シャインポスト アニメ版と小説版比較「小説版の完全アニメ化を求む」
結論:アニメが面白かったなら絶対に小説版は読まなきゃ損。
シャインポストとは
去年(2022)のちょうど今ぐらいの時期に放送していたアイドルアニメ。全12話、総集編という名の声優関連企画回を含めるともう少しある。
作画も脚本も悪くないアイドルアニメなのにイマイチブレイクしなかった、というか私も「知名度がないと嘆く動画」に出会わなかったら普通にスルーしていた作品。この時期のアニメって他には何がやってたかというと、
・異世界おじさん(延期を重ねるも人気)
・オーバーロードⅣ(盤石の人気)
・邪神ちゃんドロップキックX(先に切り抜くなど公式が話題)
・ラブライブスーパースター2期(ラブライブシリーズ)
・リコリス・リコイル(毎回面白すぎて続きが気になる作品)
まああの…………強すぎたね。しかもこれ以外にも作品は沢山あるから。全部見るのはもう無理ですわ。アイドル関連だと(シナリオは別として)ラブライブも鎮座しているから話題性の面でもつらい。
物語のあらすじ
相手の輝き(嘘)を見抜く特殊能力を持った傷心の男が、二度とやらないと誓っていたマネージャー業に復帰し、3人組アイドル「TiNgS(ティングス)」を導いていく物語。個々の能力はダイヤモンドの原石だが、各々が抱える心の闇に囚われてブレイク出来ない。輝きの本質を探り解決し、定められた期間で決められたステージを満杯にしなければ解散。この危機を乗り越えられるか?
小説版との違い
現在3巻まである小説「シャインポスト ねえ知ってた? 私を絶対アイドルにするための、ごく普通で当たり前な、とびっきりの魔法」……長っ!?
ラノベだからかタイトルが長すぎる。でも中身は面白すぎた。
つい最近まで部屋の片隅に積んであったのを、気分転換で掘り起こして読了。アニメ版も特有の良さがあるが、小説版を読んだらかなりの消化不良だったことを思い知らされるし、キャラも若干違ったり、展開も全然違う。12話で納めなきゃいけないのはわかるけど、こっちをアニメ化できてたら先のラインナップを蹴散らせた可能性だってあった。エモさの爆弾。
1~6話(アニメ版)
あらすじ:3か月後に中野サンプラザで行われる記念ライブを満杯にできなければ解散という条件を突き付けられたTiNgSは、招致されたマネージャーの日生直輝のアドバイスや心のケア受けて3人の才能を開花させていく。
アニメは全部で12話、原作は3巻ある。しかしここまでのお話は1巻分に相当していて、残り6話で2巻と3巻の出来事を落とし込まねばならないという突貫工事に。緩やかな立ち上がりだが、4話と6話の葛藤や涙は感動モノで拍手喝采なので一概に悪いとは言えない。その弊害は後々来る羽目になるのだが……
小説1巻
解散の話を直接TiNgSには言わず、マネージャーにだけ伝えている。
日生直樹を出迎えるのが生天目春のみ。
解散条件は小まめに設定されていて、1巻時点だとサンシャインシティ噴水広場(目標人数、目算2000人)
「ゆきもじ」がブライテストの練習場で一緒にレッスンを受けない。
小説版では毎巻解散ないし解散に陥りかねない時限的危機がある。それが大きな単独ライブだったりするのだが、アニメ版だとこの辺りが「中野サンプラザ成功のためのステップ」として上手いこと変更されている。小説版だと最終的に中野サンプラザまで行くのは約半年間なので、アニメ版はかなり性急に物事が進む。最もその短い期間で大丈夫なのは後述する変更点があるからなのだが、ぶっちゃけて言うと変更してほしくなかった感じはある。
そして大きく異なるのが、「ゆきもじ」の扱い。アニメ版だとひたすら自主練ばかりを画面の端でやるだけのコンビだったが、小説版だとどこか別の場所でやっている。それが明らかになるのが2巻だ。
7~9話(アニメ版)
あらすじ:TiNgSのままでは中野サンプラザ到達は夢のまた夢、あと一か月で行くには、かつてはTINGSのメンバーだった「ゆきもじ」の2人を再度メンバー入りする必要があった。しかし彼女たちは戻ろうとしない。その理由は「足を引っ張るせいで全く輝けない人」のためだった。
小説2巻
ゆきもじの練習場とFFFの関係性
祇園寺雪音がアイドルを嫌っていた過去
祇園寺雪音が脱退を決意する経緯が若干違う
生天目春の秘密に何となく気づいていた2人
雪見だいふく(作中だとぼかされている)を食べる相手が違う
新宿ReNYでのライブがある
アニメ版だと大きく急転する7話、そして8と9にかけて生天目春に焦点を当てている。これ自体は小説版でも同じなのですが、祇園寺雪音と春の関係性がちょっとだけ違っていたりする。雪見だいふくを食べる描写がアニメ版だと紅葉だが、小説版だと春と一緒に食べているので絆の深さをここで表している。半分こと、元通りを示すキーアイテムだったりする。
加えて小説版だと祇園寺雪音がよく目立つ。舞台で活躍する両親に憧れ、アイドルへの偏見を持つ彼女が、ライブではどんな強みを持っているのか、余すところなく出ている。アニメ版だと生天目春の復活劇の添え物的扱いだが、小説版だとむしろ祇園寺雪音と生天目春の物語が濃度を増して押し寄せている。
あとアニメ版だとゆきもじがFFFとレッスンするのは同じだが、内容が戦記絶唱シンフォギアで見たような特訓で現実感がない。当たり前だがアニメならではの視覚的面白さだが、まじめな内容にぶっこまれてびっくりする。ここら辺は制作陣営の遊び心でしょう。
因みに成長を促す目的でFFFの練習スタジオにTiNgsが来るエピソードもあり、FFFのリーダー兎塚七海がどういうキャラなのかが深堀されているなど見どころは多い。
そして最も違うのが、アニメ版だと「新宿ReNYのライブが丸ごとオミットされている」件だ。様々な制約があり、TiNgSではなくTINGSでないと攻略不可とされているこのライブ会場で、ようやく5人が揃い、ずっと封印していた楽曲を歌い、生天目春が真の意味でアイドルになるなどの劇的な大一番になっている。
しかしアニメ版だと生天目春はキャパ100人の定期ライブで復活し、いつも通りのパフォーマンスをするにとどまっているため、新メンバー2人が全然目立たない。なにより祇園寺雪音がどういう強みを持っているのかもわからないため、本当にただの添え物になっているのが口惜しい。あと1話欲しかった!
