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トキワレポート(コラム)

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メンタルヘルスにまつわるあれこれや、家族・子育て、コミュニケーションについて、弊社の経験をもとにつづるコラムです。有料noteでは、より踏み込んだノウハウについてお伝えします。
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#精神疾患家族

母と息子の"恋人のような"関係

先日、グループホームに入所しているB君の面会に行きました。B君には学習障害があり、いわゆる一般的な人とは、会話も生活もペースが異なります。最近、親元を離れて、自立訓練のためにグループホームでの生活が始まりました。 30分ほどおしゃべりして最近の様子などを伺い、帰り際に「何か必要なものはありますか?」とお尋ねしました。11月も末になりだいぶ肌寒くなってきたので、冬服など足りないものがないか、確認したのです。 ところがB君から返ってきた“必要なもの”の返答は、まさかの「お見合

患者さんの「よい」と周りの「よい」

「本人の意思」こそが最大限に尊重されるメンタルヘルスの分野では、患者さんのいう「(状態が)よい」と、周りが思う「よい」に大きな乖離が生じることがあります。 (漫画『「子供を殺してください」という親たち』2巻より) 弊社では、精神科病院を退院し、グループホーム等に入所した患者さんのサポートも行っていますが、定期的に通院治療や訪問看護を受けていても、調子を崩すことはあります。とくに、本人と人間関係のある施設職員が退職や異動でいなくなったり、新しい入居者が入所するなど環境が変わ

♯024 重大な問題を抱える家族ほど、頼れる先は「行政」しかない

精神疾患に起因する家族の問題を放置した結果、年を追うごとに問題が肥大化し、「どこに相談しても解決しない」「どこから手をつければよいかも分からない」と相談に来られる方が増えています。 そう嘆く家族ほど、「民間企業に丸投げして何とかしてもらいたい」と考えるものですが、経済的余裕がないことも多く、現状では「行政機関を頼るしかない」という場合がほとんどです。 そのようにアドバイスをすると、必ず「行政は動いてくれない」「○○してくれなかった」「あてにならない」などと不満が出てきます

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精神科医療の理想と現実

最近、弊社に寄せられた同じような相談から、精神科医療の「理想」と「現実」について考える機会がありました。 相談者はいずれも本人のきょうだいです。本人は精神科に通院していますが、就労や作業所への通所など社会参加はできていません。親はすでに亡くなっており、きょうだいとも別居で一人暮らし。孤立した毎日の中、食事や保清もおろそかになりがちです。 「これまでも、状態が悪くなると1~3カ月間入院し、退院してはまた不規則な生活に戻り再入院……ということを繰り返してきました」と、きょうだ

子供の「問題行動」や「転機」を見逃さないためにも、「記録」

弊社に相談された方で、これまでにどこへも相談歴のない方には、まずは保健所はじめ行政機関への相談を勧めております。しかし最近は、気の進まない反応を示す方も増えました。行政機関には相談が殺到しており、即座の問題解決に至ることは稀です。行政職員に動いてもらうためには、相談者側にも、これまでの経緯をまとめた資料の作成やエビデンスの収集といった労力が必要ですが、それを惜しむ傾向にあります。 同様に、「何度も相談に行っているが、家族の窮状を理解してもらえない」と訴える相談者のお話を聞い

♯023 妻の精神疾患に気づくためのポイント

配偶者(夫もしくは妻)に精神疾患の疑いがあり、医療につなげたい場合の心得については、テキスト♯022で述べました。そちらにも記述しましたとおり、弊社への相談では、「夫」の精神疾患については、アルコール依存や薬物依存、双極性障害である場合が多く、第三者が見ても明らかに「精神疾患」と分かるほど病状が進んでいます。 妻の精神疾患は、周囲が気づきにくい一方で「妻」の精神疾患については、受診時に妄想性障害や(遅発性)統合失調症と診断されることが多く見受けられます。妄想の内容も身近なこ

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責任は親にあるのか?

弊社はこれまでの経験から、「精神疾患は他の疾病と違い、家族関係も含め、本人をとりまく環境が、良くも悪くも病状や予後に影響する」と考えています。 とくに、人間関係がうまく育めない、他者とトラブルを起こしがちな患者さんの場合、病気のみに対してアプローチ(治療)を行っても、根本の解決には至りません。重要なのは、病気を含めありのままの自分を認められる環境があるか。安心できる人間関係があるか、ということです。 ところが、本人がうまく医療や福祉につながっていない家庭の親ほど、「病気の

「他人任せ」ではうまくいかない

精神疾患をもつ子供(や親や配偶者)について、ご家族からの相談を受けていると、「制度や法律についてあまりにも知らなすぎる」と感じることが多くあります。 たとえば、現在の地域移行の流れ(=入院期間は基本的に3ヶ月)という現実を知らず、「病院に連れて行くことさえできれば…」「入院さえさせれば、あとは病院が面倒をみてくれる」と、未だに思っている家族も少なくありません。 なんとか頑張って入院までたどりつけたのに、家族はそこで安心しきってしまい、あっという間に退院。本人は自宅に戻って

家族自身の問題点に気づく

弊社はこれまでに数多くのご家族から、精神疾患に関する相談を受けてまいりました。 ご本人(主に子供や配偶者)が健全な日常生活を送れなくなったきっかけや原因は、それぞれによって異なります。その過程において家族が何もしてこなかったのかと言うと、家族なりにいろいろと手を尽くしてきています。 しかし、結果的には、最終目的である「自立」には結びつかず、家族関係も悪化…。長い年月を経て、家族もいよいよ「これはもう精神科医療につながないことには何も始まらない」と思うようになっているケース