パリピ孔明 10,11話ネタバレ感想「滅びゆく誰かを救うために」

前回までのあらすじ

 超大型音楽フェス【サマーソニア】出場のため、並み居る強豪の誰よりも先に10万いいねを稼がねばならない英子。そのために必要な策を孔明から「3つの袋」として受け取り、技量の上昇・自分らしさ・歌うことの信念などを探ることになる。
 その途中、英子が路上ライブで出会い、親友と言っていいほどの友好を深めたナナミは、サマーソニア出場を目標としている大手事務所キータイム所属『Azalea』ボーカルだと明かす。かつて目指していた自分の音楽ではない、型にはめられた音楽に嫌気が差している一方、すでに多くの関係者がいる事も含めて雁字搦めだった。そんな彼女のために歌う英子は、最後の最後に信念を抱く。

 一方、ラッパーとして伝説になりつつあるKABE太人もまた、強敵であり好敵手の赤兎馬との決着を付けるべく動いていたのであった。

変わる自分ではない飾らぬ自分

 英子のアドバイスのもと、故郷の友人と出会い「自分らしいことを恥じない自分でいい」ことを理解したKABE。弱い見た目も、ラッパーとしての在り方も、何もかもを等身大で会得した彼は孔明の思惑通りかそれ以上に逞しくなって帰ってきた。

プリンジジイの敗北

 世界的アーティストにその力をようやく認めてもらった英子。孔明曰く「興味持って勝負の土俵に上がった時点で勝ちは見えていた」ということでいやらしいなあもう!

楽しくないライブと100万円

 2週間。ほんの一時とはいえ、英子との楽しいライブを経験してしまったナナミは、本職の方で感じていた倦怠感をよりいっそう強く感じることになる。仲間との関係も、悪くはないけどぎくしゃくで、少し間違えただけで縁の崩壊間近な状況。視聴者としてもごめん、やっぱつれぇわ……

 そんな状況に追い打ちかけるように、唐沢はキャンペーンを実施することを通達。ゲリラライブを行い、その後出るQRコードを読み込んだ方に抽選で100万円をプレゼントというもの。自分たちの音楽だけでいいねを稼ぐことすら出来なくなったとナナミは内心嘆くが……まあその心配は無用だと後に思い知ることになる。

決着

【KABE VS 赤兎馬】このビッグタイトルを前にビビり始めるKABEだったが、弱い自分を見つめ直し。そんな自分を応援してくれた仲間たちをレペゼン(代表する)ために勇気を奮いだして戦場へと赴いた。

 英子にとってはサマーソニア出場の10万いいねこそが天下分け目の戦いなのだが、KABEにとってはここ。赤兎馬に勝つことこそが真の始まりなのだ。

 しかし当の赤兎馬さんはKABEを大きく買っていることがラップの中で明らかになる。「怯えてるなら手を貸してやる」と挑発的ながらどこか優しさを感じる。完璧に返してみせたKABEに焦りを見せることなく笑みを浮かべるところを見て

「やっぱりこの人が一番KABEのファンだったんだな」と実感する。舞台から降りたKABEをどうにか戻したいと日々厄介彼女みたいにSMS寄越すくらいご執心だったからなあ。戻ってきたどころか自身に満ち溢れる様子に、内心小躍りするほど嬉しかったんだろう。

 そしてそこからの腕上げ……ここらへんの流れがまるまるアニオリってマジですか????? え、最近のアニメオリジナルって原作の補完を完ぺきにこなしていて素晴らしいですわ。

夢を見る者たちへ

 澄み切った心で英子は『六本木うどん(仮)』を、『Dreamer』に改題。元々は夢を追ってここまで駆け抜けてきた自分を表しただけの歌だったが、夢に焦がれてくすぶる親友を。夢に溺れる民草たちを。その全ての『夢』に魅せられた全てのものに贈るエールとして昇華された一曲。歌詞が一部分出ているんですけど、物凄く泣ける。何か心に一欠片の夢があれば問答無用で刺さる名曲です。

※此処から先は11話の感想になります

霧中のゲリラライブ

 きたねえトゲピーが色々説明してくれる100万円企画。100人に当たるので総額1億円だが、大手企業ともなればその程度の金を宣伝広告費で賄えるだろうし、そこで失っても売れてしまえば余裕でペイできる金額だろう。……だが当の本人たちは上の空。皆別々の景色を眺めて会話もない。士気はかなり低い。ここで気分が上がらぬようでは駄目なのだが、有能プロデューサー(軍師)の唐沢は「たとえ俺を死ぬほど憎んでいても」と意に介さない。確かにいつもなら士気が低かろうがどうとでもなる状況だった。この思い違いこそが唐沢のミスだった。これから行くのはAzaleaのワンマンショーではなく、伏兵に孔明がいる戦場なのである。

誇りを傷つける者

 ゲリラライブの準備を着々と進めるAzalea陣営。しかしスタッフの中に「チューニングなんかしてどうするんですかね、どうせ演奏しないのに」と唐沢に言う心無いスタッフがいて、それを問答無用でスネに一撃を加える唐沢。……なるほど。あれだけ過激な衣装とスタイルで売り込みをかけていたAzaleaに、情欲の目を注ぐスタッフや上の者がいないわけだ。こうやって裏側から見えないように手を回していたんだろう。

