でも、それ考えるとベンダーも大変だー。

※下記はチャイナタウンの商魂たくましいチャイニーズのストリートベンダーの数々

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Kono 大変だー chinaown 03

Kono 大変だー chinaown 02

Kono 大変だー chinaown 04

2022年4月9日
文:河野洋

[プロフィール]
河野洋、名古屋市出身、'92年にNYへ移住、'03年「Mar Creation」設立、'12年「New York Japan CineFest」'21年に「Chicago Japan Film Collective」という日本映画祭を設立。米国日系新聞などでエッセー、音楽、映画記事を執筆。現在はアートコラボで詩も手がける。




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