事竟Report

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ゼロポジション近似肢位での肩外旋筋力と投球動作中の胸郭肢位との関連

田村将希先生(昭和大学スポーツ運動科学研究所、昭和大学藤が丘リハビリテーション病院リハビリテーションセンター)他 日本臨床スポーツ医学会誌:Vol.31. No.2 348-354 緒言 投球動作の後期コッキング期では、上腕骨が肩甲骨面上に位置するゼロポジションに近い肢位を取ることが、障害予防のために重要である。田村らは過去の報告において、ゼロポジション近似肢位を肩甲骨面上で肩甲棘と上腕骨長軸が1直線状に配列する肢位とし、その肢位での肩外旋筋力をZero外旋筋力と定義した。

    • 腋窩神経前枝の走行部について

      本報告では、ご献体を用いて三角筋と腋窩神経前枝、後上腕回旋動脈の位置関係などを調査しています。主に、肩峰の前縁と後縁を結んだ中点と三角筋粗面部を結んだ線上で、どの位置を走行しているかを検討しています。結果、腋窩神経前枝は肩峰の中点から5.8±1.0㎝、後上腕回旋動脈は6.3±0.9㎝を走行していたとのことでした(図1)。本報告より、正確に肩峰の中点や三角筋粗面部を触診できれば、腋窩神経前枝周辺部の圧痛評価などにも繋がる可能性があると考えます。

      • 頚神経叢周辺の解剖とブロックについて

        今回は、頚神経叢周辺組織の詳細な解剖と頚神経叢ブロックについて検討されている論文を紹介します。本報告では、献体による基礎研究とボランティアによる臨床研究を行い、頚部の筋群と神経系の超音波解剖学的位置関係を明確にしています。また、この研究をもとに超音波ガイド下頭長筋内注射による頚神経叢と上頚交感神経節の同時ブロックについて紹介されています。 疼痛の機序解明と疼痛治療の最前線:超音波解剖学的アプローチ 臼井要介・他:Dokkyo Journal of Medical Scien

        • Zero外旋、Zero伸展筋力からみた投球フォームと組織損傷との関連性

          阿蘇卓也先生(昭和大学藤が丘リハビリテーションセンター) 臨床スポーツ医学:Vol.39. No.4 (2022-4) 358-361 はじめに 投球傷害肩肘(投球傷害)は投球動作によって発症する肩肘関節障害の総称であり、特に野球選手に多い。投球傷害の要因は不良な投球動作に起因すると考えられているが、その多くは身体機能低下の結果、生じている、健常選手の投球動作において肩関節はゼロポジションを取っており、その肢位は肩甲上腕関節へのストレスが少ないとされている。また、投球傷害例

        ゼロポジション近似肢位での肩外旋筋力と投球動作中の胸郭肢位との関連

          頚椎に関する基礎知識:MRIを用いた外傷性頚部症候群後のMeniscoidの形質変化についての検討

          SCOTT F.FARRELL et al:Morphology of Cervical Spine Meniscoids in Individuals With Chronic Whiplash- Associated Disorder: A Case-Control Study. Journal of orthopedic & Sports physical therapy(46)2016. 【概要】 本報告では、MRIを用いて慢性外傷性頚部症候群(WAD)患者における、

          頚椎に関する基礎知識:MRIを用いた外傷性頚部症候群後のMeniscoidの形質変化についての検討

          投球動作において損傷されうる肩・肘関節構造の解剖学的知識

          二村 昭元先生(東京医科歯科大学大学院運動器機能形態学講座) 臨床スポーツ医学:Vol.39. No.4 (2022-4) 338-343 はじめに  投球動作における肩・肘関節障害の代表的疾患は、肩であればSLAP病変や腱板関節包側断裂、肘であれば上腕骨小頭離断性骨軟骨炎やMCL損傷などである。これらにかかわる肩・肘の解剖学的知見は、誌面でも限られている。そのため、あまり注目されておらず、理解しにくい部位に注視するという意味で、肩は主に腱板関節包側不全断裂を想定して関節包

          投球動作において損傷されうる肩・肘関節構造の解剖学的知識

          頚椎に関する基礎知識:頚多裂筋の解剖学について

          今回は、頚多裂筋についての論文を紹介します。 Morphology,Architecture,and Biomechanics of Human Cervical Multifidus Jess S . Anderson, et al.:SPINE. 30:86-91. 2005 概要 本報告では、ご検体を用いて頚多裂筋の付着部位や筋・腱の長さ、生理学的筋断面積(PCSA)を定量化しており、それに基づいて頚多裂筋のモーメント生成能力を検討しています。(対象:9例・21歳

          頚椎に関する基礎知識:頚多裂筋の解剖学について

          子どもの靴のトラブルの診かたについて

          塩之谷 香先生(塩之谷整形外科院長) MB Orthop.35(12):75-86, 2022 Abstract 適切なサイズと良い品質の靴を成長段階に応じて選び、きちんと履くことはこどもの足部の正常な発達を促すために重要である。わが国における靴選びの知識の浅さ、足靴に対する無関心、靴を履く動作の習慣化が出来ていないなどが基盤にあって、足の痛みや変形のトラブルの原因が靴にあったとしても見逃されていると思われる症例は非常に多い。患者が普段履いている靴のサイズや品質、履き方をチ

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          In vivo magnetic resonance imaging study of the hip joint capsule in the flexion abduction external rotation position

