パリピ孔明 8話,9話ネタバレ感想「アナタは何しに表舞台へ」

 今回は8話と9話の感想ですが、9話がメインです。8話あっての9話なので、絶対に8話を抑えることを推奨します。

8話の英子は自分らしさを探しに

 英子にもそれなりに技術はある。だからこそ、ナナミの上手さがより良く理解できる。楽しそうに歌い、「歌いたい」気持ちが伝わってくる、人を魅了する歌声や演奏技術にあまりにも大きな差があった。

 これを埋めるべく交流と同時に手解きを受けたのが8話の英子だ。サービスシーンとして銭湯も映っていたけど、残念ながら鎖骨から下が見えませえええん! 生足も魅惑のなんとやら!

8話は見なくても大丈夫だが

 実は話の流れだけを見ると、7話から9話にいきなり飛んでも十分理解できる内容。しかし絶対に8話を見てほしい。8話はてぇてぇの要素が抜群すぎて砂糖が出そうだし、その分9話の価値をアゲアゲにしている。

 そしてこの回は若者の成長回なので、孔明も策もなし。タイトルこそパリピ孔明だが、物語の主役は英子に他ならないのでこれでよい。

KABEは原点を振り返りに

 同話、KABEは地元へと帰ってかつての友人、ささっちょと出会う。変わらずラップを楽しみながら実家の手伝いとユーチューバー活動で色々楽しく地元のラッパーたちと毎日を過ごしていた。

 そんなささっちょに「どうしたら赤兎馬に勝てるか分からない」と零すKABE。孔明から伝えられたミッション内容は「10万いいね企画前に赤兎馬との決着をつけて、これ一本に集中してほしい」だ。

 KABEはこのミッションゆえに7話で、「赤兎馬に勝つためのワードチョイス」などを日々探していた。不出来な積み木を天への足がかりにしようとしていた。

 原点回帰は煮詰まったときに行うと、思わぬ盲点に気付くもので。KABEはささっちょから1つ、「勝とうと思ってラップしてたのかい?」アドバイスを貰った。普段とは違う自分でいられるラップを、KABEは誰かに見返すためにやっていたわけではない。【決着を付ける】というのは、【勝つこと】とイコールではない。

 とても大事な言葉と友人の鼓舞を受けてKABEは一歩成長した。胸が熱くなるやり取りもあったし、ファンにディスられながらも尊敬されるKABEは『親しみやすさ』の点で赤兎馬さんに勝っていることに視聴者は気付く。赤兎馬さんも見た目いかついけど博学で熱い情熱持った好漢だから、今のKABEとの対決も「自分を倒すためだけのラップ」より「圧倒的KABE要素しかないラップ」の方が悶えるほど喜びそう。(なお、厄介彼女みたいに何度も再戦挑まれる?)

9話感想へ

 8話の最後にプロデューサだろうと思われる人物『唐沢』からの着信が鳴り響き、9話でそれを取ったナナミン。内容は路上ライブの中止、英子との交友を中断しろという一方的な管理の一報だった。

 落ち込むナナミンだが、それ以上に英子は落ち込んでいた。メキメキと上達した歌声で「君のうたには自分がない」と断じていたキドもその上達ぶりを褒めたものの、今度は「信念」が足りないと難題を突きつけられた。信念は、きっと誰もが持っている。しかし改めて「これが私の信念だ」と言い切れる人間はそう多くいないだろう。

 「自分らしさ」より一歩前進だけど、決められたXデーまでにそれを見つけ出せるかわからず途方に暮れる英子を優しく撫でるナナミンに「あ^~」って気分上昇。いずれガンにも効くだろう。

最後の策で正体看破?

 困った時に開ける3つの袋。順番に開けろと言われていたのに最初に全部開封した上に7話で1,2と使用した英子だったが、8話では1度も使う機会がなかった。3つ目の【展望台の入場チケット】は実際に存在する渋谷の観光スポットがモデルだろう。

 尤も、最初に全部開けていなかった場合はこの時点で袋を開ける発想に至らなかった可能性もあったので、ある意味英断っちゃ英断である。このタイミングで使うのは孔明の予想からハズレていたのではないか? もちろんいい意味で。

 綺麗な夜景にテンションブチアゲの英子。しかしナナミの気持ちは全然晴れない。周囲にはAZALEAの宣伝広告、飛行船にも宣伝広告を打っている。10万いいね企画大成のために準備万端ということか。8話では「私はあんまり好きではない」と憎らしく言っていたナナミは、ここで英子だけに、自分の正体を明かす。視聴者は『な、なんだってー!?(棒)』だったけども、英子にはショッキングな身バレである。というかあの状況でバレって周りに聞こえなかったのかな??

