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湧き立つ取り壊し定期借家物件の魅力

世はまさに大定期借家時代

「再開発予定地か?欲しけりゃくれてやる。探せ!普通借家と解約予告のすべてをそこへ置いてきた!!」

取り壊し物件や再開発予定地の短期定期借家に群がるように企業が移転しています。

その引き込まれる魔力と魅力を余すことなく徹底的に語ってみようと思います。

すいませんがまだ普通に現役のビルもあるのでその辺からは限定コンテンツにさせてもらおうと思っていましたが、またいつもながらに間違って普通に公開してました。

後悔も航海も先に立たずってね、やかましいわ

定期借家取り壊し時代

東京のオフィスビルや複合ビルはスクラップアンドビルドです。どんなにセンス良い物件であっても築年数や再開発で無慈悲に取り壊しが起きます。場合によってはもっと収益性の高い物件に生まれ変わったりしてその運命は様々です。

なぜ開発が起きるかといえば、一つには日本特有の耐震の問題があります。頻繁に大地震が起きるこの国では耐震の基準も都度都度見直されています。古いビルを愛したい気持ちは誰もが持っていますが(多分)コストのバランスでごめんなさい建て替えます。が起きてしまう事も考えられます。

再開発や長年のデベロッパーの苦労もあります。地権者たちと多くの協議を行い時には開発側が主導でまとまる話も多いです。するとやはりこれも建て替えプランが固まります。永遠なんてないんだよ

取り壊し定期借家が人気なの?

取り壊しの定期借家(定借)は期間が定められており退去が必然です。2年とか3年で出なければいけないので一般的には不人気とされています。

そんな物件たちが人気の理由は昔からいくつかあります。そのうちの一つとして昔からメジャーなものは自社ビルの建て替え用途です。

今使ってる自社ビルを建て替えるから三年程度貸してくれというやつですね。再開発事業者側にとってみると満期まで使って手離れも良いwin-winな関係性です。だけど流石にそれだけじゃ定借人気の理由にはなりません。

建て替え前提の物件は相場より安い

よく素人ブログで書いてあるのが定借は安いんです!みたいな記事がありますがこれは一概にそうとは言えません。

建て替え前提や取り壊し、再開発がある程度決まってる定借が「安い」のです。

安いのは魅力的だけど期間限定で3年間もしくは2年間といった限定価格。これをチャンスととるかリスクととるかは会社の考え次第です。

スタートアップ人気で見直された取り壊し物件

スタートアップの移転はたいていお金がないものです。維持コストは安く、なるべく広く、でも最低限のオフィスとしての立地は欲しいという要望があります。この手の話がしっかりと身を結んだのが再開発予定の定借物件だと言えます。

さて、最初にブームの火をつけたのは五反田のTOCビルです。五反田バレーの火付け役はこのビルと言っても過言ではないでしょう。

実はリーマンショック前くらいから建て替え話が出てきていたのですがのびに伸びてようやく開発の正式決定に至るという紆余曲折あったビルです。

安く手頃で尚且つ近くに飯屋も多いという若者の心を掴んだ大型ビル。とはいえ最初は閑古鳥でしたがファーストペンギンで飛び込んだベンチャー企業や設立浅いスタートアップの数々により徐々にスタートアップの聖地化していきました。

当時は渋谷も今ほどビルが多くなく、ちょうど山手線西側のオフィスが枯渇していたタイミングだったのでTOCビルを中心に五反田が沸き立ちました。

しかし2023年には解体が決まり続々とテナントが退去しています。五反田の大規模オフィスで1000坪とれて1万円前半の坪単価という大バーゲンビルでした。

新TOCビルに建て替わったとしてもこの頃のテナントは賃料負担が高すぎて戻ってこないように思えます。残酷ですがこれも資本主義。

意外とまだまだ多い再開発エリア

東京はスクラップアンドビルドです。意外にどこかしらで再開発をやっています。同じように期間限定で受け入れるビルは沢山ありましてその多くが比較的割安で入居できるのです。

一時期人気が出たのがこのビル、NTT日比谷ビルです。ここも帝国ホテルや三井を中心にした建て替え計画のエリアになりましてつい最近まで多くのテナントが入ってました。かつてはNTT自身も使っていた古い物件ですが、このエリアで単価2万円前後だと聞いてます。内幸町,日比谷のエリアでこの価格帯はやはり破格でした。

渋谷では新大宗ビルのNo.ビルが一体の再開発に伴い取り壊し決定で中のテナントの多くが近くのビルに移転をしました。渋谷の築古でスタートアップや怪しい会社もなんでも入ってるく

このあたりのオフィスはエリアの再開発にかかり既存ビルの取り壊しが行われ新しいビルに生まれ変わります。同時に渋谷周辺の既存ビルに移転する企業も出てくるので一時的に空室も大きく緩和されるという効果もあるのです。

例えば、常盤橋エリアには次のTOKYO TORCH計画がすでに動き出しています。そのため、その開発予定地として以下のビルが再開発前の大型受け入れ先として有名でした

朝日生命大手町ビルとTOKIWAブリッジなど、あと日本ビル

この二つはトーチタワーを建設するための一時的な定期借家ビルとして人気でした。こちらはスタートアップ企業というよりはどちらかというとこのエリアに縁のある企業が安くて、次の移転先までの間に仮住まいとして利用しているケースが多かったと思っています。とくに朝日生命大手町ビルからは別ビルに移転する企業も多く、その企業は次の移転先を比較的坪単価の高いオフィスを選んでいたりします。


次の再開発にかかわる物件はどのビルなのか?