           臨床や現場では、バッティングの際に軸足の股関節に体重を乗せると股関節の前方が詰まる、という訴えの選手を経験します。その症状の改善に至る解剖と機能について記載された論文を紹介します。  Masahiro Tsutsumi, et al. Sci Rep. 2022; 12: 6656. 要約  本研究ではMRIを股関節15°伸展位、45°屈曲位、FABER位で撮影し、それぞれの関節腔のサイズと脂肪体のサイズを算出し比較検討されています。この脂肪体とは前下腸骨棘上で大腿

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          足底腱膜炎の診かた

          高橋謙二先生(船橋整形外科病院スポーツ医学・関節センター部長) MB Orthop.36 (3):9-16, 2023 要約  足底腱膜炎は、腱膜の局所的な炎症や変性をきたした状態と定義される。しかし、その本態は「炎症」ではなく難治性の有痛性変性病変が主体であるため、近年欧米では「足底腱膜炎(plantar fasciitis)」でなく「足底腱膜症(plantar fasciopathy)」とする傾向にある。足底腱膜炎には付着部と腱膜実質部に生じる病変がある。これらの発症

          足底腱膜炎の診かた

          頚椎に関する基礎知識:携帯使用に伴う頚胸椎のアライメントと筋活動の変化

          The sffects of smart phone gaming duration on muscle activation and spinal posture Joo-Hee Park et,al. PHYSIOTHERAPY THEORY AND PRACTICE 2016 『概要』 普段の臨床において不良姿勢が続くことで、頚部症状を訴える症例をよく経験します。今回の報告では、表面筋電図(EGM)とデジタルカメラを用いて、携帯電話使用時(開始時・5分・10分・15

          頚椎に関する基礎知識:携帯使用に伴う頚胸椎のアライメントと筋活動の変化

          Elasticity of the Flexor Carpi Ulnaris Muscle After an Increased Number of Pitches Correlates with Increased Medial Elbow Joint Space Suppression.

          Akira Saito et, al. J Strength Cond Res. 2021 Sep 1;35(9):2564-2571. 要約  普段の臨床において内側部に疼痛のある野球肘症例をみる際に、練習後から前腕屈筋群あたりが張る、投球後に内側部痛がでる、などといった筋性の症状の訴えをよく聞きます。 そこで、本日は投球によってどの筋の筋緊張が変化するのか、それは何球くらい投じると変化するのか、について報告された論文を紹介します。 対象は26名の大学性投手です。方法は

          Elasticity of the Flexor Carpi Ulnaris Muscle After an Increased Number of Pitches Correlates with Increased Medial Elbow Joint Space Suppression.

          Sever’s Disease of the Pediatric Population: Clinical, Pathologic, and Therapeutic Considerations

          Clinical Medicine&Reseach Volume19, Number 3:132-137 Mohamad Y.Fares,MD,et al 要約  シーバー病は、世界中の子ども達に起こる踵に痛みを引き起こす疾患として一般的であるが、あまり報告されていない。多くの場合、オーバーユースによる損傷として、片側もしくは両側の踵の痛みを引き起こす、と説明されている。明確な損傷メカニズムは不明であるが、踵骨の骨端線に反復してストレスと圧力がかかることが関与していると考

          Sever’s Disease of the Pediatric Population: Clinical, Pathologic, and Therapeutic Considerations

          頚椎に関する基礎知識:後頭直筋の筋活動と不良姿勢との関連性について

          今回は、後頭直筋の筋活動と不良姿勢との関連性についての報告を紹介します。 Forward Head Posture and Activation of Rectus Capitis Posterior Muscles Richard C, et al.:The Journal of the American Osteopathic Association.117:24-31. 2017 概要/要約  小後頭直筋は、解剖学的に脊髄硬膜に付着していることから、同筋の機能障害

          頚椎に関する基礎知識:後頭直筋の筋活動と不良姿勢との関連性について

          胸郭出口症候群診断のための斜角筋三角底辺間距離計測の信頼性と再現性―術前超音波所見と術中内視鏡所見との比較―

          井上彰、古島弘三 他:整スポ会誌 38(1). 51-56.2018 きっかけ・要約  先日開催されました、第11回日本運動器理学療法学会学術大会にて『腕神経叢の牽引刺激が問題となった投球障害肩:症例報告-肋鎖間隙での滑走障害に着目して-』を発表しました。その発表の中で鎖骨下窩での鎖骨下筋や前鋸筋と腕神経叢の滑走性について報告しましたが、斜角筋間の狭さが影響するのでは、との考えに至り、今日の論文に辿り着きました。 腕神経叢が通過する斜角筋三角の底辺部は、その裂隙間距離が狭

          胸郭出口症候群診断のための斜角筋三角底辺間距離計測の信頼性と再現性―術前超音波所見と術中内視鏡所見との比較―

          外脛骨障害に対する保存療法

          今回は、外脛骨障害についての報告です。 臨床整形外科:Vol 54.No.2(2019-2),185-189. 百武整形外科・スポーツクリニック 田中博史先生  外脛骨は正常足の約10~21%に存在するとされ、Veitch分類TypeⅡで症候性に移行しやすい。発症原因として外傷やオーバーユース、扁平足や後脛骨筋の筋力低下に伴う慢性疼痛など様々である。保存療法には運動療法、装具療法、局所注入療法、固定などがあり、発症原因別にそれぞれのタイプによって使い分けたり、組み合わせた

          外脛骨障害に対する保存療法