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外資系企業へ就職転職したい皆様向け。人気企業の英語解説付き投資・財務分析(2016年版_プラットフォーム・セクター編)

現在就転職をお考えの読者の皆様、こんにちは。

この人生の一大イベントにおいて、みなさんは何を基準に就転職する企業を選択しますか?自分がそれまでの人生において獲得してきた専門分野・スキルを活かせる企業、または新たな専門分野・スキルを取得できそうな企業を狙うのは誰しもが考えることだと思います。

投資で成功した大富豪で人格的にも賞賛されているウォーレン・バフェットは、仕事選びについて以下のように述べています。

「仕事選びも投資と同じ。いかなる手間も惜しんではならない。正しい列車に乗りさえすれば、金と痛みを節約することができるのだから」
“Managing your career is like investing – the degree of difficulty does not count. So you can save yourself money and pain by getting on the right train”
「自分の望む仕事を始めるべき潮時が訪れたら、逃してはならない。好きな仕事に就いていれば、あなたは毎朝うきうきとベッドから起き出せるようになる。履歴書の見栄えをよくするために、好きでもない仕事を続けるというのは、私に言わせれば愚の骨頂である。例えるなら、老後に精力を残しておきたいからと、若い頃にセックスを我慢するようなものだ」
 “There comes a time when you ought to start doing what you want. Take a job that you love. You will jump out of bed in the morning. I think you are out of your mind if you keep taking jobs that you don't like because you think that it will look good on your resume. Isn't that a little like saving up sex for your old age?”
「会計はビジネスの言語だ」
 “Accounting is the language of business”

出典:「史上最強の投資家バフェットの教訓」"The Tao of Warren Buffett"

投資先を選択するように「正しい列車」である就転職を選択する為には、その対象会社の投資・財務分析が欠かせません。収益性・成長性・財務健全性を十分に分析した上で自らの専門分野・スキルを加味して就転職先を選べば、日々の業務において自身の労働価値が向上しつつ、就転職先が提供するであろう持株会制度・業績貢献に応じて付与されるストックオプション/株式付与を通じて自身の財産価値も向上し、また業績悪化によるリストラ等のリスクを引き下げることができ、正に一粒で三度おいしい結果となります。

本シリーズでは「DODA転職人気企業ランキング2015」でトップ300位に入っている外資系企業の投資・財務分析をセクター毎に行いつつ、投資・財務分析で使用される英語の投資・財務用語を解説することにより、以下のような読者に便益をお届けできると思っております。

1. 人気外資系企業に就転職したい方

2. 投資・財務分析の基礎を学び、今後自力で企業分析したい方

3. 英語の投資・財務用語の基礎を学び、今後自力でブルームバーグ、ロイター、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)、フィナンシャル・タイムズ(FT)を読んでいきたい方

英語の投資・財務用語解説におきましては極力語源や同義語も収録することにより学習効率向上に資するように構成していきます。

Statement of Cash Flows、Goodwill、P/E、Net Debt / EBITDA、CAGR、Consensus(Analyst Estimates)等の英語・略語に興味がある・理解したい方は正に本シリーズの想定する読者となります。

本noteではプラットフォーム・セクターを取り上げ、収録企業は「DODA転職人気企業ランキング2015」2位のグーグル、6位のアップル、20位のマイクロソフト、28位のアマゾン、64位のLINE(親会社は韓国ネイバー)、102位のフェイスブックとなります。

財務分析においては企業の栄枯盛衰を感じ取っていただく為、キャッシュフロー計算書及び損益計算書は10-Kで遡れるマックスの長さとしております。グーグルは2004年~、アップルは1992年~、マイクロソフトは1992年~、アマゾンは1995年~、LINEは財務諸表開示の限定的な子会社且つ若い会社なので売上高に関してのみ2013年~、フェイスブックは2010年~となっております。

では早速、企業研究、投資・財務分析、関連英語習得を三位一体で進めていきましょう。


Ⅰ. グーグル(持株会社はアルファベット)

1. 概要(Overview)

この概要は米国企業の年次財務報告書の形式である10-Kでの記載を掲載しています。ちなみに四半期の財務報告書は10-Qといいます。報告書自体はこちらもしくは会社HPで取得できます。日本企業は同様の財務報告を有価証券報告書として発行しています。