 ただ単に売れれば良い、彼女らは道具、そんな精神ならここまでしないはずだから。目論見が「バンドやるなら大観衆の前でやれ」ということだと言うならこの対応にも納得。多分9話の回想時に、ナナミが唐沢に頭を下げた時のセリフはマジなんだろう。

「俺も昔は勘違いしていた。やりたいことをやれば売れると」これってやっぱり実体験なんだろうな……だから最初に嫌な思いをさせても、本懐は遂げさせることを目標にしているんだと思われる。

霧虫賞有

「金に群がる虫ども」と、SNSを前に邪悪な笑みを浮かべる唐沢。敬意を表する相手が客ではなくプレイヤーという精神は孔明と同じなのだが、実体験からなのか客への当たりは強い。

10万の矢は短期間で作れないが

 Azaleaが現場に辿り着く少し前に、渋谷中でゲリラライブ地点を探しているファンや金に群がる一般人たち。渋谷といえば109、そこに現れる英子軍。いきなりAzaleaの曲を歌い出す!

Q:どうやってこの場所を割り出したか
A:孔明は先ず相手を知ることから始まり、どこで仕掛けるのが一番効果的かを考えたはず。まさかゲリラライブ地点が「無名の店舗前」な訳ない。多くの人間が集まるよう仕向けるためにはどうすればいいかを考え、「言えば誰でも分かるような場所」に狙いを定めていたのであろう。

 すかさず出すQRコード。ここは恐らく密偵の情報筋で再現したものだろう。まあ孔明だし。英子は「何気に凄いやつ」くらいの評価だけど、歴史に名を残す程度の人物である。

 彼の作戦は私も漫画で読んだことがあるので、『10万』の数字を見て思い出した人は多そうだ。

一般人誤認

 Azaleaは3人グループ。くらいの知識しかないニワカにとって見れば、DJとKABEに英子の3人を見て「あれAzaleaじゃない?」と勘違いするのも無理はない。顔を晒していなかったからっていうのもあるだろう。よもや同じタイミングでなりすましが現れるなんて思わないだろうし。

ガチファン困惑

 Azaleaガチ勢のファン2人は困惑している。一発で偽物だと分る存在だが周囲の大衆は「いいから109に集合だ」と半ばパニック。ファンから見てもうなるほど「上手い」英子の歌声だが、歌っている曲がAzaleaの代表曲っていうの本当に汚いな孔明!!!

「蹴散らせ」

 10万いいねまで稼ぎきれば御の字。しかし「あれは偽物」という呼びかけもあって7万いいねで頭打ちになる。ようやく到着したAzalea陣営が歌い出す、本物の『UNDERWORLD』

 扇状的な衣装に振り付け、ゆったりとした開幕からの激しいロックミュージックに力強いナナミの歌唱力で頭をやられ、サビで一気に再点火。地下から湧き上がり突如吹き上がるマグマのような一曲。良い曲だが、しかしナナミの心は冷え切っていた。だから、英子を見つけたときも、自分に対して冷ややかな視線を向けているように錯覚してしまう。実際は軽蔑も何もしていないのに。人前でハレンチな服装で歌い上げる自分を見られることへの心理的弱体化があっても、しかし営業スマイルと営業文句は欠かさないプロ意識は流石である。そりゃあ人気も出るわ。

不発の離間の計

 どこかの世界で鬼の首をとってそうな声の密偵が、孔明に離間の計発動条件クリアを伝える。孔明の一声で計略は発動するのだが、離間の計はこの場合「Azaleaの内部崩壊による混乱を誘っていいねの速度を減少停止、英子の新曲で一気に場の流れを掠め取る」というものだ。しかし、孔明はその計略発動をやめた。孔明は状況が整えば殆の計略を実行する。出来ないとしたらそのシチュエーションではないから以外にはなかった。

 初めて。孔明は自らの軍師として立てた作戦を変更した。

 3つの袋を開けて使っている時、英子は孔明の作戦からかなりハズレていた。本来は「1人で頑張っている中での試行錯誤や、人々の様子などを見て底から民草を知っていき、信念を獲得する」という流れだったのだろうけど、よりにもよって最大の敵と目されるAzaleaのボーカルと友好を深めることになるとは夢にも思ってなかっただろう。

 ここでAzaleaを完膚なきまでに、どころか再起不能に陥れるのは簡単だ。メンバー仲もギクシャクしているし、唐沢への反抗心なども熟知している以上は二度と表舞台に立てなくなるまで叩き潰せる。

 だがそれは、今の主君である英子の意をも潰してしまう行為だ。英子はナナミを救いたい。だからこの計略を発動したら、絶対に孔明のことを許さないだろう。

ラップ

 それ故に別の策。「あちらも偽物疑惑を出して観客を疑心暗鬼に陥れる」作戦に変更。赤兎馬を打倒したKABEによる切れ味チェーンソーのDisで観客やAzaleaを荒らし、100万円の熱をKABEへの炎上に変換した後、クールダウン中に疑惑を漂わせ、飽和状態を見た瞬間に密偵が吠えるというコンボを決めた。密偵くんの声は何度聞いても炭焼の少年にしか聞こえない!!!

 このラップシーンは何度も巻き戻した。素晴らしいのでぜひ見てほしい。

 次回、最終回。寂しい。

サポート1人を1億回繰り返せば音霧カナタは仕事を辞めて日本温泉巡りの旅に行こうかなとか考えてるそうです。そういう奴なので1億人に到達するまではサポート1人増える度に死に物狂いで頑張ります。