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パッド印刷のおはなし

東京都清澄白河にある製版会社、特殊阿部製版所です。
今回は「パッド印刷」についてお話ししたいと思います。


パッド印刷とは

パッド印刷とは、凹版印刷の一種です。
印刷したい文字や絵柄を凹版にし、
そこにインキを流し込み、無駄なインキを掻き出し、
弾力性のある「シリコンパッド」というものに一旦絵柄を転写し、
印刷したいものに、再度転写を行う、という印刷手法になります。

…………はい!文字で読んでも「???」ってなりますよね。
ということで、イメージGIFになります……!!


パッド印刷のしくみ


動画はコチラになります!!🐾


原理としては昔から存在していましたが、
広く使用されるようになったのは、20世紀になってからでした。
このまるっとした転写体はシリコーンゴムでつくられていますが
(なのでシリコンパッドといいます)、
むかしはシリコーンゴムがなかったので、
ゼリーをつくるあの「ゼラチン」で転写体を作っていたそうです。

パッド印刷の利点は、なんといっても
「曲面や内面に印刷ができること」です。

私たちの身近にあるものだと、
以下のようなものにパッド印刷が施されています。

● ゴルフボール
● 医療機器(注射器/手術器具)
● 医薬品(錠剤)
● 化粧品(キャップやボトル)
● 自動車部品
● キーボードや電卓  などなど

印刷面が平面じゃなかったり、まるっとしたものが多いですよね。
複雑な形状への印刷は、パッド印刷が最も得意とするものです。


パッド印刷は有版印刷


「 版のおはなし① 」でも述べさせていただいたとおり、印刷には、
版が必要な「有版印刷」と、版が不要な「無版印刷」があります。

パッド印刷は、版が必要ですので「有版印刷」になります。


1色毎に版が必要

たとえば、下図のような単色ロゴを印刷したいときは
赤1色となりますので、版は1つでOKです。
1色1工程のパッド印刷となります。

弊社ロゴです


下図のように、ロゴ(赤)と社名(黒)を印刷したい場合は、
2色なので、版が2つ必要になります。
印刷も2回行うので2工程となり、お値段も割高になります。


弊社ロゴと社名です



パッド印刷に必要なもの

まずは、パッド印刷機が必要です。
そして、版、シリコンパッド、治具、ドクターブレード、インキ
が必要になります。

〔 パッド印刷機 〕

色々な種類のパッド印刷機があります。
ここでは詳しい説明は割愛させていただきますが、
弊社で機械導入のお手伝いをすることも可能ですので、
導入をお考えの方は、お気軽にお問い合わせください。


〔 版 〕

パッド版です(凹版/スチール製)

印刷するための版です。
印刷したい文字や絵柄のフィルムを作製し、
化学処理を行うことで画像のような凹版ができあがります。

スチール製のものと、樹脂製のものを取り扱っておりますが、
今回は「スチール版」についてお話しさせていただきますね。

パッド印刷に使う版なので「パッド版」と言ったりもします。
サイズとしては、100(mm)*100(mm)*10t が標準的ですが、
弊社では各印刷機に対応したサイズを取り扱っております。

10tの「t(ティー)」というのは「厚み」を表す単位で、
「thickness」の頭文字をとったものです。
t は数字の前でも後ろでもどちらでもよいそうなのですが、
弊社では「10t」と表記することが多いです。

単位はmmになりますので 10t = 10mm =1cm  です。
つまり「100*100*10tの版」といわれたら、
厚さが1cmの10cm*10cmの版になります。

ただしスチール版となりますので、とてつもなく重いです。
スチールの比重は7.85くらいなので凶器です!!
足の上に落ちたら骨折案件!!になりますので、
パッド版作製工程の作業者には必ず安全靴を履いてもらっています。

〔 スチールとは 〕
スチール版は鋼板(こうはん)とも言います。
鋼=ハガネですね!(錬金術師で有名な…)

鋼というのは、鉄に炭素を合成し強度を高めた合金のことです。
合金というのは、2種類以上の金属を合成したもののことです。
有名なものだと真鍮ですね。真鍮は亜鉛と銅でできています。
弊社では真鍮素材も扱っており、今後もnoteでも出てくるかもしれないので、覚えておいていただけると幸いです。


〔 シリコンパッド 〕

シリコンパッドとはシリコーンゴムからつくられた転写体のことで、
パッド印刷には欠かせないものです。
弊社ではさまざまなニーズにお応えできるよう、
12種類の材質×硬度4パターンを取り揃えております。
また、形状は約400種、ご用意しております。

シリコンパッドのサンプルです

またシリコンパッドを機械にセットするために
「ベース」が必要となります。
アルミ素材でできたもの、ベニヤ素材でできたものなどがありますが、
こちらも弊社でご用意させていただきます。

左:アルミベース 中央:ベニヤベース 右:ベニヤベース(カット済)


〔 ドクターブレード 〕

インキを掻き出す際に使います。スキージとも言います。
カッターのような形状をしており、
これを使って版の上に残っている無駄なインキをそぎ落とします。

ブレードに関しては、
弊社Webサイトに詳しく記載させていただいておりますので、
気になる方はチェックしてみてください👇


〔 治具 〕

印刷したいモノの位置を固定するために用いる道具のことです。
パッド印刷は、一般的に治具を作製し、
その治具に印刷したいモノをセットし、
セッターと呼ばれる人が印刷の位置合わせを行います。

化粧品ボトルの真ん中に印刷したい場合もありますし、
右下に印刷したい場合もありますよね。
うまーく印刷されるよう、熟練したセッターさんが
一番最初に印刷位置を調整してくれるんです。

調整がおわったら、あとは治具に印刷したいモノをセット
→印刷→取り出す→新しいモノをセット→印刷→取り出す→……
という印刷工程を繰り返します。

治具があることで、印刷のバラツキをおさえ、
同一形状の印刷物を大量に生産することが可能になるんですね。
また、印刷位置が固定されるので「2度押し※」することが可能です。
※2回印刷すること。1度押しより発色が濃くなります。

治具自体はちょっとお高いのですが、
小ロットの印刷であれば、簡易治具での対応も可能ですので、
印刷をご用命の際は、お気軽にご相談ください。


治具です


〔 インキ 〕

お客さまのご要望に合わせたインキを用いて、印刷を行います。
また、印刷を行う素材がポリプロピレンやポリエチレンといった
難密着性素材であれば、事前に前処理を行います。

おおまかではありますが、
以上を準備&機械にセットすればパッド印刷を行うことができます。


マグカップに印刷したいときは?

今回はパッド印刷についてお話しさせていただきましたが、
パッド印刷以外にもさまざまな印刷方法があります。

たとえば〔 マグカップに印刷したい 〕といった場合、

● パッド印刷
● 昇華転写
● 回転シルクスクリーン印刷

といった印刷方法での対応が可能ですが、
デザイン、用途、ロット数、納期などによって、
どの印刷方法がベストなのかは異なります。

弊社では、お客さまへヒアリングの上、
最適な印刷方法をご提案させていただきます。
他社さまでお断りされた案件でも、
どうぞお気軽にご相談いただければ幸いです。

お問い合わせは☝から


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