咲き誇った花

 アザリエ(AZALEA)。正式名はアザレア、花言葉は花の色によって異なり、ピンク色は『青春の喜び』。

 今や人気急上昇中のアザリエ、その始まりは文化祭の出し物で結成された3人のガールズバンド。ナナミ、フタバ、イチコの3人による息の合った演奏と、ナナミの歌声で体育館内の観衆を魅了したことが全ての始まり。

 ここまでならオタクなら殆ど知っている「けいおん!」みたいな展開。しかしこの作品はそのまま上手くいかない、行かなかったからこそ今のナナミは燻っている。

踏み躙った花

「この3人でやろう」と意気込み上京したが、鳴かず飛ばずで全く上手くいかない。定職にもつけずにバイトへ、バイト代は負債になったチケット代や高額な居住費に消えていき、心身ともに削られていく。

 そんな折に出会ったのが、現プロデューサーの唐沢だ。やりたいことの希望を述べるが、売れない実情を棚に上げる夢物語に反吐が出たのか「やめてしまえ」と一喝。指示に従えば2年以内にドームツアーをやらせると言い切った不遜な物言いの彼に嫌悪感を抱くナナミはここで拒絶を選択したが、しかし現実には一発逆転要素などどこにも転がっていない。ジリジリと生活は厳しくなり、仕送りを催促しなければやっていけない状況にまで追い詰められていく。

 やむなく頭を下げに行ったナナミ、待っていたのは『例の衣装』と『仮面』、そして楽器をエアに切り替えてダンスと歌に集中しろという指示だった。

 バンドとして売れることを目的に活動していた彼女たちの夢が完全に潰えた瞬間である。

 2年後のドームツアーまでは保証するが、その後については何もビジョンが示されてない。一定量売れればそれでいいのか、それともプランは大量にあるのか謎。過激で派手な衣装に身を包みおどる彼女たちに向けられるのは、アーティストへの畏敬や尊敬か。それとも好奇と下心か。

 実際私は2~7話のOP映像時点で、何度も映ったアザリエに対し『イロモノ』『露出の多い集団』『でかい』以上の感想は抱いてない。その中身にまで気は回っていない。唐沢が彼女たちの確かな実力を買ったのか、それとも容姿と情熱だけを評価したのかは謎。

ささっちょとナナミの対比

 KABEの友人であるささっちょは、ラップが大好き。ナナミは3人で演るバンドが大好き。高校時代までこの2人に大差はない。

 ささっちょはラップを仕事にはせず、「地元の」八百屋で働きながらユーチューバー活動で下積みしている。見る限りKABEへの嫉妬心はないし、再生数にこだわって収益化を目指しているわけでもない。もしそうならKABEとのラップを必ず映像に残している。韻を踏まないとか再生数が100程度とかで自虐はしていたが、地に足つけて自分の好きなラップと向き合い続けたために、KABEの変わらない場所であり得たし、考え方も大人になっている。会話の内容もラップがメイン、話題がスルスル出てくる。

 ナナミはバンド一本で食べていきたい情熱を持っていたが、このご時世にユーチューバー活動なり別途自分たちをプロデュースしてやろうとかの気は回っていない。バイトに明け暮れるばかりで練習時間や睡眠時間の確保もままならず、売れたいけど何が足りないのかの考えも足りていない。そりゃあ唐沢から「やめてしまえ」と言われる。結果的にプロデュースで売れることは出来ても、好きなものからどんどん離れてしまい、「何故上京したのか」が漠然としたものになっていた。仲のいいメンバーとの会話も後半ぎこちないし、バンドやライブのことは口にしたくない、それ以外の会話は何かを買ったとかそればかりだ。

 大人も夢を追い続けるが、どう折り合いをつけるのかも大事になる。ささっちょは「辛抱強く続けていく」道を選んだが、ナナミンは「捨てることも必要」な道を選んだ。どちらの道が悪いとかではないけど、ナナミンの道には描いた夢がどこにもなかったのが悲しいポイントである。

ここに咲く民草

 パリピ孔明を見るに当たり、何度も聞いてきた曲『I’m still alive today』。英子が大好きな歌手の歌は、孔明の心を震わせるほど素晴らしかった。だが今はこの歌で2度も大きな壁を突きつけられている。

「自分らしさ」の距離を詰めて、「信念」の在り処を知らずにここまで来た英子。しかし彼女は既に答えを持っていた。だからこそ孔明は彼女に全てをかける価値を見出していた。

 眼の前のナナミンが傷つき、疲れ、なにかしてあげたい想い。眼下に咲き乱れる光源にいるだろう無数の人々への想い。自然と英子の口から紡がれるアカペラの『私は今日もまだ生きている』

 何度も聞いてきたからこそ、今回の歌い方がこれまでとは全く異質なものになっていることに気付ける。あの時孔明が泣いた気持ちを味わうことが出来る。「多くの民草を救う」と3話で孔明が言った言葉は、何の誇張もない真実だった。それを理解した英子は、ようやく己の信念、辿り着くべき境地に達したのである。

 自分も思い切り傷ついて、命すら投げ捨てようとした時期があった英子。そこから良き縁に恵まれ、今ここに立っている。そんな彼女だから友人のために、名も知らぬ誰かのために、思慕と慈愛のこもったエールを贈ることが出来る。視聴者の涙腺も、ナナミンの涙腺も決壊させるに十分な曲だ。伸ばした手の先にある無数の星星にも、この愛は届くはずだ。

 次は敵になると辛い表情で伝えるナナミン。英子は「また一緒に歌おう」と返すこれが、どれほどナナミンの希望になったか。サマーソニアの行方も気になるが、六本木うどん(仮)がどの様になるのかも気になります。あといい加減『I’m still alive today』の全歌詞を見せてくれ、こんなビッグラブを高らかに歌い上げる直球な歌、速く耳に通したい!

サポート1人を1億回繰り返せば音霧カナタは仕事を辞めて日本温泉巡りの旅に行こうかなとか考えてるそうです。そういう奴なので1億人に到達するまではサポート1人増える度に死に物狂いで頑張ります。