藍色の夜

耳元に感じる、透明感あふれる歌声の女性シンガー。
心地よい温度で私の髪を撫でる、初夏の海風。

海の方を見るとライトイエローに輝く満月が浮かんでいる。
君は今どうしているんだろうか。
それももうずいぶん昔のことで思い出すことさえ、忘れてしまいそうだった。

今となってはおそらく、もう2度と君と会うことはない。
君は私のことを拒絶したから。
君の目の前から去ることがお互いにとって最善だと思った。

もう一度会いたいとか、そういった気持ちはなくて。
ただ君が幸せでいてほしいと、そう思いながら、ひとり、藍色の夜を見上げた。

耳元に感じる、透明感あふれる歌声の女性シンガーはいつの間にか片思いの気持ちを奏で、初夏の海風に潮のにおいを感じた。


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