以下、簡易「超」訳文・原文の順序で配置していきます。

グーグルの創業者であるラリーとセルゲイは創業者レターに「グーグルは伝統的企業ではないし、それになるつもりもない」と記述しています。その一環で、「現在保有している事業と比べると、投機的もしくは奇妙とさえ感じられるかもしれない事業エリアに(現事業より)控え目な賭け」をすることを皆様が私達に期待しうることも述べています。創業以来、グーグルは常により多くのこと、重要で意義のあることを持てる経営資源の範囲で実現しようと努力してきました。
As our founders Larry and Sergey wrote in the original founders letter, "Google is not a conventional company. We do not intend to become one." As part of that, they also explained that you could expect us to make "smaller bets in areas that might seem very speculative or even strange when compared to our current businesses." From the start, the company has always strived to do more, and to do important and meaningful things with the resources we have.
この経営方針を加速させるため、2015/8にアルファベットという名前の新しい持株会社の設立を発表しました。アルファベットは複数の事業の集合体です。その中で最大の事業はもちろんグーグルです。「その他の賭け」としてVerily(予防医学に重点を置く医療事業)、Calico(長寿研究医療事業)、X(新規事業の育成プラットフォーム事業)、Nest(スマートホーム事業)、GV(初期段階のベンチャー企業投資事業)、Google Capital(後期段階のベンチャー企業投資事業)、Access/Google Fiber(通信事業)を保有します。持株会社構造をとることで、アルファベット傘下の各事業がそれぞれ強力なリーダーと独立性を獲得し成長していくが促されます。
To help accelerate this, we announced plans in August 2015 to create a new public holding company, called Alphabet. Alphabet is a collection of businesses -- the largest of which, of course, is Google. It also includes businesses that we combine as Other Bets and generally are pretty far afield of our main Internet products such as Verily, Calico, X, Nest, GV, Google Capital and Access/Google Fiber. Our Alphabet structure is about helping businesses within Alphabet prosper through strong leaders and independence.
グーグル事業においては、検索・広告に関するグーグルの技術革新により、グーグルウェブサイトが広く使われ、またグーグルという名前が世界で最も認知されているブランドの一つになっています。グーグル事業は、消費者が関心を持ちまた広告主がコスト効率的と判断するオンライン広告から主に収益をあげています。Search(検索)、Android(スマホOS)、Maps(地図)、Chrome(ブラウザ)、YouTube(動画サイト)、Google Play(スマホアプリ)、Gmail(メール)といったグーグルのコア事業は、各々10億人以上のMAU(月に1回以上活動のあった利用者の数)を獲得しています。グーグルの挑戦はまだ始まったばかりで、今後もより大きな問題に果敢に取り組んでいき、信じられないくらいの創造性と革新性を併せ持つ事業として存続していく予定です。「その他の賭け」事業もグーグル事業同様に、各々のセグメントで重要な役割を担っていき、長期的にはビジネスとしての成功も収めることを目標としています。
At Google, our innovations in search and advertising have made our website widely used and our brand one of the most recognized in the world. We generate revenues primarily by delivering online advertising that consumers find relevant and that advertisers find cost-effective. Google's core products such as Search, Android, Maps, Chrome, YouTube, Google Play and Gmail each have over one billion monthly active users. And we believe we are just beginning to scratch the surface. Google's vision is to remain a place of incredible creativity and innovation that uses our technical expertise to tackle big problems. Our Other Bets are also making important strides in their industries, and our goal is for them to become thriving, successful businesses in the long term.

