頚椎に関する基礎知識:頚多裂筋の解剖学について

今回は、頚多裂筋についての論文を紹介します。
 
Morphology,Architecture,and Biomechanics of Human Cervical Multifidus
Jess S . Anderson, et al.:SPINE. 30:86-91. 2005

概要
本報告では、ご検体を用いて頚多裂筋の付着部位や筋・腱の長さ、生理学的筋断面積(PCSA)を定量化しており、それに基づいて頚多裂筋のモーメント生成能力を検討しています。(対象:9例・21歳~91歳±66歳)結果、頚多裂筋は表層線維と深層線維から成り、それぞれ3つの筋束が存在します。表層線維は、各々C4/5・C5/6・C6/7の椎間関節包から、全ての線維がC2棘突起に付着する一方で、深層線維は、各椎間関節包から2椎体上位の椎弓部に付着する様子が観察されたみたいです。そのため、筋・腱の長さは表層線維の方が長く、PCSAは尾側の筋束ほど大きいとのことです。また、両線維ともに全ての運動方向へのモーメントアームを持ちますが、表層線維では尾側の筋束ほど伸展と側屈方向への張力が大きくなっています。一方で、深層線維では各線維ある程度一定の張力(主に伸展と側屈)を有しているとのことでした。

感想
頚多裂筋は、解剖学的特徴から頚椎の分節的な安定化を担う組織であり、その中でも各線維で一定の張力を有する深層線維は、特に重要であると考えられます。実際に慢性頚部痛症例においては、エコーにて頚多裂筋と椎弓面との間での滑走不良が良く観察され、同部に圧痛を認めることが多い印象を持ちます。今後も、局所解剖を理解した上での評価・治療を心がけていきたいと思います。

報告者:石黒翔太郎(よこた整形外科)

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