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ちょっとした劣等感

オフィスワークをしたことがなかったが、
それでもいいと思っていた。



世の中にはいろんな仕事があって、
基本的にどんな仕事も仕事として成立しているからには、仕事同士に優劣なんてつけられるわけがない。

そんな風に思っていた。


ところがである。
コロナというものによる自粛のお願いによると
飲食、それも飲酒が入ると、通常営業できない、

つまりは
「なくても生活できる」
というレッテルが貼られて

ある種の『優劣』が顕在化してしまった。




その当時私はミュージックバーで働いていた。

「なくても生活できる」
とは
そのころお客様に言われたのだけれど、
それがまあひとり、ふたりとかではなく、ほぼ全員。
みんな同じように言うもんだから面白い。

じゃあ、私たちの仕事は完全に必要なしなのか。

そう悶々としながら
カウンターに立っていた私。




そして今、
私はしたことがなくていい、と思っていた
オフィスワークをしている。

ひょんなことから、就活をし、
内定を頂くまでこぎつけて
保険代理店の事務として先月からオフィスワーカーとしての生活をスタートさせた。


保険というのは
「リスク」に備えるもの、
というのはご存じの通りで
教科書によると「リスクの移転」=「保険加入」ということになるようである。


世の中には必ず入らなければならない保険もある。
車を持てば自賠責保険、とか。

でも、必須ではない保険も当たり前だがたくさんある。
それは
「なくても生活できる」
のだろう。

教科書にはこうも書いてあって
「リスクという不確実さは、日常生活等における不安や心配のひとつではあるが、一方で将来に向かって様々な可能性が開けているという期待・安心の裏返しでもある」


保険とミュージックバー
を重ね合わせるのは甚だおかしいと思うのだが…

カウンターの中で幾度となく言われた
「なくても生活できる」

もしかしたら
「あれば生活が豊かになる」
の裏返しだったのではないか。



生活が豊かになるのは
みな望んでいることの一つであると思う。

それが
何によってなのかが違うわけで。


そういう意味では

保険屋も
飲食業も
仕事なんて

優劣なんかないのだ。




オフィスワークして良かったなあ。

大げさかもしれないけど、
あの時抱いた少しの劣等感は、今はもうないのだから。

募集人試験は明日。
合格したら、古巣のバーでプチ祝いしよう。




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