胸郭出口症候群診断のための斜角筋三角底辺間距離計測の信頼性と再現性―術前超音波所見と術中内視鏡所見との比較―

井上彰、古島弘三 他:整スポ会誌 38(1). 51-56.2018

きっかけ・要約

 先日開催されました、第11回日本運動器理学療法学会学術大会にて『腕神経叢の牽引刺激が問題となった投球障害肩:症例報告-肋鎖間隙での滑走障害に着目して-』を発表しました。その発表の中で鎖骨下窩での鎖骨下筋や前鋸筋と腕神経叢の滑走性について報告しましたが、斜角筋間の狭さが影響するのでは、との考えに至り、今日の論文に辿り着きました。
腕神経叢が通過する斜角筋三角の底辺部は、その裂隙間距離が狭いと胸郭出口症候群の発生率が上がると考えられています。本研究では、エコーでの斜角筋三角の底辺部の距離(ISD)の計測が有用かどうかを検討されています。

対象

 胸郭出口症候群と診断され第一肋骨切除術の適応となった40例です。手術例に対してはエコーのBモードでのISDの計測と術中の実測値の比較検討が行われています。

結果

 エコー上の計測値と手術中の実測値の寄与率は高いことが示されました。ISDは健常者が9-10mm程度、TOS症例は5-6mmだったそうです。

感想

 TOS症例ではISDが狭くなっていることがわかりました。ISDが狭くても手術を回避する方法があるのか、狭いと構造的に症状が誘発されるため手術が必要なのか、について着目しながら今後の臨床にて検討をしていきたいと思います。
 また、ISDを計測する画像に再現性を持たせるためは、第一肋骨が長軸でhigh echoになること、鎖骨下動脈が円形になるようにすること、が重要とのことでした。この点に注意しつつ斜角筋三角底辺部の描出の練習を進めます。
報告:中井亮佑

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?