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月夜に現れた君と。 Another Story.

遂に〇〇とお別れする日が来てしまった。
楽しかったなぁ。2年間。

私一人で出かけると言ったのに、〇〇は「僕もついて行くよ。」と言ってくれた。

本当は〇〇が寝ている間に月に戻ろうと思っていた。

でも、私は〇〇のことが好きだから。
最後もしっかりお別れしたいと思ったから、だから首を縦に振った。

𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄

遂に月からの迎えがやってきてしまった。
久し振りに見た、蒸気機関車。
いつ見ても、まるでSLみたい、と思う。

私は列車に乗り込む。
すると彼は、
「ありがとう。」
そして

「美空のことが好きだから。」

そう言ってくれた。

そんなことを言われたらもう、お別れなんてできないじゃんか。

嬉しくて嬉しくて私はもう、気持ちが抑えられなかった。

列車を降り真っ直ぐ〇〇の元へ駆けて行って

チュッ

キスをした。

「最初で、最後のキス。」
私はそう言った。

そして、すぐに〇〇から離れた。
ここで止めなきゃいけない。
これ以上一緒に居たら、彼のことが好きすぎて帰れなくなってしまうと思ったから。

「今まで本当にありがとう。」

「こちらこそ。ありがとう。」

「じゃあね。」

「うん。」

最後の言葉を交わし、私は再び列車に乗り込む。
列車が光り、夜空に線路が浮かぶ。
そしてついに走り始めた。
みるみるうちに〇〇が遠くなっていく。

「あぁ、本当にお別れなんだ。」

そう言った時には既に、私の顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。

彼もまた、私と初めてあった橋の上で泣いていた。

悲しいはずなのに、少しだけ、ほんの少しだけ嬉しかった。

「私のことを大切に思ってくれていたんだなぁ。」

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しばらくして涙が止まり、私は車窓の外を眺める。
幻想的な天の川が夜空を彩っている。
まだ、光が届かず列車の中は真っ暗だった。

私の手元には、一つだけ彼との思い出を持ってきている。

あの時、屋台でお酒を飲んだ日、2人で撮った写真。
彼の家にもこの写真を置いてきた。
他のものは全て無くしてきた。
照れくさそうにしながらも笑ってくれた彼。
本当に幸せだった。
私の人生で、おそらく1番、幸せな時間になっただろう。

不意に目の前がパッと明るくなる。
月の光だ。


列車の中が照らされ、写真が見えるようになる。
私も〇〇も、照れくさそうな、綺麗な笑顔だ。
本当に楽しそうな笑顔。

「あぁ、寂しいなぁ。」
「〇〇、大好きだよ。」

そう言って、私はまた泣いた。

fin.


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