野球肘(内側側副靱帯損傷)に潜伏する胸郭出口症候群(TOS)

今回は、野球肘(内側側副靱帯損傷)に潜伏する胸郭出口症候群(TOS)を暴く理学所見についての報告です。
安田武蔵ら:野球選手の内側側副靭帯損傷像と胸郭出口症候群の理学所見による鑑別の試み 日本肘関節学会 27(2).2020.252-254.4
TOSと診断された症例の3-7割は肘関節痛を訴えていたという報告があります。要するにTOSと肘関節痛は関連が高いことが窺えます。
しかし、臨床やスポーツ現場においてTOSと判断するのは難しく、野球肘に隠れてTOS病態が潜んでいることをよく経験します。
今回の論文では、野球肘症例とTOS症例の違いを理学所見に基づいて検討されています。

対象

健常者、内側側副靱帯損傷、TOSの3群で分けられています。
比較項目は握力で、握力を下垂位と外転外旋位の2肢位で計測し、その変化を各群で比較されています。

結果


外転外旋位での握力は内側側副靱帯損傷では低下しなかったようですが、TOS病態を有すると低下することが明らかとなりました。
握力は理学所見の中でも簡便な方法です。肩甲骨肢位を変えるだけでTOS病態の併発を疑えるのは、臨床においてありがたい理学所見だと思います。

感想


野球肘症例の評価の際には、可及的早期に外転外旋位の握力を計測し、低下が確認できた場合には、野球肘の運動療法に加えてTOSの運動療法も並行して行うことで、早期競技復帰に繋がって欲しいと思いました。

次回予告

次回 3月22日(水) 中谷奎太先生
『股関節内病変の診断と治療』

投稿者:中井亮佑


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