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Mary Hopkinを聴いたら思った以上に湯川潮音だった

そういえば、諸星大二郎先生の新作『オリオンラジオの夜』を買って読んでいたんですよ。

オリオンラジオの夜

最近の諸星大二郎先生は、初期作品のような原初の衝動に読者を巻き込むようなヤバさは徐々に薄れ、穏やかな作風に遷移していっているように思う。とくにここ最近は、実在する音楽に着想を得た短編を複数描いており、『オリオンラジオの夜』はマスターピース的な楽曲とそれにまつわる不思議な人間模様が描かれている。実はまだ読んでる途中なので、この文章は本のレビューとか感想とかそうゆうのではない。

この『オリオンラジオの夜』の中に『悲しき天使』というエピソードがあった。なんだそれ・・・? 私は音楽をそこそこ聴いているように見えて全然そうでもないような節があり、超有名曲であってもタイトルでピンとこない場合がある。これは楽曲をモチーフにしたマンガなので、とりあえずインターネットとかで検索して、いちおう聴いてから読まないと面白さ半減だろうと思い、検索したらすぐに出てきた。


Those Were The Days

Mary Hopkinという人の"Those Were The Days"(1968)だ。日本版のレコードジャケットの画像を見たところ、めっちゃゴシック体で「メリー・ホプキン」と書いてあり、謎めいた文字装飾ででかでかと「悲しき天使」と書いてある。私は聴いてみてすぐに気づいた。これは知っている。あれだ、加藤登紀子が日本語歌詞で歌っていたやつだ。

ここでの収録タイトルは『遠い道』となっている。たぶんこっちが原題の翻訳に近いのだろう。どうやらこれは元々はロシアの楽曲で、その英語バージョンをMary Hopkinがカバーしてデビューしたということらしい。そういえばアルバム『百万本のバラ』(1997)のブックレットで加藤登紀子が「自分のルーツはシャンソンとロシア歌謡だ」的なことを語っていたのを思い出した。

この曲の歌詞の内容は、それなりに年齢を重ねた人間が過去を振り返るというものであり、メロディーこそ哀愁漂うロシア音楽らしい短調ではあるものの、悲しい歌という訳では全然なく、天使にいたっては全く出てこない。当時の邦題のつけ方は相当いい加減であり謎めいている・・・。あとこんな年齢を重ねた人間にしか歌えないような曲は、1997年当時の加藤登紀子とかが歌っているとR・E・A・Lさがあり説得力もすごいのだが、1968年当時18歳のシンガーがカバーしていたというのもミスマッチ感がすごくて面白い。


Mary Hopkinのアルバム『Post Card』を買った

ところでMary Hopkinの歌声を聴いていて、これはなんだか自分が好きな感じの歌声だな、と直感的に思った。

『悲しき天使』の日本版レコードジャケットにはB面収録曲として、すごいゴシック体で「ターン・ターン・ターン」と印字されているのが見える。この曲も知っている。湯川潮音がカバーしていたやつだ。

湯川潮音というミュージシャンについては以前から好きでずっと聞いており別途記事を書きたいくらいなのだが、SpotifyでMary Hopkinの曲をランダム再生で試聴するうち、その歌声になんとなく通ずるものがあるようにも感じられた。とにかく歌声が良い。

Spotifyは他の類似サービスと違って無料会員というものがあることを知って登録だけしているのだが、これはランダム再生しかできない。有料会員になったとしても、聴いてみて良いと思ったら私は物理的にそんざいするCDを購入すると思うので、この手のサービスは私にとっては現状、試聴以上の意味はないかなと思い、Spotify無料会員にとどまっている。

という訳で私は"Those Were The Days"が収録されている物理媒体CDを購入した。1969年のを2010年にリマスターしたやつだ。

これをここ数日ずっと浴びるように聴いているのだが、思った以上に湯川潮音要素があり・・・というか順序が逆だ。湯川潮音にメーホプキニウムが高濃度循環しているのだ。そのレベルが思った以上でびっくりした。


湯川潮音がカバーしている同一曲が複数あった

『Post Card』を聴いていて気付いたのだが、"Turn! Turn! Turn!"以外にも、"Voyage Of The Moon"という曲も湯川潮音がカバーしている。

Mary Hopkinは既存曲を多く歌っているシンガーのようなのだが、"Voyage Of The Moon"は彼女用に書き下ろされた曲のようだ。繊細でロマンティックな世界観が好ましい。

"Turn! Turn! Turn!"がでてくる湯川潮音のアルバム『Sweet Children O'Mine』(2009)

(この記事を書いた時点では、物理CDはなぜかねだんが跳ね上がって2倍くらいになっている。)

"Voyage Of The Moon"がでてくる湯川潮音のアルバム『灰色とわたし』(2008)


好きな作品を追ってゆくと同じ源流にたどり着くことがある

というわけで、発端は諸星大二郎のマンガだったのだが、そこからMary Hopkinにたどり着いて、それはまったく別だと思っていた湯川潮音へのストリームにもなっていたのだ。こうして好きな作品を辿ってゆくと、同じ源流に行き着いたりすることがあり、そういうとき、なんだか嬉しくなってしまう。

思えば私がちゃんと音楽を聴くようになったのもマンガが元だったのだが、この話は別の機会にしたい。



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