渋谷エリアは再開発のビルが多く、かなりの中規模ビルがすでに定借の満期を迎える準備が出ています。次の再契約があるかないかもしくはすでに入居している企業が次の移転先を探さなくてはいけないなどあります。

すでに入居している企業はこのようなメリットをすでに享受することが前提で移転していると思います。ちなみに渋谷エリアは東京建物さんが中心とした再開発プロジェクトが最後の超大型として残っています。ちなみにスタートアップに人気ビルは以下のラインアップになります。

・東建インターナショナル
・東建長井ビル
・長沼ビル

また近隣の青山エリアでも同じような開発を抱えているエリアにオフィスビルがあります。

青山エリアの再開発ビル群

・東京建物青山ビル

再開発関連だとこの一体は候補として考えられているので以下の物件たちも同じような事情を常に抱えている状況です。

・共和五番館

・ルネ青山

・第一青山ビル

上記のエリア内物件たちは一体開発を行えばかなり大きい施設ができそうですが、同時にすべての管理管轄している所有者も異なるのでいまいちすぐに足並みを揃えてが難しいビル群にもなるのです。

中規模再開発物件といえば三田~浜松町エリア

ベンチャー企業から老舗、建て替えニーズを多くの企業を受け入れてきたビルといえば三田田町エリアの三田MTビルや三田43MTビルですね。

このビルは長らく建て替え計画を検討しているのですがなかなかタイミングを含めて決まらない。なおかつ大型ビルでありつつ単価は周辺に比べて頭一つ低いリーズナブル価格で提供されています。

再開発の決断がしにくいビルでもあるのですよね。

周辺は住友不動産の三田ツインや札ノ辻新築に囲まれています。また三田駅周辺に大型の新築や建て替えプランもある中だと需要と供給のバランスが判断しづらい立地です。特に住友不動産の大型区画とのバッティングをするとその分の顧客の獲得も難しく、タイミングを含めて中々誘致しづらい環境ではないでしょうか。

当面、建て替え計画あり物件としての誘致をするのが個人的におすすめかなと思います。

浜松町エリアといえば東芝ビルの再再開発に向けた定期借家契約が激熱でした。現在は浜松町ビルですね。このビルも解体に向けた一時的な定期借家として貸し出しをしておりましてベンチャー企業や大型のオフィス区画が必要なスタートアップんなどが続々と集まっています。

それこそNTT日比谷からの移転先にこのビルを選ぶといったビリヤードのような玉突き移転事例もありました。

このように再開発と既存のビル残存期間の契約で賢く貸し借りするというニーズも一定数あるというのが昨今の再開発を取り巻く事例とも言えます。

大なり小なり2030年くらいまでの計画が始まっており特にこの手の定借は大型ビルであればある程便利だと決まっています。

取り壊し前のペンシルビルだと管理上の不満がいつかしら出てくるものですが、大規模ビルであるとこの辺はぎりぎりの線を保たせてもらえるのも良いところです。

ただしビルのスペックは今より向上することはなくむしろ改修してくれないので今より悪くなる事だって覚悟しておかなければいけません。

取り壊し定期借家お得じゃん

この辺は一概にこうだ!という事も言いにくいのですが、期間限定の定期借家契約にメリットを見出す企業もあるという事は確かです。

同時に期間が確実に定められているので2年ないしは3年後には移転をしなくてはならないというジレンマもあるので、企業人員が多すぎる場合だと意思決定しづらいなという現実もあります。

またプロジェクトで2年使いたいみたいな話もこの手のビルならばOKでやすいです。

残存期間眠らせておくより良しという判断をしてくれるのでそういった継続性の無いプロジェクトなんかにも案外向いています。

普通借家と違って2年から3年あたりを目処に借りる必要がありますが中途解約は相談できないので期間を決めるか満期までしっかり借りましょうなんていう前提はあります。

この辺の縛りは普通借家契約に馴染みが強いテナントだと嫌がりそうですね。大手デベロッパーの契約はかなり定借化が進んでいるのでこの辺である程度慣れておいても良いとは思います。

この手のビルを借りるならば、やはりどちらにせよフットワークが軽い企業向けの借り方だと改めて感じた次第です。




主にオフィスに関する不動産知識や趣味で短文小説を書いています。第1作目のツボ売り、それ以外も不動産界隈の話を書いていければ良いなと思っています。 サポート貰えると記事を書いてる励みになります。いいねをしてくれるだけでも読者がいる実感が持ててやる気が出ます