外脛骨障害に対する保存療法

今回は、外脛骨障害についての報告です。

臨床整形外科:Vol 54.No.2(2019-2),185-189.
百武整形外科・スポーツクリニック 田中博史先生

 外脛骨は正常足の約10~21%に存在するとされ、Veitch分類TypeⅡで症候性に移行しやすい。発症原因として外傷やオーバーユース、扁平足や後脛骨筋の筋力低下に伴う慢性疼痛など様々である。保存療法には運動療法、装具療法、局所注入療法、固定などがあり、発症原因別にそれぞれのタイプによって使い分けたり、組み合わせたりして介入すべきである。個々の症例の病態を詳細に診察、把握することで、その病態に応じた積極的な保存療法が可能となると同時に治療成績が向上する。

はじめに


外脛骨障害は日常診療においてしばしば遭遇するスポーツ傷害の1つである。その多くは保存療法で症状が改善すると一般的には紹介されている事が多いが、実際は適切な保存料歩尾がなされないままに手術療法を選択されている症例や、手術療法の後にも症状が残存している症例が散見されることも事実である。

病態と分類


 外脛骨は比較的よく目にする副骨の1つで、それ自体は必ずしも病的な存在ではなく、正常足の約10~21%に存在するといわれている。しかし、偏平足の合併や急激な運動負荷あるいは外傷などをきっかけとして疼痛が出現し、症候性に移行することが多い。Veitchは外脛骨を3つのタイプに分類している。その中でも特にTypeⅡが最も症候性となりやすいとされている。Sellaらは単純X線側面像を用いてさらにTypeⅡを2つに分類し、その原因を考察している。
 TypeⅠは舟状骨本体とは連続性を持たず円形もしくは楕円形を呈している。これは後脛骨筋腱の種子骨として、inferior calcaneonavicular ligamentのレベルの腱の下面に存在している為、基本的には症候性になることは少ない。
 TypeⅡは舟状骨の明確な一部分であるが、舟状骨結節は羽場2㎜未満の不規則な輪郭の線維軟骨部によって分離されている。
 TypeⅡAとⅡBは単純X線側面像でのsynchondrosisの線と外脛骨下縁と距骨外側突起を結ぶ線のなす角度で分類され、角度が急でないものをA、急なものをBとしている。TypeⅡBはTypeⅡAより下方にあり、それぞれにかかる力として、TypeⅡBには剪断力として、ⅡAは牽引力、ⅡBは剪断力が生じやすい。このことからTypeⅡAはavulsion injuryのリスクがあるとされている。またTypeⅢは舟状骨と骨性隆起を形成している。

受傷部位と症状


 痛みの発生機序は様々であり、
①    外脛骨隆起部が靴やボールなどに当たって痛みが生じる炎症性滑液包炎
②    偏平足を合併し、後脛骨筋の筋力低下による後足部のoverpronationに伴って生じる外頚骨周囲全体の痛み
③    慢性的な後脛骨筋腱腱鞘炎
④    外傷を契機に後脛骨筋腱を介して生じた牽引力、剪断力、圧迫力などによって線維軟骨結合が損傷されて生じた痛み
⑤    足関節不安定性を合併していることにより内がえし損傷によって脛骨内果と衝突を繰り返すことにより生じる痛み
などが考えられる。したがって、原因が多岐にわたるため、それぞれの病態に応じた治療方針が求められる。また他覚的所見として舟状骨内側(外脛骨部)の膨隆、腫脹、圧痛、後脛骨筋腱の腫脹、圧痛、つま先立ちやsingle heel raiseが困難であることが多い。圧痛点は外脛骨、線維軟骨結合部、後脛骨筋腱付着部、後脛骨筋腱実質などいろいろな部位に認められるが、症状が強いケースでは中足部全体に痛みを訴えることもある。しかし、一方で安静時や日常生活では症状がほとんどなく、スポーツ後にのみ痛みを生じる症例もある。

保存療法の種類
 保存療法は大きく分けて運動療法、装具療法、局所注入療法などが存在する。

1. 運動療法
2. 装具療法
3. 局所注入療法
4. 固定

詳細は、成書をご確認ください。

百武整形外科・スポーツクリニックでの保存療法の治療成績


1. 対象
2015年11月~2018年10月に外来を受診し、外脛骨障害の診断で保存療法が行われた45例中、手術となった3例を除外し、最終経過観察が可能であった21例26足を対象とされている。内訳は男性7例、女性14例、平均年齢19.4歳(8~63歳)であった。平均経過観察期間は3.3ヵ月(1週~8ヵ月)、Veitch分類はTypeⅠ:4足、TypeⅡ:22足、TypeⅢ:0足であった。スポーツをしている症例は17例であり、サッカーとバスケットボールがそれぞれ4例ずつで最多であった。発症原因は外傷を契機とした症例8例、後脛骨筋の筋力低下による慢性疼痛が9例、オーバーユースが4例であった。治療は発症原因に対応した保存療法を組み合わせて行われた(下表)。

2. 方法
調査項目は行った保存療法の治療内容、最終診察時のNRS、スポーツをしている17例のスポーツ復帰の有無を調査した。臨牀評価として最終診察時のNRSで0:excellent、1~3:good、4~6:fair、7~10:poorとした。
3. 結果
治療内容は、運動療法を18例、インソールなどの装具療法を9例、シーネまたはサポーター固定を8例に行われていた。全例で症状が改善し、excellent 13例(61.9%)、good 6例(28.6%)、fair 2例(9.5%)であった。全例でスポーツ復帰していた。
4. 考察
外脛骨障害に対する初期治療の過去の報告として、Geistはbraceで27例中9例(33.3%)しか改善しなかったとしており、Jegalらは79例中19例(24.1%)のみが保存療法で改善したとしており、保存療法は発症原因および症状に応じて治療内容を組み合わせているため、手術に至った症例は45例中3例と少なく、保存療法の治療成績は概ね良好であった。基本的な考え方として、外傷を契機に発症した症例には数週間のシーネ固定、慢性的な症状が持続している症例は後脛骨筋の筋力低下を認める症例が多いため、後脛骨筋の筋力訓練を中心とした運動療法を、オーバーユースが原因の症例は痛みが落ち着くまでの運動制限と運動療法を行う。偏平足が強い症例に対してはインソールを処方するが、同時に長期の運動療法が必要であることを患者に説明されている。外脛骨障害には様々な原因や病態が混在しており、それらに対して単一の保存療法のみでは高い治療成績が望めない。的確な診断のもと、適応を決めて治療することにより保存療法の治療成績も良好になると考えられる。

おわりに


 外脛骨障害に対する保存療法について発症原因別に検討し、それぞれのタイプによって様々な保存療法の使い分けを述べた。個々の症例の病態を詳細に診察、把握することで、その病態に応じた積極的な保存療法が可能となると同時に治療成績が向上する。

感想


 有痛性外脛骨の診断でリハ指示が出たが、初めて聞いた疾患であり、適切なアドバイスができないまま、終了となった患者様がいた。病態や足部に関する解剖学的知識を整理し、発症原因、年齢に応じたアプローチ、が必要だと感じた。

次回(11月15日(水))
Sever’s Disease of the Pediatric Population: Clinical, Pathologic, and Therapeutic Considerationsについて報告します。

投稿者:小林博樹


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