重要単語としては以下の単語があげられると思います。

founder:創業者 動詞のfound(基礎を築く)から派生。fund(基金)と同根でラテン語のfundus(底、基)より

conventional:伝統的な 動詞のconvene(招集する)から派生。ラテン語のcon(together 一緒に)+venire(to come 行く)より慣例(合意)を形成する会議に行くイメージ

intend:意図する ラテン語のin(toward 内に向かって)+tendere(to stretch 伸びる)より

strange:奇妙な extra(範囲外)と同根

innovation:革新 ラテン語のin+novus(new 新しい)

advertise:広告する ラテン語のad(toward)+vertere(to turn)より(注意を)向かせるイメージ

expertise:専門性 expert(専門家)、experience(経験)と同根でラテン語のexperiri(to try, test)より

industry:産業 structure(構造)と同根で、ラテン語のindo(within)+struus(to build)より

success:成功 ポジティブな意味を持つ同義語はprosper/thrive/flourish

2. リスクファクター(Risk Factors 危険因子)

10-Kには当該企業の成功を阻害する要因が記載されています。当たり前だろと思われる項目が多いですが、米国は訴訟社会なので考えつくリスクファクターは全て羅列します。

以下、簡易「超」訳文・原文の順序で主要なリスクファクターを配置していきます。

当該会社は熾烈な競争にさらされています。ユーザーに支持される革新的な製品・サービスを提供し続けないかぎり、売上高その他の営業結果は悪化する可能性があります。
We face intense competition. If we do not continue to innovate and provide products and services that are useful to users, we may not remain competitive, and our revenues and operating results could be adversely affected.
新しい事業分野・製品・サービス・テクノロジーへの投資はそれ自体リスクがあるものであり、既存の事業を脅かす可能性があります。
Our ongoing investment in new businesses and new products, services, and technologies is inherently risky, and could disrupt our ongoing businesses.
事業の成長スピードは時とともに低下する可能性があり、将来的には営業利益率は低下すると予想しています。
Our revenue growth rate could decline over time, and we anticipate downward pressure on our operating margin in the future.
ますます多くの規制当局からの検査を受けており、そのことがビジネスに悪影響を及ぼす可能性があります。
We are subject to increased regulatory scrutiny that may negatively impact our business.
私達のテクノロジーに対するプライバシー懸念により、ユーザーがグーグルを信用しなくなり、そのサービス等を使用しなくなる可能性があります。
Privacy concerns relating to our technology could damage our reputation and deter current and potential users from using our products and services.
新しいテクノロジーがオンライン広告をブロックし、グーグルのビジネスを害する可能性があります。
New technologies could block online ads, which would harm our Google business.

最後のリスクファクターはアップルが実際にiPhoneのiOSに広告ブロック機能を付与し始めたため、他のリスクファクターはcouldを使ってますがこのリスクファクターはwouldを使い微妙にリスクの度合いが高いことを示しているような気がします。

重要単語としては以下の単語があげられると思います。

competitive:競争の(激しい) 動詞のcompete(競争する)から派生。petition(請願)と同根でラテン語のcom+petere(to seek, attack)より

adverse:反対の advertiseと同様

disrupt:崩壊させる rupture(破裂、崩壊)と同根で、ラテン語のdis(apart 離れて)+rumpere(to break 壊す)より

revenue:収益、売上高 ラテン語のre(back)+venire(to come)で資産を保有することからリターン(return)のイメージ

operation:営業 operaと同根で、同義語はworkやeffort

margin:利益 売上高と費用の差、エッジ(edge)のイメージ

3. 財務分析

A. キャッシュフロー計算書

財務分析の方法はいくつかあると思いますが、投資の観点では現金(Cash)の受払(Flow)を追跡・整理するキャッシュフロー計算書(Statement of Cash Flows、以下CS)が最も重要である為、まずその推移(時系列分析)を追ってみたいと思います。

↓はアルファベットのCSの推移です。

まずは青の系列の営業キャッシュフロー(以下、営業(Operating)CF)を見てみたいと思います。営業CFとはざっくり言うと、その字の通り営業活動により獲得したお金の額です。例えば、A株式会社を100円の現金を出資により設立したとします。その時の会計処理(仕訳といいます)は、以下の通りとなります。

現金100円 / 資本金100円 i)

左側を借方(Debit)といいます。右側を貸方(Credit)といいます。

A株式会社が初年度に、保有している現金100円の内、50円を自分に給料を払いプログラミングして検索のウェブサイトHoogleを作ったとすると、その時の仕訳は以下の通りとなります。

給料50円 / 現金50円 ii)

i)とは異なり、現金が貸方にあることにご注意ください。

また初年度に、Hoogleを通じて広告収入を即金で200円獲得したとすると、その時の仕訳は以下の通りとなります。

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