10~12話(アニメ版)
特別編という名の総集編みたいな何かを挟んでようやく本編。しかもその総集編が2回連続なので、ここで視聴者を離した可能性があるのではとか勘ぐってしまう。というかその2回分どっちかでいいから本編に割り当てて欲しかった……。
ようやく5人揃ったTINGS、中野サンプラザまでの期間はあと僅かに迫る中で、知名度アップ大作戦は着々と進む。そんな中現れた、生天目春の元居たアイドル事務所の出世頭「HY:RAIN」の黒金蓮が春に「中野サンプラザで実力を見せなければ戻ってきて」と無茶な要求をする。そして見事中野サンプラザでのライブは大成功するのだった。
小説3巻
最終決戦で、HY:RAIN VS TINGSの対バンをHY:RAINマネージャーから求められる
負けたら「日生直樹が業界から去る」条件もプラスされる。
ダンス・歌唱・総合の3本勝負を行う
伊藤紅葉の過去が明らかになる
HY:RAINメンバーの深堀がされている
黒金蓮のキャラは大体一緒だがアニメほどの嫌悪感がない
最終決戦で玉
城杏夏が覚醒日生直樹の贖罪、能力のデメリット判明
きっと小説版から入ったらアニメの黒金蓮ちゃんを受け入れることができなかったかもしれん。それくらい違う。無礼な態度をとる・春に対して執着するなどあるが、あそこまであからさまじゃない。強者のイメージがついて回っていた。アニメ版だと対バンがないので、敵愾心を剝きだしにしても決着など付けられない=別のキャラ付という風になったのだろうけどこれは。
そして残り3話しかない弊害として「TINGS主要メンバーの伊藤紅葉の過去がアニメ版だと一切出ない」という。これが本当にね……アニメしか見ていないとダンスが上手い変な言葉遣いの少女って印象しかないんですよ。「一人ぼっちにさせない」としきりに言う彼女がどういう人生を経てその境地に達したのかが、小説版だとしっかり描かれています。
HY:RAINメンバーがアニメ版だと黒金蓮を窘めるだけの常識人ポジ集団でしかないのがマジで納得いかん……実は各キャラとの絡みいろいろあるんですよ、そこら辺の細かいところなどが蓄積し、最後の最後に中野サンプラザで弾けるんです。エモさ爆裂です。
そしてアニメ版だと最後に「日本武道館で対バン」と、「俺たちの戦いはこれからだ!」ENDになっていましたが、ご安心ください。中野サンプラザで対バンします。
それにあたって私のシャインポストで一番の推しである玉城杏夏が、覚醒します。アニメだと春の横に並んでツートップライブをしていましたが、何でそんなことが直前になってできるのかなどの謎があって素直に感動できなかった思い出。でも小説版だと「教科書通りのことしか出来ない」弱点をとんでもない方向で解決している。私の心の中のとっかさんが「おきょおおおおおおおおおんん!!!!」と叫んで気絶している。しびれるセリフもあって大満足である。
あと他人の噓を輝きで見抜くことが出来る日生直樹ですが、彼の過去にやったこと、それにより囚われた人の存在、やらねばならない課題として立ち塞がったり、「嘘を見抜く能力のデメリット」までもが描かれます。超便利だけどこのデメリットはやばいわ……正直言ってまっとうな生活できないのではあるまいか。心が病んじゃいそう。
もう一回結論
小説版のシャインポスト(全3巻)は必読。アニメを面白いと思ったら、なおさら読むのがおすすめ。熱いし心が優しくなるしおきょんの活躍が尋常じゃない。知らなかった過去や関係性も細かく描写されているぞ!
ちなみに私が好きな曲は「TOKYO WATASHI COLLECTION」だ。
サポート1人を1億回繰り返せば音霧カナタは仕事を辞めて日本温泉巡りの旅に行こうかなとか考えてるそうです。そういう奴なので1億人に到達するまではサポート1人増える度に死に物狂いで頑張ります。